British Politics - A Japanese View by Tomo Kikugawa
2008-08-09
住宅取得税猶予策の混乱(Speculation
on Stamp Duty moratorium)
ゴードン・ブラウン政権の手際の悪さは変わらない。住宅取得税の一時猶予策の問題でまた問題を起こしている。英国人の住宅に対する執着は有名だ。誰もが無理をしてでも住宅を手に入れようとする。住宅の価格が上昇している時には、借金して購入しても支払いが滞りかけるとその住宅を売ればもとが取れた。住宅ローン会社も、低い金利でお金を貸し出していた。そのため英国の全国の平均住宅価格は昨年20万ポンド(4千万円)までのぼったが、比較的低い金利のために無理をして住宅を購入することができた。しかし、昨年来、世界的な金融逼迫が起き、状況が全く異なった。景気が悪くなった上、住宅ローン会社の手持ち資金が不足し、貸し渋りを始めた。金利を上げ、しかもかなりの自己資金を用意しないと住宅資金を貸さなくなった。しかも燃料の急騰、その他の物価の上昇で、住宅ローンの支払いに問題が出てきた。特に、住宅ローンの最初の一定の期間、金利が非常に低く抑えられているものを借りていた人たちは、その期間が終わったために、住宅ローンの支払いが一挙に高騰した。住宅市場は不況で、住宅価格は大きく下落している。住宅ローンを借り替えることもできない。売ることも難しく、そのため住宅融資への毎月の支払いができず、住宅を差し押さえられる人の数が昨年上期に較べて50%近く増えている。
英国では住宅に対する信用が減れば、政府に対する信用も下落する。これらの状況を受けて、政府内に浮上してきた案が「住宅取得税の一時猶予」である。英国では、12万5千ポンド(2500万円)以下の住宅には住宅取得税はかからない。しかし、今やほとんどの住宅にこの税がかかる。12万5千ポンドから25万ポンド(5千万円)には住宅の価格の1%、25万ポンドから50万ポンド(1億円)は3%、そして50万ポンドを超える住宅には4%の税がかかる。つまり、20万ポンドの住宅を購入すれば2000ポンド(40万円)の税、30万ポンドの住宅を購入すれば9000ポンド(180万円)の住宅取得税を支払う必要がある。この税を一時猶予すれば、住宅市場を活性化できる可能性があるというのである。保守党のジョン・メージャー政権で住宅市場を1991年の住宅取得税の緩和と猶予で回復させた例がある。このために1992年の総選挙で保守党が劣勢を予想されながらも勝った大きな要因となった。
住宅取得税の一時猶予のニュースが8月5日に報じられた際には、それを歓迎する向きが強かった。ところが、ここに来て、このニュースのために住宅市場がさらに悪化していることがわかった。つまり、住宅取得税が一時猶予されるなら、それが正式に決定されるまで住宅売買を控えようとする動きが強まったのである。
この税の問題は、財務省の所管である。ところが、これを財務省が十分に検討する前に、首相官邸筋がそのニュースを大衆紙のサンに漏らしたようである。それをサン紙が報道した。そのために財務省側が困惑している状況だ。つまり、政府の中で、得点稼ぎに走る首相官邸側と、じっくりと見極めて政策を打ち出そうとする財務省側で、立場に大きな差が出ているのである。この住宅取得税の案は、ミリバンド外相の問題からマスコミの目をそらす目的があったとも言われるが、こういう混乱は、一般の国民の信頼をさらに損ない、ブラウン政権の立場を弱める。財務省では早急にどう対応するか決定する必要があるが、打つ手が外れるブラウン政権は、ますます混乱を強めていると言える。
Politics
2008-08-02
ブラウンの内閣改造の目玉(Brown’s
Reshuffle to regain authority)
ゴードン・ブラウン首相率いる労働党の支持率は20%の半ばで、40%の半ばの保守党に約20%の差をつけられている。グラスゴー・イーストの補欠選挙で敗北して以来、今やブラウン首相の威信は地に落ちてしまった。多くの労働党下院議員は次の総選挙で労働党は大敗北を喫し、自分たちも議席を失うのではないかと心配している。ブラウンではだめだ、有権者はブラウンの言うことに全く耳を傾けない、という判断から、次の総選挙は新しい党首で戦うべきだとブラウン辞任へ向けて運動を進めている者も少なくないようだ。
それに対抗するように、ブラウンが自分の威信を回復するための戦略の一つとして9月初めに内閣改造を予定している。どういう改造をするかには多くの憶測があるが、中途半端な内閣改造では全くインパクトがないことから目玉が必要だ。そこで考えられるのは、ガーディアン紙で自分の対保守党の見解を発表したデービッド・ミリバンド外相を犠牲にすることだ。次期労働党党首レースの先頭を走るミリバンドは、自分の投稿記事の中で、ブラウンの名前に全く触れず、そのために「謀反」をたくらんでいるとマスコミが一斉に報道した。内閣改造の記事を載せた8月2日のインデペンデント紙では、この内閣改造でミリバンドの更迭はないと言っているが、その可能性は否定できないと思われる。ミリバンドの投稿記事は「謀反」などというものではないが、一般の有権者は、そのような記事を読まずにマスコミの見出しだけで判断する傾向がある。そのため、有権者に優柔不断なブラウンが意外にも「断固たる処置」を取ったという印象を与えるには、劇的な行動が必要だからだ。
それではミリバンドを野に放つことになるではないかと考える向きがあるかもしれない。ミリバンドが反ブラウンの先頭に立つという見方だ。しかし、早い総選挙を望んでいる労働党下院議員は誰もいない。現在の低い支持率と悪い景気、生活費が急速に上昇している状況の中では労働党に勝ち目は全くない。むしろ誰もが総選挙はなるべく先延ばしにし、景気が少しでも上向きになるまで待つべきだと考えている。そういう環境の中で、ミリバンドのできることは限られている。
一方、ノーザンロック銀行問題などで評判の落ちたアリスター・ダーリン財相を交代させることは必要だろう。財相に有能な人材を登用することで、一挙に次期党首候補を作り上げることができる。ミリバンド対策には、閣内に有力ライバルを作ることだ。ミリバンドを閣僚の職から追放しなくても、財相、内相、外相のトップ閣僚以外の職に回し、降格すれば、その目的は達成できると思われる。いずれにしてもミリバンドには酷な手であるが、ブラウンの威信を回復するには、ミリバンドをダシに使う必要があるだろう。つまり、9月の内閣改造の焦点は、ミリバンドの処遇になると思われる。
Politics
2008-08-01
皇室の価値(Value
of Monarch)
英国にも、皇室を廃止すべきだという共和国主義者がいる。しかし、一般の国民は皇室の存在を好んでおり、英国の国歌は「女王陛下万歳!(God
Save the Queen)」だ。英国の皇室は、チャールズ皇太子とダイアナ妃の問題をめぐり、大きく揺れ動いたが、それでも国民から大きな支持を受けている。2007年度の政府の皇室関係への支出は4000万ポンド(80億円)であったが、海外から、特にアメリカから多くの観光客を引き寄せることを考えると、金銭面だけでもその費用をかなり大きく上回る価値があると考えられている。また、英国の元首エリザベス女王は、英連邦53ヶ国の長であり、また、16カ国の元首も兼ねている。国際政治面でも大きな影響力の源泉である。その上、フランスの元首ニコラ・サルコジ大統領と会うのと、エリザベス女王と会うのでは、どちらに重みがあるかは明白であろう。
バッキンガム宮殿(Buckingham Palace)
エリザベス女王の拠点は、ロンドンにあるバッキンガム宮殿である。毎年夏に女王がスコットランドのバルモラル城に避暑に行かれる間、バッキンガム宮殿は一般に公開される。約40万人が訪れ、この間の収入は600万ポンドに上る。この一般公開は、ウィンザー城が火事に遭った後、1993年から始まった。修復費用の一部にあてることが目的であった。
一般公開の前には、エリザベス女王自身が展示物などを見て回る。エリザベス女王自身が不正確な記述などに気づくことも多く、記述を書き換えることも多いという。
エリザベス女王のリーダーシップ(Queen Elizabeth’s leadership)
エリザベス女王は、女王として君臨しているだけではなく、皇室の長として皇室を運営していく立場にもある。皇室費の倹約の一環として、エリザベス女王自ら宮殿の電気を消して回るという話は有名だ。外国からの賓客を招く、宮中晩餐会が催される際には、晩餐会が始まる前に会場に自ら一旦、足を運ぶ。状況を仔細に確認し、例えば、飾り物などの変更点などについて説明を受ける。フローリストと花についての確認もする。季節やどの国からの賓客か、またどういう花が入手できるかで花は変わるからだ。細かな点にまで注意を払う。こういう配慮は、皇室内での行事にもわたる。どういう催し物が行われるか事前に相談を受け、自らどういう流れか十分に理解している。82歳というお歳を感じさせない。
Politics
2008-07-30
ブラウンの後継者(Brown’s
successor)
ゴードン・ブラウン首相は遅かれ、早かれ、首相の座を去る。それは、恐らく来年の秋の党大会の頃までには起きるだろうが、それが2年以内であるのは間違いない。2010年6月までに行なう必要のある次期総選挙では、ブラウン率いる労働党はまず間違いなく保守党に勝てないからだ。
それでは次に労働党党首、そして首相(総選挙前の場合)となるのは誰か。マスコミの最有力候補はデービッド・ミリバンド外相である。英国の賭け屋も同様で、二番手には、ハリエット・ハーマン労働党副党首がつけ、三番目にジャック・ストロー法相が続く。ただし、いずれも決め手を欠き、役者不足の面がある。
ミリバンドは、非常に頭がいいことで有名だ。しかし、頭がいいといわれるのは現在のブラウン首相も同じで、頭がいいだけでは優れた党首・首相とはなれない。私の第一印象は、ミリバンドは「異星人」の風貌を持っているということだ。ミリバンドが7月30日付のガーディアン紙に「労働党はそれでも勝てる」という投稿記事を書いた後の記者会見では、切れ味を発揮し、党首・首相としてはブラウンよりも大衆受けするように感じる。しかし、保守党のキャメロンが風格を出し始めているのに対し、少年の雰囲気を持つミリバンドでは労働党の命運を向上させることは難しいかもしれない。
ハーマンは、女性であり、昨年6月の副党首選挙では、予想を裏切って副党首に選ばれた人物である。女性である強みはあるが、党首に選ばれるには、今までの問題や夫のジャック・ドロミーの存在が問題になるのではないかと思われる。かつて自分の息子を労働党のルールを無視して入学選別する学校に送ったことでマスコミや労働党内部から大きな批判を浴びた。また、夫のドロミーは労働組合関係の大物であり、労働党の会計責任者であるが、労働党の「名誉販売」疑惑が出た時に、一連の労働党献金を自分は知らないと主張したことがある。ドロミーは敵が多い人物である。
ストローは、1997年のブレア労働党政権発足以来、閣僚職を務めてきたベテランである。内相、外相、法相などブレア政権に続きブラウン政権の重鎮となっている。党内全体での評価は高いが、独自のアイデアやカリスマのある人物ではない。つなぎの党首としてキャメロンに対抗する役割を果たすだけの経験はあるが、長期的にキャメロンに対抗できるかには疑問がある。
以上に付け加え、完全なダークホースで、賭け屋にも注目されていないが、次期労働党党首の一つの可能性としてアラン・ミルバーンを挙げておきたい。ミルバーンは、かつてブレアが目をかけ、次期リーダーとして育てようとした人物である。財務省でブラウンのナンバー2として働いたことがある。しかし、厚生相としてブラウンと折り合いが悪くなり、大臣職を辞任した。その後、ブレアが2005年の選挙のコーディネーターとして再び登用したが、選挙の主要な役割を外されたブラウンが反発したため、その役割を外された自物である。事実上、ブラウンがミルバーンの芽をつぶしたと言える。
このミルバーンに、意外にもブラウン首相が過去一ヶ月で3回も会い、閣僚復帰を働きかけていると伝えられる。このミルバーンがもし財相として内閣に復帰するようなことがあれば、ミリバンド外相の最大のライバルとなるだろうと思われる。現在50歳で油が乗り切った政治家であり、キャメロンに対抗できうる人物だと言えるだろう。ただし、閣僚職を辞して以来、いくつかの会社の顧問として多くの収入を得ている。閣僚に復帰すればそれらを失うため、財相のようなよほど魅力のあるポジションでなければ受けないかもしれない。9月に予想されるブラウン政権の改造が見ものである。
Politics
2008-07-30
ミリバンドのガーディアン紙投稿記事の功績(Effects
of Miliband’s Guardian article)
デービッド・ミリバンド外相が、7月30日付のガーディアン紙に「労働党はそれでも勝てる」という投稿記事を書いた。マスコミ各紙は、ミリバンドがブラウンに党首選挙の挑戦をするかもしれないと飛びつき、ミリバンドのイタリアからの外相との会談後の記者会見は、スカイニュースとBBCニュースが実況中継する事態となった。
ミリバンドは、これはブラウンへの挑戦だということを否定したが、もし、ブラウンが首相と党首を辞任した場合にはミリバンドが党首選に立候補するのは間違いない。しかし、この「事件」は、予想外の効果があったと思われる。
その効果とは?
