Politics
2008-05-26
公務員最高の6億円(Royal
Mail CEO’s Pay: £3M)
英国の郵政公社であるロイヤルメールの社長の2007年度の報酬が明らかになった。まず、基本給が633,000ポンド(1億2660万円)、ボーナスが381,000ポンド(7620万円)、それに長期目標達成ボーナスが199万ポンド(4億円)の合計300万ポンド(6億円)である。
ロイヤルメールは、2007年度に2億7900万ポンド(558億円)の赤字を出しているが、ロイヤルメールの監視機関であるPostcommが設定した目標を達成したために社長のアダム・クロージアーの年間報酬がこの額となった。英国の公務員最高の報酬である。
Postcommとロイヤルメールを管轄するビジネス省の目標設定の方法と報酬支払い基準の再検討が必要だ。
Politics
2008-05-18
世界の国の競争力(Global
competitiveness league table)
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が2008年5月15日に発表した世界の55か国の競争力評価で、イギリスは21位となった。昨年の20位から下がった。イギリスの経済パフォーマンスが低下していることがその主な原因である。
1位はアメリカである。アメリカは1994年から続けてその地位を守っている。この評価が始まった1989年には、日本が1位であった。ところが今や日本の地位は大きく下がり、イギリスに続く22位となっている。アメリカのサブプライム問題から発する金融逼迫でアメリカの地位も揺らぐ可能性がある。しかし、IMDによると、アメリカは日本と違って経済が開放的であり、弾力的で、しかも企業家精神が旺盛である。そのため、アメリカは「日本の悲劇」は避けられる可能性があると示唆している。一方、日本にとっては、競争力を高めるにはどういう方向に進むべきかも示唆していると言える。
Politics
2008-05-25
経験豊富なビジネスマンがロンドンの第一副市長となる(An
experienced businessman becomes London First Deputy Mayor)
新ロンドン市長ボリス・ジョンソンが4人の副市長の筆頭の第一副市長にビジネス経験の豊富なティム・パーカーを任命した。ジョンソンは、2008年5月1日に行われたロンドン市長選挙で現職の労働党ケン・リビングストンを破り、市長に当選した保守党下院議員である。パーカーは、2008年7月7日から副市長としての仕事をロンドン市のチーフエグゼクティブの役割とともにスタートする。また、9月にはロンドンの地下鉄やバスをはじめとした公共交通を管轄するロンドン交通の会長にも就任する。そのため、ロンドン市ではパーカーに権力が集中することとなる。
パーカーは、プライベート・エクイティ・ファンドの代表として、日本のJAF(日本自動車連盟)のようなAA(自動車協会)や靴の製造販売会社クラークス、さらには電気製品製造会社のケンウッドの社長を経験し、会社を立て直した人物である。サンデータイムズの「リッチリスト」によると、資産は英国で1049位の7500万ポンド(150億円)である。たいへんな金持ちであり、パーカーはロンドン市の役職に就くが、給料は受け取らず、その代わりに、名目だけ年に1ポンド(200円)を受取ることにした。その上、現在就いている数々の会社の非常勤取締役職なども、オーストラリアのメディア関係の無給の職を除き退くことになった。
労働組合関係者は、パーカーを敵視している。コスト削減のために人員削減を次から次に実施し、会社を立て直しては売却してきたため、アセット・ストリッパーとか「悪魔王子」などと呼ばれている。しかし、この経験が、ロンドン市でどのように発揮されるか見ものだ。ロンドン市の効率化とコスト削減が成功すれば、将来、保守党政権下で同じようなことが実施されるだろう。なお、パーカーはオックスフォード大学時代に、労働党クラブの会長を務めた人物で、かつては労働政権下で財務省に務めたことがある。
元ジャーナリストで、タレント的な活動をしてきたジョンソンにロンドン市の経営能力があると真剣に考えている人はほとんどいない。しかし、ジョンソンの父親も言ったように、ジョンソンは能力のある人を自分の回りに置く人物だ。今回のパーカーの任命は、それを裏付ける証拠だといえる。
Politics
2008-05-19
英国の郵政公社ロイヤルメールの改革案(Royal
Mail Reform plan)
英国のロイヤルメールは、日本で2007年まで存在した日本郵政公社と同じ形の会社だ。政府が100%の株式を持つ株式会社である。かつてロイヤルメールの経営陣が民間からの投資を導入しようとしたことがあったが、政府はそれを認めなかった。しかし、今や郵便サービスの監視機関であるPostcommが民間からの投資を提案する改革案を出した。Postcommは、ロイヤルメールの効率化が十分ではないと判断しており、それを成し遂げるために民間資本からの圧力が必要だと考えたからだ。
英国の郵便事業もインターネットやEメールの急激な増加の影響を受けており、手紙の量が今後減少する見込みだ。一方、英国の郵便事業の活性化を狙って、郵便事業の自由化が行われた。しかし、参入業者は付加価値税(VAT)を払わねばならないが、ロイヤルメールはそれが免除されているなど、いくつもの特典が未だに与えられている。この一つの理由は、全国どこにも一律の値段で郵便が届けられる仕組みを維持していくためだ。地方へ行けば都心と異なり、郵便一つあたりのコストが増える。ロイヤルメールはかつて地域ごとの値段を提案したことがあるが、それを政府は拒否した。しかし、Postcommは、それを勘定に入れても、ロイヤルメールは他の郵便業者と対等に競争し、その費用を上回る効率化が可能だと判断している。また、ロイヤルメールの足を引っ張っている年金資金の大幅な不足に早急に手を打つべきだと考えており、民間資本の導入がそれを促進すると見ている。