このミリバンドの投稿記事はよく書けている。記事の後半の、労働党が英国民に何ができるかについてはあいまいな点があるが、保守党のデービッド・キャメロンの空疎さを浮き彫りにした点では、最近最も優れたものであると思われる。要は、この「事件」の騒ぎで、ほとんどの政治ジャーナリストが、ミリバンドのブラウンへの挑戦のヒントを求めてこれを精読したことだ。そして行間に書かれていると思われることまで推測する騒ぎになった。ここまで広く精読された記事は最近ではあまりないのではないかと思われる。
マスコミは次期総選挙後は保守党が政権を担当するのは間違いないと見て、キャメロンの政策の吟味を始めているが、意識的に、もしくは無意識的にミリバンドの指摘の影響を受けると思われる。つまり、ミリバンドがキャメロン分析へのたたき台を提供した格好だ。
Politics
2008-07-27
ブラウンの欠陥(What’s
wrong with Gordon Brown)
ゴードン・ブラウン首相は、2007年の6月にトニー・ブレア前首相の後を受けて首相に就任した。それから13ヶ月たったが、その支持率は下がる一方だ。7月24日のグラスゴー・イーストの下院議員補欠選挙で労働党が敗北し、一挙にブラウン退陣への要求が表面化した。サンデー・タイムズ紙は、ブラウンはサッチャーが11年間の政権でもたらした状況を1年で作り上げたと言っているが、ブラウンは早くも政権末期の状況を呈してきた。ここでは、いったい何が問題なのか、ブラウンのどこに問題があるのかに触れておきたい。
グラスゴー・イーストは、労働党の非常に強い地盤である。前回の2005年の総選挙では、労働党の候補者は1万8775票を獲得し、次点のスコットランド国民党(SNP)の得票5268票に3倍以上の大差をつけていた。つまり、通常の状況では決して労働党が負ける選挙区ではない。選挙戦の序盤にSNPの支持率が急速に上がっているとの報告があり、労働党の敗北する可能性がささやかれたが、終盤にはやはり労働党が持ちこたえるとの評価であった。補欠選挙の結果が出た後、英国の公共放送BBCの政治部長が「この投票日の朝まで政治評論家の誰もが労働党の勝利を予想していた」と言っているが、この楽観が労働党の中にもあったと思われる。結局365票差でSNPが勝った。もし、労働党がもう少し厳しい選挙戦を展開し、地元の状況をきちんと反映した選挙戦略を立てていれば、SNPが勝つことは難しかっただろう。今回の労働党の選挙運動は表面的なものに終始し、有権者に労働党へ投票する気にさせる強力なものではなかったと言われる。また、有権者の意向を無視してSNP候補者をスコットランド独立推進派と攻撃するなど、戦略的なミスが目立った。労働党側の体制の不備と油断がこの結果を招いたと言える。
ブラウンには、ピーター・マンデルソンのような人物が必要であった。ブレア政権で通産相、北アイルランド相を務め、現在EU委員のマンデルソンは、非常に有能な戦略家である。メディアを操るスピンドクターの元祖のように言われている。マンデルソンは1994年の労働党の党首選挙でブラウン支持からブレア支持に変わり、それ以降ブラウンとの関係が悪化したため、マンデルソンがブラウンの戦略担当となることは考えにくい。しかし、この補欠選挙では、きちんとした戦略家がおり、強固なリーダーシップがあれば、敗北は避けられたと思われる。この点では「後の祭り」といえる。
ブレア政権下では、ブレアとブラウンの2人がお互いに牽制しあい、2人のバランスの上で政権が運営されていた。ところが、ブラウンが首相となるとブラウンにきちんとモノを言える人がいなくなってしまった。ブラウンは「仕事中毒」と言われるくらいよく働く人物である。夜遅くまで働いた後、早朝から起き出し、新聞に目を通し、午前6時半には閣僚などに電話をし始める。献身的に仕事に取り組む人物である。しかし、ブレアが直感的に決断を下すといわれるほど決断の早い人物であったのに対し、ブラウンはノーザンロック銀行の国有化の決断に6ヶ月かかったように決断が遅い人物だ。物事をなかなか決められない、と評判になっている。また、性格的には内向的な人物で有権者の気持ちをよく理解している人物ではない。所得税の10%課税枠を廃止したことで、収入の低い人たちに打撃を与え、労働党議員やマスコミから大きな反発を受けた後、それへの対策に大きな借金をせざるをえなかったようにバランスに欠ける判断をする傾向もある。ブラウンが政権内で独占的な地位を占めているために、その判断が狂うと政権全体が大きな危機に陥る。
しかし、基本的な問題は、ブラウンへの有権者からの信頼がなくなっていることだ。一端失った有権者からの信頼を取り戻すことは極めて難しい。極めて皮肉な現象は、労働党政権のさまざまな政策が次から次に成果を挙げている時にブラウン率いる労働党政権の支持率は下がる一方であることだ。犯罪は減り、NHS病院は効率を上げ、患者の待ち時間は目標に沿って短縮されてきた。大きな問題であった院内感染の問題は当初不可能と思われたレベルまで減ってきている。中等教育のアカデミーは成果を挙げており、急速に拡大している。一方、現在の経済の問題は、世界的な問題から発生しており、英国政府が単独で有効な政策を打ち出すことは困難だ。しかし、ブラウンへの信頼が失われたことに相俟って、世界経済からの深刻な英国への影響が有権者のブラウン政権への低い評価を招いている。
政権与党の労働党にとっての最善の方策は、ブラウンを誰か他の人と交代させることだと思われる。誰がブラウンの後継者となっても、労働党の支持率は上向くだろう。新しい人には有権者は一定の猶予を与える上に、ブラウンが英国の経済問題の責任の一端を背負って退陣することになるからだ。
Politics
2008-07-26
労働党が地盤の補欠選挙で敗北(Labour’s
defeat in Glasgow East by-election)
ゴードン・ブラウン首相が率いる労働党が、その強い地盤を誇るグラスゴー・イーストの7月17日に行われた下院議員補欠選挙で敗北を喫した。これは、5月の地方選挙での労働党の大敗北、そしてその後の一連の補欠選挙の敗北に加えてのものであり、労働党政権に大きな打撃を与えている。
この選挙区は1998年に地方分権を行ったスコットランドにあり、現在スコットランドの政権を担当しているスコットランド国民党(SNP)の候補者が労働党の候補者を365票差で破った。2005年の総選挙では、労働党の候補者が次点のSNPの候補者の3倍以上の得票をしている、労働党の非常に強い選挙区でのことである。
世界的なサブプライム問題の後、景気が後退し、燃料費の高騰と食費の上昇の中で一般国民の政府への不満は大きく高まっている。英国全体では、保守党の支持率が40%をコンスタントに上回る状況であるのに対して、労働党の支持率は30%以下であり、その差は約20%にも達し、ブラウン首相への支持が大きく後退している。スコットランドでSNPへの支持率が高まっている中で行われた補欠選挙では、労働党の苦戦が予想された。それでも選挙の専門家や英国の賭け屋は、労働党が何とか逃げ切るのではないかと見ていた。しかし、予想外に投票率が高まり、労働党への不満票がSNPに大きく動いた形だ。補欠選挙では通常大幅に投票率が下がる。2005年の48.2%に対し、投票率は30から40%と見られていたのが、実際の投票率は42.25%に達した。
この選挙の結果、2010年6月までに実施しなければならない総選挙で労働党は保守党に大敗北するという見方が強まっている。そのため労働党の党首・首相を交代させるべきだという声が表面化してきた。しかし、ブラウン首相には退く意向はない。英国では、一般に現職の党首を強制的に交代させることは難しい。保守党のイアン・ダンカン=スミス党首は下院議員の信任投票で十分な票が集められず党首を退いた。また、マーガレット・サッチャー首相も党内の反乱で首相・党首を退いたが、そういう例は多くはない。
もし、労働党がブラウン首相を退陣に追い込もうとすれば、まず、下院議員の1人が名乗りを挙げ、350人の労働党所属下院議員の20%の推薦を集める必要がある。つまり、70人だ。そしてそれを党大会に提出して、もし、党大会が過半数で党首選挙を行うことを認めれば、党首選挙がスタートすることになる。ブラウン首相が自発的に退き、候補者が自分の支持者を集めるのなら70人はそう難しい数字ではないだろうが、今の状況では、ブラウン首相に反旗を翻し、70人の下院議員の推薦を集めることは極めて難しい。まず、確たる後継者がいないのである。ファイナンシャルタイムズ紙が、閣僚が一致してブラウンに引導を渡せば首相を交代できる可能性に触れたが、閣僚が一致する可能性は低い。結局、ブラウン自身がもうこれ以上首相、党首を継続できないと判断するまでブラウン政権は続く可能性が強い。
なお、この補欠選挙で労働党が敗北したために、そのニュースに隠れて、幸運であったのが自由民主党だ。自由民主党は2005年の総選挙で3665票を獲得し、第3位であったが、この補欠選挙では第4位のわずか915票に終わり、供託金没収の憂き目にあった。2007年12月に自由民主党の党首になったニック・クレッグが十分な仕事をしていない証明だ。
Politics
2008-06-30
英国の国民健康サービス60周年(NHS
60years)
それは1948年7月5日(月曜日)のことであった。労働党のアトリー内閣が、国民の誰もが直接お金を支払わずに必要な医療サービスを受けられるシステムを始めた。NHS(National
Health Service)と呼ばれる仕組みである。これは世界で最初の試みであり、「ゆりかごから墓場まで」と言われるシステムの一環であった。当初は、全世界の羨望のまとであったが、今ではそれほど画期的なシステムではなくなっている。しかし、多くの問題を抱えながらも60年という長きにわたり、基本的に同じシステムが続いてきたことは注目すべきことだと思える。
NHSは今や150万人を雇用し、世界で第4位の雇用者だ。中国の人民解放軍、アメリカのスーパーマーケットチェーンのウォルマート、それにインド鉄道に続く。
かつて保守党政権下、NHSはお金が慢性的に不足し、医療の質の低下、患者の待ち時間の増加が大きな問題になっていたが、労働党政権が2000年からNHSの予算を大幅増額し、状況は大きく改善した。今後、予算の増加額はかなり減少するが、地方NHS組織の独立運営体制など、それをカバーするための仕組みが導入されてきている。また、手術などの待ち時間をさらに減らし、診察時間を拡大し、さらに患者がかかれる病院を選択できる仕組みを作ろうとしている。
現ブラウン労働党政権下では、民間企業のNHSへの関与を増加させ、効率を上げようとしている。しかし、NHSの基本的な形を変える考えはない。それは保守党も同じである。
Football
2008-06-29
スペイン:ユーロ2008優勝(Spain
win Euro 2008)
欧州の国別対抗のサッカー選手権、ユーロ2008の決勝がスペインとドイツの間で6月29日、スイスのウィーンで行われた。この選手権は4年ごとに行われる。スペインがドイツを1対0で破り、優勝した。
決勝ではスペインがドイツを圧倒した。スペインは準々決勝で、2006年ワールドカップ優勝のイタリアとあたった際にはゴール前にボールをなかなか持ち込めず苦戦した。ポルトガルのロナルドのような選手がいれば状況はかなり異なっていただろう。最後にはペナルティー合戦で勝ち、準決勝にこまを進めた。トルコを準決勝で破った後、ドイツとの決勝では、ドイツのゴールをたびたび襲い、優勢に試合を進めた。ドイツのディフェンスの弱さが露呈された格好だ。
スペインのアラゴネス監督は、この試合を最後にスペイン監督を退く。69歳だが、来シーズンはトルコのフェネルバフチェの監督となるとみられている。アラゴネス監督は、選手の交代でその経験をいかんなく発揮した。例えば、試合の後半でシルバがドイツ選手と揉め事を起こしかけたと見るや否や、即座に交代させた。前半にスペインの唯一の得点を稼いだトーレスもゴール前で追加点がなかなか稼げず、イライラしていると見るやグイザに交代させた。アラゴネス監督は、トルコとの試合で、シャープさを欠くトーレスをグイザに交代し、グイザは試合の行方を決める第2のゴールを得点した。
一方、ドイツは、フルバックがスペイン攻撃陣のゴール前侵入を何度も許し、ゴールキーパーのレーマンが大活躍せざるをえなかった。また、攻撃ではミッドフィルダーのシュバイニーがパス、フリーキックなどで本調子ではなく、ドイツのチャンスをものにできなかった。英国の賭け屋はスペインが有利と見ていたが、その通りの結果となった。
Politics
2008-06-27
ブラウン首相の時代は終わる(Near
End of Brown Era)
6月26日(木曜日)に行われたヘンリー・オン・テームズの補欠選挙の結果は、労働党にとって予想以上に厳しいものだった。この選挙は、ロンドン市長に当選した保守党ボリス・ジョンソンの下院議員辞職に伴って行われたもので保守党の勝利は間違いのないものであったが、労働党の結果は悪すぎた。当選した保守党の候補者は2万票近く獲得したのに対し、労働党は第5位の千票余という結果だった。得票率はわずか3.1%である。前回の2005年の総選挙での得票率は14.8%だったため、得票率が大幅に下がった。第二位の自由民主党は1万足らずの票を獲得したが、労働党は、第三位の緑の党、第四位の極右政党英国国民党(BNP)の後塵を拝し、供託金没収という最悪の結果である。この結果は、ゴードン・ブラウン政権の終焉が近いことを裏付けるものだ。
石油の高騰にストップをかけるためにサウジアラビアに飛び、自ら石油生産増を働きかけた「動く」ブラウンを好意的に見るむきもあった。しかし、ブラウンの努力にも拘わらず、支持率は下がる一方だ。労働党支持の傾向の強いガーディアン紙のICM世論調査(6月25日)では、労働党の支持率はわずか25%と、保守党の45%に20%の差をつけられている。1984年に始まったこの世論調査で最低の支持率だ。その上、この補欠選挙で、ブラウンと労働党への支持は、ますます下がっていることを裏付けた形だ。
ブラウンの問題は、現在の世界的な経済の問題から発生していると捉え、経済が上向けばブラウンの支持も上向くと考える向きもあった。しかし、もはやそういう次元の問題ではない。ブラウンへの信頼が崩壊している。もちろんこの背景には、1997年から続く労働党政権への飽きがある。それに拍車をかけたのはブラウンの責任である。2007年秋に総選挙を仕掛けかけたが止めて意気地がないと批判された問題、国民の注目を集めた相続税、所得税に関する政策で度重なるミスを続けた。このままでは、5年の任期を終える2010年5月までに行わなければならない総選挙で労働党は保守党に大敗を喫するだろう。
労働党の中は、直ちにブラウンに代わる人を立てようという状況ではない。あと一年間ブラウンに時間を与えて、それで支持率があまり回復しないようなら、ブラウンに辞任を迫る動きとなるだろう。後任の最有力候補は外相デービッド・ミリバンドだが、ミリバンドでは保守党のデービッド・キャメロンには到底太刀打ちできない。むしろ、女性の内相ジャッキ・スミスのほうがキャメロン対策としては有効だと思われる。いずれにしてもブラウン政権の終焉は近い。
Politics
2008-06-24
政治家の必要経費の悪用をなくす方法(How
to eliminate politicians’ expenses cheating)
2008年に入ってから、保守党のコンウェイ下院議員が自分の大学生の息子を自分の秘書として雇い公費から給与を支払っていた問題が発覚した。コンウェイ議員は下院で謝罪し、受取っていた経費の一部を払い戻し、その上、保守党を除名された。それ以来、同様の問題は次から次に発覚した。保守党の幹事長(女性)が約10年前に子守を自分の秘書として雇い、公費から給与を支払っていたことが発覚した。欧州議員の不当な経費請求で、欧州議員の中の保守党のリーダーと幹事長がそれぞれの役職を辞任するという事態も発生した。つまり、これらの公費請求には、多くの問題があるということだ。
特に、英国の下院議員の公費からの必要経費の請求の問題は、今までそれぞれの議員の良識に頼り、その詳細に議会当局などが関与してこなかったことが問題のきっかけとしてある。しかし、これらの問題を契機に、下院議長を中心に、経費のあり方について再検討している。その案の中身は、例えば、細かく経費請求を精査する方法や、経費を請求する仕組みを変え、まとまった金額を議員に渡してしまう方法、さらには議員の出席率に比例する方法などがある。
私は、まとまった金額を渡す方法がベストだと考える。まず、いくら制度やルールを細かく決めても、その抜け穴を探す者がでてくる可能性がある。つまり制度やルールとその抜け穴を探す者とのいたちごっこになる可能性がある。しかも、制度やルールを細かく決めると、それを運用する人が必要になり、多くの時間と労力が必要だ。その上、その制度やルールが必ずしも政治家の活動に貢献するとは限らない。逆に細かくすればするほど政治家の足を引っ張る可能性がある。例えば、細かな領収書を常にそろえる必要があるなど、手間がかかることが多い。また、保守党の幹事長の例で見られるように、小さな子供を抱えた母親が議員としての活動をきちんとするためには、子供の面倒を見る人が必要な場合が多い。そういう時にどういうお金の使い方をするかは、本人が最適と思える方法でできるほうが効率的だと思える。つまり、お金使用の効果と質が上がる可能性がある。
第二住居への補助金もそうだ。英国の下院議員の場合、選挙区とロンドンに二つの住居を構える人が多い。そのために第二住居への補助制度がある。そのため、下院議員たちはこの制度を使って、台所を改装したり、住宅ローンを支払ったり、プラズマテレビを購入したりしたりしている。高価な金魚を購入してその支払いを求められた際には議会事務局がノーと言ったそうだが、そういうことになぜ議会事務局が関わらなければならないか疑問だ。議会事務局がデパートのジョンルイスの価格を基に、ジョンルイスリストと呼ばれるリストを持っており、議員からの請求と較べて支出するかどうか判断しているが、そういうことは時間の無駄遣いとしか思えない。
現在、議員一人当たりにいくらの費用がかかっているかは明らかである。それに基づいたお金を議員に渡してその中で議員の判断で使用できるようにすれば、「悪用」などと言ったことは考える必要がなくなり、制度全体の効率と議員に対する効果が向上すると思われる。
Education
2008-06-22
グラマースクールの近代中等学校援助計画(Grammar
Schools help Secondary Moderns)
イングランドには、生徒を選抜して入学させるグラマースクールが164校ある。それ以外の一般公立高校では基本的に選抜試験がない。そのためグラマースクールの生徒の方がそれ以外よりも優秀である。このグラマースクールを巡っては、公平ではないとして与党の労働党内に廃止を求める声もある。マーガレット・サッチャーもヒース保守党内閣で教育相時代に、グラマースクール廃止を打ち出した。しかし、今では、保守党はグラマースクールを維持する政策だ。
イングランドではそれぞれの州によって教育制度が異なるが、グラマースクールと、それ以外の生徒の学ぶ近代中等学校と呼ばれる学校がある州がある。これらの州などを対象に「子供、学校並びに家族」省のエド・ボールズ大臣が、このグラマースクールに成績の悪い学校を合併吸収させたり、協力させる体制を進めることを発表した。
学校の水準を上げることは英国の教育問題の最も大きな課題である。それは、教育水準を上げることによって英国がより公平な社会となると考えられているからだ。
Football
2008-06-21
ドイツの活躍が目立つユーロ2008(Germany
looks superior)
サッカーの欧州選手権(ユーロ2008)は今までに準々決勝3試合を終えた。この中で、ポルトガルを3-2で破ったドイツの勢いが光っている。予選のグループの試合で優れた試合運びを見せたオランダは、ロシアに敗れた。ロシアの戦術的な準備がオランダを圧倒した形だ。オランダは重要なパスが通らない。バンニストイロイにパスがわたらない。シュナイダーのシュートは的が定まらなかった。一方、ロシアは、左右のウィンガーが前線にボールを進め、効果的なカウンターアタックが効を奏した。ガッツのある試合運びを見せたロシアは勝利に値するチームだった。サッカーの新興勢力オランダは、トップクラスの選手以外のレベルが今ひとつだった。
ドイツに敗れたポルトガルも、現在世界一のサッカー選手といわれるロナルドとバルセロナの選手デコは、非常に優れた個人技を見せた。ドイツとの差は極めて小さかったが、トップ選手以外の選手の差が明暗を分けた格好だ。
準決勝は、ドイツはトルコと対戦し、ロシアはスペインとイタリアの試合の勝者と対戦する。
Politics
2008-06-19
ジョン・プレスコットの半生記(1)(John
Prescott’s story)
前首相のトニー・ブレアの下で労働党の副党首(1994-2007)、そして副首相(1997-2007)を務めたジョン・プレスコットが先だって半生記を出した。プレスコットといってもピンと来ない人が多いかもしれない。しかし、英国では最もよく知られた政治家の1人である。英国で「ツージャグ(ジャガー2台)」のプレスコット、はタブロイド紙でも使い古された表現だ。プレスコットは2台のジャガーを自分の選挙区とロンドンに持っている。両方とも中古車であるが、プレスコットが労働者階級出身であるためにマスコミは、プレスコットを「成り上がり者」的におもしろおかしく報道している。プレスコットは日本で言うと、森喜朗元首相のイメージだ。体格や性格も似ている。
プレスコットの半生記は、こういう出版物では珍しく、口語体で書かれている。この本の中でも何度も触れいているが、プレスコットは、あまり文章を書くのが得意ではない。そのためにジャーナリストが構成を手伝っているが、プレスコットの人物がよく出ている。読みながら何度も笑った。つまり、プレスコットは「面白い」人物だといえる。特に2001年の総選挙でウェールズのリルというところを訪問していた時のパンチ事件はプレスコットの人物をよくものがったっていると思う。農場に勤めている男性がプレスコットに至近距離から卵を投げつけた。プレスコットは殴られたと思って、直ちに殴り返した。そしてもみ合いになった。プレスコットの警護のメンバーがすぐに中に入ってことは収まったが、なにしろ総選挙の遊説期間中のことである。しかも副首相が手を出したというのは問題だ。その光景はテレビ局が録画しており、繰り返し報道された。普通の大臣なら辞任ということになっていた可能性が強い。しかし、その一報を聞いたブレア首相は当時の報道では「ジョンだからな」と言って苦笑いしただけだった。プレスコットの本によると、当初、ブレアは「プレスコットは謝るべきだ」と言ったが、プレスコットは「謝らない」と言って話は終わりになったようだ。プレスコット本人も副首相を辞任する必要があるかもしれないと思ったが、世論は異なり、この事件の後、プレスコットに激励の電話や手紙が殺到し、プレスコットが遊説訪問したところでは大歓迎されることとなった。むしろ低調だった選挙戦に活が入ったと言って歓迎する向きが多かったのである。つまり、この事件は、世論のプレスコットの受けとめ方を象徴した事件と言える。
プレスコットは次期総選挙には立たず、その時点で下院議員から引退するが、一代貴族に任命され、上院議員になると思われる。
Politics
2008-06-19
法令が増えすぎている社会(Laws
rapidly increasing)
イングランドでは、一日平均8法令が生み出されている。法令関係の専門出版社Sweet & Maxwellによると、2006年には2702の法令が作られ、2007年には3071の法令が作られた。サッチャー政権下では年平均1724、それにブレア政権下では平均2663の法令が生み出されたという。私たちの社会では、法令の数が増え続けており、そのために私たちや企業の負担がかなり大きくなってきている。現状で喜ぶのは弁護士たちだけかもしれない。
News
2008-06-15
成果のある「公共の場での禁煙」(Significant
effects on Public smoking ban)
2007年7月からイングランドで、パブ、レストランをはじめとする公共の場での喫煙が禁止された。その結果、心臓発作で病院に担ぎ込まれる人の数が大幅に減っている。シュルーズベリー&テルフォード地域では41%減っているという結果が出た。これは、禁煙する人の数が増えていることと、タバコを吸わない人が喫煙者と同じ場所にいることで受動的に喫煙する割合が大幅に減っているためだ。同じような結果は、スコットランド、アイルランド、フランスそれにイタリアでも報告されている。2006年から禁止したスコットランドでは、17%、アイルランドでは14%減っている。
News
2008-6-15
大学の入学試験を始める動き(Universities start their own entry exams)
英国では、大学への入学選考は、一般に、全国的なAレベルと呼ばれる試験に基づいて行われる。しかしながら、それでは入学希望者の能力がきちんと測れないことからインペリアル・カレッジ・ロンドンが独自の入学試験を始めようとしている。なお、英国では、バッキンガム大学(慈善基金設立)を除き、すべての大学が国立大学である。
2007年度のAレベルの試験の結果は、4人に1人がトップマークのグレードAを獲得した。また、10人に1人が、3つの科目でグレードAを獲得している。これはトップの大学にとっては大きな問題だ。例えば、オックスフォード大学では、AAA、つまり3科目のグレードAを必要最小限のレベルとしており、入学希望者の差があまりつけられないという事態が発生している。もちろんAレベルの結果以外に、本人から提出された書類などが検討の対象に入れられる。またオックスフォードやケンブリッジではインタヴューが行われるのが普通だ。Aレベルの不備を補うためにさまざまな工夫がこらされているが、インペリアルは、それだけでは不十分だと判断した。
大学独自の1995年にオックスフォード大学が、大学全体の入試を止めて以来、大学全体の入試は行われていない。しかし、インペリアル・カレッジ・ロンドンは来年度(2010年入学)から大学全体の入試を始めることとした。現在でも、インペリアル・カレッジ・ロンドンの医学部や、オックスフォードやケンブリッジの一部で独自の入試が行われている。インペリアルの場合、入学試験ではかろうとしているのは、入学志願者の知識ではなく、本来の能力(IQ、知能、創造性など)や問題解決能力である。他のトップ大学もインペリアルと同じような動きを始めると思われる。英国の大学の入試の制度はくるくると変わっている。その時々の政治の動きなどに影響されるからだ。
一方、これから見ると、日本式のセンター試験とそれぞれの大学の個別学力検査の入試とのミックスは、基本的な制度としてよくできた仕組みだと思える。
Politics
2008-06-14
下院議員の辞職(MP’s resignation)
英国の下院議員は辞職できない。これはかつて下院議員となることが名誉ではなく、その職が一種の義務であり、不承不承就任したということから来ており、議員の一存で辞職できないようにしたためだ。下院議員がその職を失うのは、下院議員である資格を失う場合のみだ。そこで使われるのが、皇室の2つの行政執行職である。これらは今や名目だけの職であるが、皇室や皇室の政府の職に就き、それから給与を得ていれば、皇室やその政府の批判をする下院議員の職とは両立できない、ということから来ている。
この職名は、Crown Steward and Bailiff であり、2つの地域the Three Chiltern
Hundreds of Stoke, Desborough and Burnham(バッキンガムシャー州)とManor
of Northstead(ヨークシャー州)の地名をつけて呼ばれる。この職は、通常、代わりばんこに使われる。
もし下院議員が、2つの総選挙の間にその地位を退きたければ、財務相にいずれかの職を申請する。それが許可されて下院議員を退くことになる。もし、新たに誰かが申請すれば、先にその職に任命されていた人が退くという形だ。
前首相トニー・ブレアは、2007年6月に首相と下院議員を退いた時、Crown Steward and Bailiff
of the Three Chiltern Hundreds of Stoke, Desborough and Burnhamに就任した。保守党の前影の内相デービッド・デービスも、自ら下院議員を退いて、補欠選挙を実施するためには、同じような手続きを踏むことになる。
Politics
2008-06-13
クレッグ自由民主党党首への疑問(Doubts
on Clegg’s judgement)
テロ容疑者の身柄拘束期間の延長問題をめぐって、自分の主張を正当化するために保守党のデービッド・デービスが下院議員を辞職し、自分の選挙区の補欠選挙へ再挑戦することを明らかにした。この結果、デービスは失うものが多いと思われるが、自由民主党の党首ニック・クレッグが失うものも大きいと思われる。クレッグの判断能力に大きな疑問符がついたと思われるからだ。
クレッグは、デービスが自分の選挙区から再立候補するに当たって、延長反対の同じ考えを持つ者として自由民主党からは候補者を立てないと約束した。前回の2005年の総選挙では、自由民主党の候補は、デービスの2万3000票に対して1万8000票を獲得している。第三位の労働党の候補者はわずか6000票だったために、デービス対労働党の候補者となってもデービスの勝利は間違いないものと考えられたからだ。
しかし、クレッグのその判断は政治家としておかしい。デービスは、この補欠選挙では、延長問題のみに的を絞って選挙運動を行うと約束したが、それが候補者を立てない理由にはならない。次の総選挙は2年以内に行われるが、その際には、この選挙区は自由民主党の一つのターゲット選挙区となる。それなのに今回は不戦敗とするのは筋が通らない。しかもクレッグは、デービスとの約束を正当化するために、党の全国並びに地方の合意を得ていると主張した。デービスの発表は誰もを驚かせたのに、デービスが発表する前にきちんとした党内の合意が取れていたとは考えにくい。全国の自由民主党員が、クレッグの判断に諸手を上げて賛成するとは考えにくい。
6月11日の首相のクエスチョンタイムでも、クレッグの質問は的を外れていた。クレッグは「誰もが延長に反対している」と主張した。しかし、それは正しくない。責任ある政党の責任者として自分の言葉には、もっと注意を払う必要がある。
問題は、ここにきてクレッグの不十分さが浮き彫りになってきている点だ。昨年12月に党首に就任以来、自由民主党の支持率には大きな変化はない。首相のクエスチョンタイムでは、要領の得ない発言を繰り返し、ブラウン首相からは子供扱いされている。質問をする際にも声は大きいが、その言葉には「冴え」がない。下院の議場で立っても、木偶の坊に見える。
副党首のケーブルが、前党首メンジー・キャンベルが辞任した後、代表代行として下院で発言する際には、今日はケーブルが何を言うだろうかとみんなが注目した。しかし、クレッグにはそういう期待感はない。
ケンブリッジ大学出身の41歳のクレッグは頭がよく、語学が得意であると言われる。しかし、頭がいいだけでは政党の優れた党首とはなれない。「冴え」を欠き、判断力に疑問のあるクレッグには、アルコール問題で党首の地位を棒に振ったが、酒を飲んでいない時の能弁に定評のあった元党首チャールズ・ケネディのレベルには到底到達できない。
昨年末の党首選挙で、クレッグは当初、対抗馬のクリス・ヒューンに大差をつけて勝利するものと思われていたが、開票の結果、2万1000票対2万500票のわずか500票の薄氷の差であった。もう少し選挙期間が長ければ、異なった結果が出ていたかもしれない。ここにクレッグの限界の予兆が現れていたように思われる。
Politics
2008-06-13
デービッド・デービスの賭け(David
Davis’s gamble)
保守党の影の内相デービッド・デービスが下院議員を一端辞職して、その補欠選挙に再び立候補することを表明した。下院がテロ容疑者の起訴前の身柄拘束期間を28日から42日間に延長することを賛成したことに対して異議を唱えるのがその目的だ。
その動機については、賛否両論がある。BBCの政治部長ニック・ロビンソンによると、BBCにはデービスの行動に賛意を示すメッセージが殺到しているという。しかし、私は、これでデービスが今後保守党党首となり、首相となる道は閉ざされたと思う。つまり、あまりにも極端な行動をする人物には保守党が警戒するだろうと思うからだ。もちろん保守党党首デービッド・キャメロンはこのデービスの行動を止めようとした。それには三つの理由がある。まず、保守党はテロ容疑者拘束期間の延長に反対したが、保守党が必ずしもそれで統一されていないことだ。6月11日の投票では、元内務相閣外相のアン・ウィトカム以外の保守党議員は延長に反対した。しかし、それは、賛否が拮抗している中でゴードン・ブラウン首相に打撃を与えるためであった。デービスの辞職、選挙で、保守党内の意見の違いが表面化する可能性がある。次に、特に世論が延長に賛成している中、保守党に対する評価がどうなるか完全に見極められない要素がある。世論の保守党への支持率が非常に高い中、それを減少させる可能性のある「不必要なこと」は何もしたくないという考えがあった。第三に、デービスの行動を制御できないキャメロンのリーダーシップに疑問が出てくる可能性だ。労働党は、このデービスの行動を労働党にとってよいことだと判断している。
この補欠選挙は7月に実施されることとなるが、ほとんどの人はデービスが再選されるのは間違いないと見ている。デービスは、この発表をする前に自由民主党のクレッグ党首と連絡をとり、延長に反対する同志として自由民主党は候補者を立てないという言質をとっている。2005年の総選挙では、この選挙区の結果は、デービスは2万3000票、次点の自由民主党候補は1万8000票、そして第三位の労働党候補は6000票であった。つまり、自由民主党が候補者を立てると労働党は候補者を立てず、その結果、デービスは負ける可能性があった。デービスは、クレッグの約束を取り付けたことで当選は間違いないと考えているに違いない。しかし、1997年の総選挙の自由民主党マーク・オーテンの例を考えると予断を許さない。オーテンは総選挙でわずか2票差で保守党候補を破った。しかし、この保守党候補が異議を申し立て、裁判の結果、再選挙となった。その結果は、驚くべきものであった。オーテンは3万7000票を獲得したが、保守党候補はわずか1万5000票しか獲得できなかった。保守党候補が潔くない、と有権者が判断したことが、この予想外大差の原因と言われている。デービスの場合も、必要のない補欠選挙を招き、「投票に行かせられること」を有権者が嫌えば、他の候補者次第では、予想外の結果が出る可能性もある。今回の補欠選挙で労働党は自党の候補者を立てる考えは全くない。前回の投票結果でも見られたように労働党はかなり弱い上に、その結果をデービスが再選された後、自分の議論を正当化するために使うことが明らかなせいだ。しかし、適当な第三者の候補者が出馬すれば、労働党はその候補者を支持すると見られる。
デービスがなぜこういう行動を取ったかは完全に明らかになっていないが、一つの可能性として、自分の将来にあまり大きな期待が持てなくなったことがあると思われる。現在の世論の動きでは、保守党が次の総選挙で勝つ可能性が極めて大きくなっている。キャメロンが失敗して党首を辞職、または総選挙で敗れれば自分の番が回ってくると考えていたデービスにとっては、必ずしも歓迎できない状況だ。デービスは現在59歳だが、キャメロンは18歳年下の41歳で、保守党が2年後に予測される次の総選挙に勝つと、デービスの出番は事実上なくなる。そういう中、影の内相としてキャメロンに仕えていることにあまり意味がなくなったのではないかと思われる。自分を抑えてキャメロンを支えているよりも他に追求するものを求める気持ちになった可能性がある。つまり、下院議員は辞めたくはないが、影の内相を辞任する手段として今回の行動に出た可能性だ。いずれにしてもデービスの今回の行動はデービスの政治家としての将来への大きな賭けだ。
Politics
2008-06-12
テロ容疑者の身柄拘束期間の延長問題(42
days detention proposal)
毎週水曜日には首相のクエスチョンタイムがある。対立政党の保守党をはじめ、自由民主党などの野党、それに与党の労働党の議員が首相に直接質問できる機会だ。お昼の12時から30分間という限られた時間であるが、この中にさまざまなドラマがある。保守党党首のデービッド・キャメロンは、このクエスチョンタイムで首相ゴードン・ブラウンの欠点を最大限に引き出し、決断のできない、考えをくるくる変える、弱い人物として描き出そうとしている。しかし、6月11日にはそうはいかなかった。この日の夕方には、首相の権威に重大な影響をもたらす採決が下院であった。このクエスチョンタイムの最も重要な質問はこの件に関してであった。
重要なテロ容疑者を起訴する前の身柄拘束期間を特別の場合に限って現行の28日から42日間に延長する提案を政府が出したが、その下院での採決が夕方に予定されていたのである。この件は、テロの危険性がかなり高くなっている英国で、テロ容疑の捜査に多くの時間がかかるために、その捜査の時間をできるだけ長く許そうというブラウン政府の提案だ。一方、それは英国の伝統的な自由を侵害する、と保守党と自由民主党らが主張した。また、労働党の下院議員の中に政府案に反対する議員が数多く出る見込みで、そのために、ブラウン首相自らがこれらの可能性のある議員に電話をして説得工作に当たったほどであった。
政治関係者やインテリが聴く、朝のラジオ番組「トウデイ」で、この日の朝、保守党の影の内相デービッド・デービスがおそらく政府案が可決されるだろうと言った。BBCの政治部長ニック・ロビンソンも政府案が可決されるような気がする、と解説していた。下院でもそういう雰囲気があった。それを反映してか、ブラウン首相の答弁は、自信に満ちているように見えた。しかし、結果は、賛成と反対の差はわずか9票差で、その差は、北アイルランドのアルスター民主党の9人の下院議員が賛成に回ったためにできた。もし、アルスター民主党が棄権していれば、賛否同数となっていたが、その場合には、下院議長が、慣例で現状維持の方に投票し、政府案が否決されていただろう。いずれにしても政府側が何とか下院は乗り切った格好だ。しかし、上院では、労働党は多数を占めておらず、否決される見通しだ。そのため、ブラウン政権の苦労は続く。
ブラウン首相とキャメロンとの質疑応答の際に、一つ気づいたことがある。ブラウンの次の労働党党首と目される外相のデービッド・ミリバンドが、自分の両側の閣僚としきりに話をしていた。極めてリラックスしている。ブラウン首相の「権威」がかかっている問題で、他人事のように振舞っている態度が気にかかった。一方、アルスター民主党との折衝に当たっていた北アイルランド相のショーン・ウッドワードは、自分の身体の向きをブラウン首相の方に向け、真剣な表情で話を聞いていた。ウッドワードの態度と較べるとミリバンドの態度は、いくら頭がよいと言われていても次期党首候補としてはふさわしくないと感じた。
Football
2008-06-10
2008 サッカー欧州選手権(Euro
2008)
6月8日からサッカーの欧州選手権が始まった。欧州の国対抗の選手権である。残念ながら、イングランドをはじめ、スコットランド、ウェールズ、それに北アイルランドとイギリスから出場する可能性のある4チームすべてが決勝に出場できなかったために、イギリスでの興味は半減している。それでもテレビでは、欧州選手権の試合をすべて報道している。
今までに戦った試合の中で、ポルトガルとオランダはいい試合をした。古豪のフランスはルーマニアと引き分け、2006年のワールドカップに優勝したイタリアは3対0でオランダに敗れた。オランダは、その正確なパスとチームプレイで、優勝候補と思わせるほどの試合運びであった。考えてみると、ストライカーにレアルマドリッドのバンニストイロイ、ゴールキーパーにはイングランドのプレミアリーグと欧州のチャンピオンリーグを制したマンチェスターユナイテッドのバンデサーなど、世界的な選手を何人も抱えており、チームがまとまると優勝できる可能性はある。
チームのまとまりは重要だ。イングランドの監督となったファビオ・カペロは、タイムズ紙とのインタヴューで、「選手権で成功する秘訣は?」と訊かれて、「ポルトガルのスコラリ監督(ブラジル監督として2002年ワールドカップ優勝)とヒッピ(イタリアの元監督で2006年ワールドカップ優勝)と話をしたが、2人ともチームに非常に強いまとまりがあり、焦点が定まっていることを理由に挙げた」と答えている。
今回の欧州選手権では、ドイツが優勝候補の筆頭であり、それにスペインが続く格好だ。下馬評はともかく、新興の比較的小さな国が台頭しており、その点で、従来の欧州サッカー地図が塗り替えられる可能性がある。率直なところ、イングランドが出ていても、現状では、ポルトガルやオランダには勝てなかった可能性が高いように思われる。
Politics
2008-06-10
ブラウンの悪夢(Brown’s
nightmare)
英国の首相ゴードン・ブラウンの人気は下がる一方だ。タイムズ紙のポピュラス世論調査によると、ブラウンの評価は、過去5年間の主要政党党首の評価で最低だという。保守党党首デービッド・キャメロンの2代前の党首であったイアン・ダンカン=スミスの評価は非常に低く、そのために前代未聞の保守党下院議員による不信任の投票の結果辞任したが、そのダンカン=スミスよりも評価が下回るという結果が出た。「今総選挙があれば、どの党に投票するか」という質問に対しては、保守党45%、ブラウンの率いる労働党25%という結果だ。
このブラウンの低い評価はどこから来るのか。6月9日の夜、チャンネル4の「ディスパッチ」という番組が、ブラウンの過去1年間を総括している。2007年6月に首相に就任して以来、テロ事件、洪水、口蹄疫など立て続けに事件に見舞われ、いずれも無難に乗り切ったブラウンは高く評価された。労働党の評価は高く、保守党には次の総選挙に全く勝ち目はないように見えた。当時マスコミは保守党党首のキャメロンを浅薄だと低く評価しており、それは通常保守党支持のテレグラフ紙の編集長もそうであったと言われる。ところが、それが今や完全に逆転し、労働党が2年先にあると見られる次の総選挙に勝つ見込みは極めて低くなっている。
問題の発端は、昨年秋の総選挙騒ぎだ。世論の支持の高かった労働党が猛スピードで総選挙準備に入り総選挙熱が高まったが、結局、ブラウンは総選挙を見送った。次点との差の小さな選挙区で保守党が意外に強いことに気づいたからだ。また、保守党党大会で保守党が死に物狂いで打ち出した政策が有権者に非常に受けがよかったからだ。ブラウンは、総選挙を見送っただけではなく、その保守党の政策をまねた政策を即座に打ち出した。この一連の出来事で、ブラウンは2つの非常に重要な失敗を犯した。一つは、総選挙を見送ったために「勇気がない」というレッテルを貼られたことだ。もう一つは、それまで10年以上財相を勤め「鉄の財相」と高い評価を受けており、その財政運営には信頼が寄せられていたのに、それがなくなってしまったことだ。「信頼の置けないはず」の保守党の政策をまねたために、それまでの「ブラウンへの信頼」を一挙にぶち壊す結果となったことだ。
それに輪をかけたのが、ノーザンロック銀行の国有化の問題だ。ノーザンロック銀行は、アメリカのサブプライム問題で手持ち資金を欠き、そのために取り付け騒ぎが起きた。取り付け騒ぎを収めるために政府が銀行を保証したために取り付け騒ぎは収まった。当時、他の有力金融機関には、ノーザンロック銀行を吸収できるだけの余力がなく、現実的な案は銀行の国有化であった。しかし、ブラウンは、「国有化」という言葉がかつての「古い労働党」を思い起こすために国有化はしたくなかった。しかし、結局、半年後、国有化に踏み切った。このためブラウンは決断ができないという評価を招くに至った。
その上、今年4月、5月の所得税率の簡素化の問題だ。この簡素化は昨年春にブラウン自身が決めたことだが、その実施は今年の4月からであった。この簡素化のために、最も収入の少ない層が増税の結果となった。そのために多くの非難が集まり、結局、急遽、税の控除額を上げるという政策変更をした。これらの一連のブラウン政府の政策で明らかになったのが、ブラウンがなかなか決断ができない人物であるとともに、その時々でその場しのぎの安っぽい政策変更を行うと言うことである。
ブラウンが首相となる前には、誰もがブラウンには首相となる資格があると考えていた。前首相トニー・ブレアが退いた後、労働党内のどの有力者も党首選挙に立とうとしなかった。確かにブラウンは非常に頭のいい人物である。しかしながら、政府の長となり、組織を運営していくには、違う能力が要求される。
ディスパッチの番組で明らかにされたことだが、ブレアは決断が早かったと言う。それは直感判断とまでいえる位であったとジャック・ストローは言う。官僚に文書を読んで翌朝までに選択肢を上げてくるように指示し、それで決断をしたという。一方、ブラウンは早朝から自分のEメールのメールボックスを明け、詳細に目を通すと言う。また、6時前からEメールを送り出す。また、文書を自分の所に持ってくるように指示し、それを深夜までかかって目を通し、翌朝、さらに関連の文書を持ってくるように指示するという。これでは決断が遅れるはずだ。問題は、ブラウンはマイクロマネジメントしようとしていることである。ビジネス省の閣外相であるディグビー・ジョーンズが自分の公用車には英国製車を使いたいと言った時、その話はブラウンまで上がって、ブラウンからジャガーをもらったか、ときかれたという。こういう話は、首相が介在する問題ではない。結局、ブラウンは「木を見て森を見ず」という状況に陥っている。それがブラウン政府の行動に出ている。
ブレア時代には、ブラウンと2人の共同政権的な色彩があり、お互いがけん制しあっていた。そのために適度なバランスが生まれていたが、ブレアがいなくなり、極端に政権の重心がブラウンに偏る形となった。そのためにブラウン政権は、ブラウンの性格を強く反映する結果となっている。政府としての組織を運営する能力に欠けるブラウンに国民は愛想を尽かしているというのが実態だろう。問題は、ブラウンの性格は急には変わらないことだ。ブラウンの悪夢はまだまだ続くだろう。
Politics
2008-06-07
メージャー元首相の不見識(Former PM’s indiscretion)
ジョン・メージャーが首相の地位を退いてから10年以上経つ。しかし、政治に口ばしを入れることをやめようとはしていない。残念なことは、メージャーの言うことに見当違いのことが多くなっているということだ。政治を離れて政治感覚が鈍くなっている上、具体的なデータに乏しい面がある。しかも我田引水的な議論が多くなっている。政治を離れれば、口をつぐんでいるほうが賢明だ。
メージャーは、1990年にマーガレット・サッチャーが退いた後、保守党の党首となり、1997年の総選挙で労働党に大敗を喫するまで首相を務めた。保守党内は当時特に欧州の問題をめぐって分裂しており、統制が非常に困難であったが、多くの人はメージャーの人柄を高く評価していた。しかし、メージャーの最近の発言には疑問を持つ。
例えば、BBCの政治番組に出て、犯罪が増加していると主張した。統計上の数字や、犯罪についての実際の姿を測るものとされている犯罪意識調査では犯罪は減少している。また、ゴードン・ブラウンがイングランド銀行の所持していた金を売ったことについて、自分の経験した1992年の「黒い水曜日」よりも英国のロスが大きいと批判した。「黒い水曜日」は、ポンドが投機の対象になり、大量に売られた出来事で、結局、英国が欧州統一通過機構を脱退せざるを得なかった事件である。この際、英国は巨額のロスを出した。しかし、この話を金の売却と比較することはおかしい。金の相場は、その時々の状況により変化し、当時スイスをはじめとする国々も金を販売した。金を売った後、金相場が上昇したのでブラウンは大きな損失を出したとは一概に言えない。
そして今回、テロ攻撃に対処するために政府が提出したテロ容疑者の身柄拘束期間を28日間から最大限42日間に延長する提案に関してだ。なお、通常の容疑者の場合には4日間となっている。メージャーは、今回の提案は、テロリストが増加するのに手を貸すと言うのである。メージャーは、これを6月6日付のタイムズ紙に寄稿した。確かに政府のさまざまな政策が個人の権利を束縛する可能性はある。しかし、テロの可能性が強くある状況の中で、それはある程度やむを得ないことだ。身柄拘束の期間については、ブレア前首相が2005年に90日間を提案したが結局28日間で落ち着いた経緯がある。身柄拘束の期間の長さはともかくとして、この適用は極めて限られた場合のみだ。その期間の延長がテロリストの増加を招く可能性があると言うのは言いすぎだと思う。
Politics
2008-06-05
居心地のよすぎる英国の刑務所(Too
comfortable prison)
刑務所に不法に忍び込もうとした例が過去5年間で26件(42人)もあった。過去の服役囚が刑務所に帰りたいと侵入しようとしたり、また、麻薬を運び込もうとしたのが主な理由だと見られている。
英国の刑務所の服役囚の数が近年急激に増え、史上最高の8万3000人になり、これ以上受け入れることが困難になっている。しかし、刑務囚が、早期退所の機会を断る例が増えている。1999年から2006年の間にその数は3万7000人にも上っている。
法務省はその主な理由として、早期退所に伴って「住所」を報告しなければならないが、それができないこととしている。しかし、経団連によると現在の刑務所は寝るところと食事を提供する、いわゆる「B&B」(ベッドと朝食を提供する宿)になってしまっているという。刑務官組合によると、刑務所の内部の方が麻薬が安く手に入ることがその原因の一つだとしている。つまり、刑務所の快適さがこの問題の原因だという見方だ。
3分の2が刑務所を出た後、2年以内に再び刑務所に帰ってくる。また、その率は、十代の場合には3分の4になっている。確かに、刑務所に最初に入ってくる際には、こわごわと入ってくる人も多く、中には恐怖のあまり、自殺するものもいる。しかし、一端刑務所での生活に慣れると、刑務所は結構居心地のいいところになるようだ。あまりにも居心地がよすぎる英国の刑務所は大きな問題だ。
なお、法務省は、対立政党からの質問に答えて以上の数字を提供したが、これらの数字が信頼できない可能性があることを繰り返し強調している。英国ならではの態度だが、本当に真剣に問題に取り組んでいるのか疑問に思う。
News
2008-06-03
刑務所でのパン製造技術習得(Prison
Bakery)
刑務所を出所してもしばらくすると罪を犯し、また刑務所に帰ってくるという例が多い。英国では、服役囚の再犯率は67%にのぼると言われる。この原因の一つは、出所後なかなか仕事が見つからないことだ。
英国ではパン職人の数が足りない。そこで刑務所でパン製造の資格と技術を身につけた人が、出所後比較的仕事が見つけやすい。イングランドのヨークシャー地方のドンカスターに近いところにあるリンドルム刑務所で2004年に150万ポンド(3億円)を費やして商業パン製造レベルの施設を設けた。これが成功しているといわれる。大手のパン製造会社やパンを作っているスーパーマーケットなどに人材を供給している。作るパンは、もちろん刑務囚の食べるパンだけではなく、クロワッサンやデニッシュ、バゲットなど多岐にわたる。現代の英国人の味覚は大きく変化しており、非常に多くの種類のパンが売られている。さまざまなパンの需要に応じる必要がある。刑務所での職業訓練も市場の動きに応じた対応が必要な時代だ。
Politics
2008-05-26
公務員最高の6億円(Royal
Mail CEO’s Pay: £3M)
英国の郵政公社であるロイヤルメールの社長の2007年度の報酬が明らかになった。まず、基本給が633,000ポンド(1億2660万円)、ボーナスが381,000ポンド(7620万円)、それに長期目標達成ボーナスが199万ポンド(4億円)の合計300万ポンド(6億円)である。
ロイヤルメールは、2007年度に2億7900万ポンド(558億円)の赤字を出しているが、ロイヤルメールの監視機関であるPostcommが設定した目標を達成したために社長のアダム・クロージアーの年間報酬がこの額となった。英国の公務員最高の報酬である。
Postcommとロイヤルメールを管轄するビジネス省の目標設定の方法と報酬支払い基準の再検討が必要だ。
Politics
2008-05-18
世界の国の競争力(Global
competitiveness league table)
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が2008年5月15日に発表した世界の55か国の競争力評価で、イギリスは21位となった。昨年の20位から下がった。イギリスの経済パフォーマンスが低下していることがその主な原因である。
1位はアメリカである。アメリカは1994年から続けてその地位を守っている。この評価が始まった1989年には、日本が1位であった。ところが今や日本の地位は大きく下がり、イギリスに続く22位となっている。アメリカのサブプライム問題から発する金融逼迫でアメリカの地位も揺らぐ可能性がある。しかし、IMDによると、アメリカは日本と違って経済が開放的であり、弾力的で、しかも企業家精神が旺盛である。そのため、アメリカは「日本の悲劇」は避けられる可能性があると示唆している。一方、日本にとっては、競争力を高めるにはどういう方向に進むべきかも示唆していると言える。
Politics
2008-05-25
経験豊富なビジネスマンがロンドンの第一副市長となる(An
experienced businessman becomes London First Deputy Mayor)
新ロンドン市長ボリス・ジョンソンが4人の副市長の筆頭の第一副市長にビジネス経験の豊富なティム・パーカーを任命した。ジョンソンは、2008年5月1日に行われたロンドン市長選挙で現職の労働党ケン・リビングストンを破り、市長に当選した保守党下院議員である。パーカーは、2008年7月7日から副市長としての仕事をロンドン市のチーフエグゼクティブの役割とともにスタートする。また、9月にはロンドンの地下鉄やバスをはじめとした公共交通を管轄するロンドン交通の会長にも就任する。そのため、ロンドン市ではパーカーに権力が集中することとなる。
パーカーは、プライベート・エクイティ・ファンドの代表として、日本のJAF(日本自動車連盟)のようなAA(自動車協会)や靴の製造販売会社クラークス、さらには電気製品製造会社のケンウッドの社長を経験し、会社を立て直した人物である。サンデータイムズの「リッチリスト」によると、資産は英国で1049位の7500万ポンド(150億円)である。たいへんな金持ちであり、パーカーはロンドン市の役職に就くが、給料は受け取らず、その代わりに、名目だけ年に1ポンド(200円)を受取ることにした。その上、現在就いている数々の会社の非常勤取締役職なども、オーストラリアのメディア関係の無給の職を除き退くことになった。
労働組合関係者は、パーカーを敵視している。コスト削減のために人員削減を次から次に実施し、会社を立て直しては売却してきたため、アセット・ストリッパーとか「悪魔王子」などと呼ばれている。しかし、この経験が、ロンドン市でどのように発揮されるか見ものだ。ロンドン市の効率化とコスト削減が成功すれば、将来、保守党政権下で同じようなことが実施されるだろう。なお、パーカーはオックスフォード大学時代に、労働党クラブの会長を務めた人物で、かつては労働政権下で財務省に務めたことがある。
元ジャーナリストで、タレント的な活動をしてきたジョンソンにロンドン市の経営能力があると真剣に考えている人はほとんどいない。しかし、ジョンソンの父親も言ったように、ジョンソンは能力のある人を自分の回りに置く人物だ。今回のパーカーの任命は、それを裏付ける証拠だといえる。
Politics
2008-05-19
英国の郵政公社ロイヤルメールの改革案(Royal
Mail Reform plan)
英国のロイヤルメールは、日本で2007年まで存在した日本郵政公社と同じ形の会社だ。政府が100%の株式を持つ株式会社である。かつてロイヤルメールの経営陣が民間からの投資を導入しようとしたことがあったが、政府はそれを認めなかった。しかし、今や郵便サービスの監視機関であるPostcommが民間からの投資を提案する改革案を出した。Postcommは、ロイヤルメールの効率化が十分ではないと判断しており、それを成し遂げるために民間資本からの圧力が必要だと考えたからだ。
英国の郵便事業もインターネットやEメールの急激な増加の影響を受けており、手紙の量が今後減少する見込みだ。一方、英国の郵便事業の活性化を狙って、郵便事業の自由化が行われた。しかし、参入業者は付加価値税(VAT)を払わねばならないが、ロイヤルメールはそれが免除されているなど、いくつもの特典が未だに与えられている。この一つの理由は、全国どこにも一律の値段で郵便が届けられる仕組みを維持していくためだ。地方へ行けば都心と異なり、郵便一つあたりのコストが増える。ロイヤルメールはかつて地域ごとの値段を提案したことがあるが、それを政府は拒否した。しかし、Postcommは、それを勘定に入れても、ロイヤルメールは他の郵便業者と対等に競争し、その費用を上回る効率化が可能だと判断している。また、ロイヤルメールの足を引っ張っている年金資金の大幅な不足に早急に手を打つべきだと考えており、民間資本の導入がそれを促進すると見ている。
なお、ロイヤルメールは全国の郵便の60%を扱うが、98%を配達している。つまり、企業などは、安いロイヤルメール以外の郵便会社を使うが、これらの郵便会社がプロセスの最後の配達にはロイヤルメールを使っている。ロイヤルメールが全国に渡る細かな配達網を整備しているからである。
Politics
2008-05-23
ブラウン首相の足りない点(What's
lacking in Gordon Brown)
労働党の支持率は20%台にまで下がり、保守党との差は開く一方だ。2007年6月にトニー・ブレア首相の後を継いで、財務相から首相となったゴードン・ブラウンへの支持率は下がりっぱなしである。この背景には、まず1997年から政権についている労働党への飽きがある。また、アメリカのサブプライム問題から端を発した金融危機で英国の景気が悪化したことがある。しかも住宅金融ローンが借りにくい上、持ち家志向の強い英国の住宅価格が下がっているなど、政治環境が政府にとって悪化していることがある。しかし、ブラウン自身が招いている点もある。今回はこのブラウンの問題について分析してみたい。
昨年秋、ブラウンが当時の高い支持率を背景に総選挙を実施しようとしてその準備がスタートした。しかし、次点との得票差の少ない選挙区で保守党が予想外に強く、労働党が大幅に議席を失いかねないことに気づき、総選挙を見送った。その直後、保守党の国民に好意的に受けとめられた政策によく似た政策を発表し、物まねだ、と批判された。それ以来、ブラウンの人気はがた落ちである。2007年末から2008年初めにかけて、官僚の中で、ブラウン政権は短い、という噂が流れ、官僚の士気にも大きな影響をもたらした。ブラウンに代わる人物をという声もなくはないが、ブラウンに代わって保守党のデービッド・キャメロンに対抗できる人物は今の労働党にはいない。かつて、元厚生相のアラン・ミルバーンがいたが、ブラウンがミルバーンの芽をつぶした。
ブラウンが首相になる前に、ブラウンが首相となるのにふさわしい人物かどうかが大きな話題となった。誰もが認めるのは、ブラウンが非常に知的な人物であり、政界の重鎮であることである。しかし、ブラウンが何もかも支配せずにはおれない性格だ、とか、自分のお気に入りの少数の人物だけに頼り、他の人の意見を聞こうとしない、とか多くの批判的な声があった。
問題は、ブラウンが国のリーダーとして、首相になるまでの経験が極めて限られていることだと思われる。ブラウンは、学生時代にスコットランドのエディンバラ大学の名誉総長(Rector)であったことがある。学生の政治運動に深く関わっていた。その当時の、自分の取り巻きに相談して次の手を考える手法がスケールは異なるものの今まで継続してきている。ブレアは、1994年に労働党の党首となり、1997年に首相となるまで、政党という組織のリーダーとしての経験を積んだ。しかも労働党の憲法といえる綱領から「産業の国有化」という言葉を除くために、非常に大きな努力をした。そのために、組織を理解する経験があった。それが首相となってから、役に立った。一方、ブラウンには、そういう経験がない。エディンバラ大学を博士号を取って卒業してから学者、そしてジャーナリストになったが、実際に組織をトップとしてコントロールした経験がない。2007年6月にも労働党党首となるや否や首相となった。そのために、組織の運営を十分理解することなく、首相となったのである。ブレア政権下での10年余りの財相時代にも、財務省を「独断専行」的に運営し、自分が考えていることを官僚とコミュニケートして発展させていく、ということがあまりなかった。ある元官僚は、テレビのインタビューに答えて「ゴードンは面と向かって交渉できない人だ」と言っている。
ブラウンはごく小さな自分の仲間内で政治をしているという批判に答えて、首相になるや否やビッグテント政治を打ち出した。つまり、人材を派閥や政党、今までの経緯を超えて、重要な仕事に任命した。しかし、その成果は上がっていない。昨年秋の総選挙を巡る失敗で明らかになったように、ブラウンはきちんとした分析をまず行うことなしに、一挙に総選挙に走り出してしまった。自分の小さな仲間内に頼った結果である。ブレアなら、世論調査の専門家フィリップ・ゴールドに頼んで詳細な分析をした後決断していただろう。
その上、自分の能力におごりが出たことも事実である。優秀な人は自分の得意な分野で失敗するとよく言われるが、ブラウンの場合もそれがまさに当てはまる。財相最後の2007年の予算で、2008年4月からの税制の改革を決めた。課税率を従来の三段階の40%、22%、10%から40%と20%の二段階にしたことだ。22%から20%に下げたことで、年収1万8000ポンド(360万円)以上の人は、それまでよりも税額が下がるが、最低税率を10%から20%に上げたために、それ以下の年収の人には増税となった。子供のいる人や65歳以上の年金生活者には国からの手当てがあり、増税にはならないが、これらの枠に入らない貧しい人たちに負担が大きくなる構図となったのである。この問題が、2008年4月に噴出した。ブラウンの支持率が大幅に下がっている時に、輪をかけて大きな問題が発生したのである。そのため5月1日に行われた地方選挙では労働党は記録的な敗北を喫した。その後、税率の問題を緩和するために政府は個人の控除額を増額したが、時既に遅く、ブラウンは大きなダメージを受けた。
ブラウンは首相になるのを待ちかねて首相となった。ブラウンは自分はブレアよりも首相としてふさわしいと信じていた。確かに、首相となる前、ブラウンの方がブレアよりもはっきりとしたビジョンを持っていたといえるだろう。しかし、ブラウンが首相となったとたんに自分の欠点がさらされることになった。ブラウンは2008年になってから戦略アドバイザイザーを入れるなど、自分の欠点を補う努力をしている。ブラウンは真剣で勤勉な政治家である。しかし、ブラウンの例は、それだけでは優れた首相にはなれないことを示している。
Politics
2008-05-20
シェリー・ブレア(Cherie Blair)
前首相トニー・ブレア夫人のシェリー・ブレアが自分の半生記を出版した。シェリーは、日本の司法試験にあたる法試験にトップで合格した人物であり、主に人権問題を扱うトップの法廷弁護士である。将来は判事となると目されている優秀な人物であるが、この半生記には多くの批判が寄せられている。特に、現首相のゴードン・ブラウンとトニー・ブラウンとの関係を扱った部分がブラウンに批判的だと言うのである。
シェリーは、首相夫人として10年余りをダウニング街の首相官邸の中で過ごした。なお、首相官邸の中の首相のフラット(アパート)には台所があるが、それはきわめて小さい。そこで子供4人を含む家族のために調理した。一番下の子供のリオは2000年に生まれた。ブレア夫妻がエリザベス女王の招きでスコットランドのバルモラル宮殿に宿泊した時、リオを身ごもった。バルモラル宮殿の職員がシェリーの持ち物をすべてチェックするので、避妊用品を持っていかなかったためであるという。リオはそのためにブレアが首相在任中に生まれることとなる。
英国の首相夫人にははっきりとした公的な役割はないが、多くの公式行事に出席し、また、多くの手紙を受け取る。もらった手紙には返事を送る必要がある。シェリーは、首相の妻でありながらも自分のキャリアも継続した最初の人物であったが、自分の仕事のほかにも何役もをこなす必要があった。母親としての役割のほかに、シェリーは35のチャリティの世話人をしており、首相官邸では、毎週火曜日にチャリティの関係のレセプションを開いていた。また、首相夫人として年に8回程度、発展途上国などへ訪問した。無報酬であった。
1997年に首相官邸に入った時、それまで住んでいたロンドンのイズリントンにあった家を売った。売った時の金額は65万ポンド(1億3000万円)であったが、物件の価格の上昇で、それが2007年には時価215万ポンド(4億3000万円)まで上昇した。シェリーは、後にこれは失敗だったと言っているが、それがシェリーの頭にあったのだろう。2002年に長男の通うブリストル大学の近くに2つのフラット(アパート)を自分の友人のボーイフレンドを通して購入したが、そのボーイフレンドがイカサマ師であることがわかり大きな事件となった。俗にシェリーゲート事件と言われる。もともと貧しい家で育ったシェリーには常にお金の心配があったことが背景にある。
シェリーは、夫のブレアが1994年に労働党の党首になって以来、マスコミに批判され続けている。服装、言葉遣い、友人関係、また、講演でお金を取ったことなど、その批判の目はすべての分野にわたる。シェリーは、年に100回から120回の講演をするが、お金を取ったのはそのうち10回程度であるという。しかし、シェリーへの批判はやまない。今回の半生記もその一つだ。シェリーがブレアと共に首相官邸を2007年6月に転出した時、取材のマスコミに向かって「皆さんとお会いできなくなって寂しいと思いません」と言ったが、「女」は強くなければ生きていけないのだろう。
Politics
2008-05-19
英国の監視カメラ(CCTV
in Britain)
英国の監視カメラの数は、400万台以上と言われ、世界で最も監視カメラ(CCTV)の使われている国だ。2012年までにその数は800万台に達するという予測もあるほどである。ロンドンで生活していると、一日に300回CCTVに映像が捉えられるといわれる。
英国にCCTVがアメリカから入ってきたのは50年前だが、その当時は録画機能はなかった。しかし、1976年の犯罪捜査でCCTVの記録が証拠に使われて以来、犯罪捜査に急速に使われることとなった。アイルランド共和軍(IRA)がイングランド各地で爆弾攻撃を仕掛けながらもロンドン地下鉄に手を出さなかったのは、8000台あるCCTVのためだという話もある。2005年7月7日に起きたロンドン同時爆破事件でも犯人を特定するためにCCTVは大きな役割を果たした。CCTVがあると人々が安心するという効果がある一方、CCTVの犯罪を防止する役割には期待していたほどの結果は現れていない。しかし、今では犯罪の立証や捜査をはじめ、それ以外の多面的な目的に使われている。
その推進力は、人工知能などをはじめとした機能の向上だ。ロンドンのシティでは、IRAのテロリズム攻撃以来、地域内での自動車のナンバープレートを読む、鉄の輪と呼ばれるシステムを用いており、番号を読むや否や3秒以内にデータベースとの照合を終えることができる。IRAが犯行に使う自動車は盗難車であることから、盗難車を探せば手がかりにつながるという発想だ。今では北アイルランドの政治状況は安定化し、IRAの危険性は減ったが、毎日4件はこれで引っかかってくるという。
また、プールの中にCCTVを設置して、監視員の気づかない水難事故を防ぐようなシステムを作ったところもある。ただし、このシステムは高価だ。6万5千ポンド(1300万円)である。
イングランド北部のミドルスブラでは、CCTVに拡声器も設置し、CCTVで監視しているコントローラーがごみを落とす人を注意し、街の中心街をきれいに保つのに貢献している。この設置費用は4万ポンド(800万円)だ。CCTVで監視しながら、警察と連携して対応処置をとることは頻繁に行われている。
オランダでは、音声認識機能のついたCCTVが実用化されている。街でのけんかなどで人が声を張り上げるとそれを察知し、警察に通報する仕組みだ。この設置で、一週間のうち、人が実際にCCTVで監視するのは金曜日と土曜日の二日だけに減らしたという。
顔面認識や歩行認識などさまざまな技術が開発途上であるが、犯罪に関連した分野では、CCTVの映像は犯罪の証拠として使われる以外に、携帯電話、DNAなどをはじめとする他の手がかりと総合して使われている。CCTVの利用は確かに個人のプライバシーの侵害の問題に密接に関連しているが、CCTVは今後、多くの分野でますます利用されていくことになるだろう。
Politics
2008-05-13
保守党タレント候補がロンドン市長選に当選(New
London Mayor)
保守党下院議員で、テレビでも有名な著名人ボリス・ジョンソンが現職の労働党ロンドン市長ケン・リビングストンを破って新ロンドン市長に当選した。このロンドン市長は日本の東京都知事にあたる。選挙戦が始まった時には、ジョンソンがロンドン市長になるとは誰も真剣に考えていなかった。ジョンソン自身、ロンドン市長になるとは思っていなかったようだ。なれば、2012年にオリンピックが開かれるロンドンの市長として今年8月の北京オリンピックに行かなければならないと言われ、「その時にはトスカニー(イタリア)で休暇を取っている」と言ったぐらいである。リビングソンには批判も多かったが、多くの反対を受けた混雑税を導入し、成功させたように、市長としての手腕は卓越しており、リビングストンの三選は間違いないものと見られていた。
しかし、日本の宮崎県の東国原英夫知事や大阪の橋下徹知事の当選のように、イギリスでもテレビで人気を得た著名人が重要な役職に当選する時代となった。もちろん二期8年間市長を勤めてきたリビングストンの三選は長いという印象はあり、ロンドン市民の中に一種の飽きがあったのは事実である。それにリビングストンの所属する労働党の支持率が大幅に下がっていたことも結果に大きな影響を与えた。同時に行われた、イングランドなどの地方選挙でも労働党は大敗を喫している。しかしながら、イギリスの選挙風土も大きく変わってきたように思われる。特に20台、30台の世代が「ジョンソンでなくっちゃ」と言ってジョンソンに投票したことが大きな風を巻き起こした。オーストラリア人の選挙のプロが、選挙をうまく取り仕切ったこともある。
ジョンソンの問題は、誰もに好かれたがることだ、と指摘する声がある。冷徹な面のあったリビングストンと較べると、市政を大きく変えることには期待できないだろう。しかし、近年低調であった選挙に活気を与え、関心をもたらせたことはその大きな功績の一つといえるだろう。
Politics
2008-05-14
財務相の所得税修正(Darling’s
change in taxation)
労働党の国民からの支持率が非常に低下している。5月9日のサン紙の世論調査では、「もし今選挙があればどの党に投票するか」との問いに対して、49%が保守党と答え、わずか23%が政権政党の労働党を支持した。これは日本の福田自民党政権並みの支持率だが、労働党の支持率は、世論調査が始まって以来、最低と言われる。最近ブラウン首相率いる政府の支持率は低迷していたが、この労働党の特別に低い支持率の大きな原因は政府がこの4月6日から所得税の税率を変更し、最低の所得税率を10%から20%に上げたことだ。それまでの3段階の10%、22%、40%から、2段階の20%と40%に変更したのである。このために課税最低限度額を超える収入は、いきなり20%の税額となった。そのため年収が課税限度額を超え、1万8000ポンド(360万円)以下の人は、最大230ポンド(4万6千円)手取り額が減ることになった。この影響を受ける人は530万人といわれる。このため、国民が反発し、しかも労働党の下院議員の中に政府に公然と反旗をひるがえす者が出た。
この世論と労働党内の反乱を受けて、アリスター・ダーリン財相は5月13日下院で所得税の修正を発表した。予算年度内に所得税を変更することは極めて異例である。予想を大きく上回り、ダーリン財相は課税最低限度額を600ポンド上げるという特別措置を取った。この結果、600ポンドの20%つまり、120ポンドが払い戻されることになった。9月末に60ポンド、そしてそれ以降、月に10ポンドづつである。40%の税率がかかる年収約800万円以上の人の税金は調整され、手取り額が増えることにはならないが、それ以下の人はすべてこの修正の恩恵を被ることになった。
この修正にかかる費用は27億ポンド(5400億円)である。実際に所得税率の変更で手取りの減った人を救うためには、7億ポンド(1400億円)で済んだが、それ以外の中堅所得階層が燃料や食費の高騰で影響を受けていることを考慮し、また、労働党の支持率回復を狙って枠を広げた格好だ。政府労働党が国民の関心に柔軟に対処した例の一つであるが、ブラウン政権では支持率回復のために、今後このような柔軟な対応がかなり多くなると思われる。
Politics
2008-05-01
タイムズ紙の政党へのスタンス(The
Times’ Political preference)
恐らくタイムズ紙は、英国の新聞の中では、最も読み甲斐のある新聞だろう。同じ題材の記事でも、その情報量が豊富で、深い分析があることが多い。他の新聞が取り上げないことでも記事として載せることがある。時に我田引水的な記事を載せ、中身のないことをあるように書くことがあるが、一般に、タイムズを読んでいれば、社会で何が起きているか大体つかむことができる。スポーツ関係の記事でもタイムズ紙の分析のレベルは非常に高い。サッカー関係の記事でタイムズ紙を上回るのはタブロイド紙の日曜紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」ぐらいであろう。
英国では、高級紙とタブロイド紙の大きく分けて2つの分類がある。タブロイド紙はいわゆる大衆紙である。近年、タイムズ紙も新聞のサイズをタブロイド紙と同じサイズにしたが、タイムズ紙はタブロイド紙ではない。高級紙の日刊の販売部数では、テレグラフ、タイムズ、ガーディアンそしてインデペンデントと続く。テレグラフは、読者の多くが保守党支持者、ガーディアンは労働党、そしてインデペンデントは自由民主党支持者が多い。タイムズ紙は、その立場を時として変える。
タイムズ紙は最近では、あからさまに保守党支持になっている。タイムズ紙のコメンテーターの1人は元タイムズ紙の副編集長で、現職の保守党下院議員である。また、現在の副編集長の一人は保守党の候補者選に出馬したことがある。特に、デービッド・キャメロン率いる保守党が世論調査で非常に高い支持を受けていることがその原因ではないかと思われる。新聞も結局は商売であり、売れなければ話にならない。そのために、自紙の読者層にアピールしそうな立場に変わっていくのはやむを得ないだろう。
その流れを受けて、5月1日投票のロンドン市長選では、保守党のボリス・ジョンソンの支持の立場を明確にした。ボリスがロンドン市長になれば、その言動に大きな不安があるのにも拘わらずである。この点では、タイムズ紙はもう少し超党派の立場でもよかったのではないかと残念に思われる。
Politics
2008-04-19
ブラウン首相の今後の見通し(Brown’s
prospects)
ゴードン・ブラウン首相がアメリカ訪問から帰国した。アメリカでは、ブラウンの活躍が目立った。英国内ではブラウンを落ち目一方だと決め付ける向きがあるが、有権者のブラウンへの評価は改善される可能性がある。
まず、アメリカでのブラウンの行動を総括しよう。国連の安全保障理事会でアフリカのジンバブエを鋭く批判したことは、評価される。ジンバブエで3月に行われた大統領選挙などの選挙結果を未だに発表していないことを取り上げ、ムガベ大統領は選挙を盗むことはできない、と主張した。今まで10年間あまりにわたる、旧宗主国英国のジンバブエに対する柔軟外交を変更し、ブラウンの断固とした立場を国際政治の場で示したことは効果があった。もちろん、国連事務総長、アメリカ、フランスなどとの事前の根回しがあり、これらの国が声を併せるという形であったが、特に強い発言をしたのは英国であった。
また、ブッシュ大統領と会った以外に、アメリカの3人の有力大統領選挙候補者全員とワシントンの英国大使館で会談した。3人とも選挙遊説中の多忙の中、時間をわざわざ割いて、ワシントンに飛び、ブラウンに面会した。フランスのサルコジ大統領が訪米した際、わずか1人の大統領選挙候補者と会っただけであるのと好対照だ。ブラウンのアメリカへの影響力が伺われる。
それに、ブラウンは、アメリカの有力銀行の経営陣を集めて話をした。現在の世界的なクレジットクランチを乗り切るためには、世界的な協力が必要で、それぞれの銀行がいくらの損失を出したか正直に言う必要があると主張したのである。過去10年余りの間、世界で最も優れた財相と言われ、数年前にはIMFの事務総長への声が上がったブラウンならではの動きである。ブラウン以外のどの国の首相がアメリカの地でアメリカの有力銀行にこういうことを言えるだろうか。
これらの舞台設定は、ブラウンを支える新しい広報戦略チームが周到に準備したと思われる。付け加えて、今週号のアメリカの有力誌タイムが、ブラウンを取り上げている。ブラウンを高く評価した記事である。ブラウンには大きなビジョンがあり、「純粋に物事を考え、人のためになることをしようと努力をしており、しかも国際的である」と結論付けている。
一方、国内では、ブラウンの人気は労働党内外で下降している。労働党の中では、ブラウンの人気が下降しているため、5月1日に行われる地方選挙を心配する人が多い上、政府の二つの政策を巡って大きな批判が起きている。特に、政府の役職についていない一部の労働党下院議員や政務補佐官クラスの下院議員が政府とブラウンを批判している。問題になっている政策は、所得税の最低課税率の廃止とテロリストらの拘束期間の延長の問題である。所得税の問題では、年間1万8000ポンド(360万円)以下の低所得者の中に不利になる人がいる、また拘束期間の延長は人権上の問題があるというのである。これらの批判があるにせよ、ブラウンの政権に大きな影響が出ることは当面ないと思われる。前回総選挙は2005年に行われたため、5年の任期の下院の選挙は2010年の5月まで実施する必要はない。
ブラウンの支持率が下がっている有力な原因の一つは、現在の経済の状況である。恐らく2010年までに現在の経済状況は向上するだろう。景気後退に瀕していると言われながらも、それは避けられる可能性が高い。世界経済に大きな影響を与えるアメリカの連邦準備制度理事会バーナンキ議長は世界大恐慌の専門家であり、今までの数々の大胆な施策で見られるように対処のしかたを知っている。それに国際的な政府や中央銀行間の協力がある。英国政府は断固たる政策を取りつつあり、経済はバーナンキ議長の見方のように2008年後半から上向くのではないかと思われる。バーナンキ議長の政策や英国政府らの政策が後手後手に回っていると批判する向きがあるが、歴史を振り返っての批判はたやすい。バーナンキ議長、アメリカ政府や英国政府が取っている政策を現在の深刻な状況が出現する前に取る事が可能であったろうか。
1997年の総選挙で、労働党が保守党前政権に対して地すべり的大勝利を収めたが、保守党政権下での経済運営は比較的成功していた。しかし、有権者は、保守党の経済面での功績を無視した。現在の英国の有権者は、順調な経済を当たり前のこととして受け止めている。そのため、経済が一度苦境に陥ることが政権の手腕を見せるちょうどよい契機となる可能性がある。2010年までには国有化したノーザンロック銀行が成功し、政府がそれから利潤を得ることができる可能性もある。経済については、今後のブラウン政権の手腕次第でいくらでも状況は変わりうると思われる。
英国では、保守党のキャメロンが次期総選挙に勝ち、保守党政権になると見ているコメンテーターが多いが、それはあまりにも時期尚早であると思われる。ブラウンにはまだまだチャンスがある。ブラウンのアメリカ訪問をきっかけにブラウンの反攻が始まったと思われる。
Politics
2008-04-11
外国人は英国の選挙に投票できるか(Right
to Vote)
この5月1日には地方選挙が行われる。目玉は、ロンドン市長選だ。二期8年間勤めた現職の労働党ケン・リビングストンに保守党の下院議員ボリス・ジョンソンが挑む。世論調査ではジョンソン有利との結果が出ており、英国の賭け業者も軒並みジョンソン有利と見ている。なお、ジョンソンは下院議員の地位のままでロンドン市長選に立候補でき、もし、選挙に負けても下院議員の地位はそのままだ。
それでは誰が、これらの選挙に投票できるか。
これは、英国では複雑だ。英国の国政、地方さらに欧州レベルの選挙に投票できるのは、英国民はもちろんのこと、英連邦(コモンウェルス)の国民、それにアイルランドの国民も投票できる。これは、1918年の選挙法でその当時の英国に属する人が投票権を与えられたことによる。しかし、英連邦に所属する国は50近くあり、それらの国やアイルランドの国民が英国の選挙に投票できるのはおかしい。逆にアイルランド並びにいくつかの国で、英国民の投票を認めている。お互いの関係を強めるという効果はあるだろうが、制度としてはおかしい。
さらに英国以外のEUのメンバー国の国民も英国での地方と欧州の選挙に投票できる。しかしながら、それ以外の国の国民は、永住権を持ち、いくら長期間住んでも何らの投票権も与えられてはいない。せめて身近な地方選挙ぐらいには投票権を認めてもよいのではないかと思われる。
Politics
2008-03-28
経費ルールを悪用する欧州議会議員(MEP’s gravy train)
欧州連合(EU)の議会は、EU参加25カ国の議員785人で構成されている。最近、この議会議員の経費の悪用が大きな問題となった。年間、13.2億ユーロ(2972億円:1ユーロ=157円)の予算を持つ欧州議会の自己管理は非常に甘い。経費の悪用の問題はかねてから何度も取り上げられているが、その対応は極めて遅い。
議員の報酬は、各国政府がそれぞれ支払っており、欧州議会の予算とは別になっている。その額は出身国の国会議員と同じとされており、例えば、英国出身者は5番目に高く年間87,358ユーロ(1372万円)だが、ブルガリア出身者は9,276ユーロ(146万円)だ。しかし、2009年から議会議員全員が同じ年収の約84,000ユーロ(1319万円)となる。旧共産圏の国出身者にとっては、これはたいへん魅力のある給与だ。
問題は、年353,121ユーロ(5544万円)の議員一人当たりの経費の使い方である。日本でも、中央、地方を問わず、旅費や調査費で不明朗な例があるが、欧州議会の場合、そのスケールははるかに大きい。年185,952ユーロ(2919万円)あるスタッフ関係費を使って、家族を名目だけ雇用した形にしてその給与を受け取っていたり、年47,352ユーロ(743万円)の事務所経費を濫用するなどの例がある