なお、ロイヤルメールは全国の郵便の60%を扱うが、98%を配達している。つまり、企業などは、安いロイヤルメール以外の郵便会社を使うが、これらの郵便会社がプロセスの最後の配達にはロイヤルメールを使っている。ロイヤルメールが全国に渡る細かな配達網を整備しているからである。
Politics
2008-05-23
ブラウン首相の足りない点(What's
lacking in Gordon Brown)
労働党の支持率は20%台にまで下がり、保守党との差は開く一方だ。2007年6月にトニー・ブレア首相の後を継いで、財務相から首相となったゴードン・ブラウンへの支持率は下がりっぱなしである。この背景には、まず1997年から政権についている労働党への飽きがある。また、アメリカのサブプライム問題から端を発した金融危機で英国の景気が悪化したことがある。しかも住宅金融ローンが借りにくい上、持ち家志向の強い英国の住宅価格が下がっているなど、政治環境が政府にとって悪化していることがある。しかし、ブラウン自身が招いている点もある。今回はこのブラウンの問題について分析してみたい。
昨年秋、ブラウンが当時の高い支持率を背景に総選挙を実施しようとしてその準備がスタートした。しかし、次点との得票差の少ない選挙区で保守党が予想外に強く、労働党が大幅に議席を失いかねないことに気づき、総選挙を見送った。その直後、保守党の国民に好意的に受けとめられた政策によく似た政策を発表し、物まねだ、と批判された。それ以来、ブラウンの人気はがた落ちである。2007年末から2008年初めにかけて、官僚の中で、ブラウン政権は短い、という噂が流れ、官僚の士気にも大きな影響をもたらした。ブラウンに代わる人物をという声もなくはないが、ブラウンに代わって保守党のデービッド・キャメロンに対抗できる人物は今の労働党にはいない。かつて、元厚生相のアラン・ミルバーンがいたが、ブラウンがミルバーンの芽をつぶした。
ブラウンが首相になる前に、ブラウンが首相となるのにふさわしい人物かどうかが大きな話題となった。誰もが認めるのは、ブラウンが非常に知的な人物であり、政界の重鎮であることである。しかし、ブラウンが何もかも支配せずにはおれない性格だ、とか、自分のお気に入りの少数の人物だけに頼り、他の人の意見を聞こうとしない、とか多くの批判的な声があった。
問題は、ブラウンが国のリーダーとして、首相になるまでの経験が極めて限られていることだと思われる。ブラウンは、学生時代にスコットランドのエディンバラ大学の名誉総長(Rector)であったことがある。学生の政治運動に深く関わっていた。その当時の、自分の取り巻きに相談して次の手を考える手法がスケールは異なるものの今まで継続してきている。ブレアは、1994年に労働党の党首となり、1997年に首相となるまで、政党という組織のリーダーとしての経験を積んだ。しかも労働党の憲法といえる綱領から「産業の国有化」という言葉を除くために、非常に大きな努力をした。そのために、組織を理解する経験があった。それが首相となってから、役に立った。一方、ブラウンには、そういう経験がない。エディンバラ大学を博士号を取って卒業してから学者、そしてジャーナリストになったが、実際に組織をトップとしてコントロールした経験がない。2007年6月にも労働党党首となるや否や首相となった。そのために、組織の運営を十分理解することなく、首相となったのである。ブレア政権下での10年余りの財相時代にも、財務省を「独断専行」的に運営し、自分が考えていることを官僚とコミュニケートして発展させていく、ということがあまりなかった。ある元官僚は、テレビのインタビューに答えて「ゴードンは面と向かって交渉できない人だ」と言っている。
ブラウンはごく小さな自分の仲間内で政治をしているという批判に答えて、首相になるや否やビッグテント政治を打ち出した。つまり、人材を派閥や政党、今までの経緯を超えて、重要な仕事に任命した。しかし、その成果は上がっていない。昨年秋の総選挙を巡る失敗で明らかになったように、ブラウンはきちんとした分析をまず行うことなしに、一挙に総選挙に走り出してしまった。自分の小さな仲間内に頼った結果である。ブレアなら、世論調査の専門家フィリップ・ゴールドに頼んで詳細な分析をした後決断していただろう。
その上、自分の能力におごりが出たことも事実である。優秀な人は自分の得意な分野で失敗するとよく言われるが、ブラウンの場合もそれがまさに当てはまる。財相最後の2007年の予算で、2008年4月からの税制の改革を決めた。課税率を従来の三段階の40%、22%、10%から40%と20%の二段階にしたことだ。22%から20%に下げたことで、年収1万8000ポンド(360万円)以上の人は、それまでよりも税額が下がるが、最低税率を10%から20%に上げたために、それ以下の年収の人には増税となった。子供のいる人や65歳以上の年金生活者には国からの手当てがあり、増税にはならないが、これらの枠に入らない貧しい人たちに負担が大きくなる構図となったのである。この問題が、2008年4月に噴出した。ブラウンの支持率が大幅に下がっている時に、輪をかけて大きな問題が発生したのである。そのため5月1日に行われた地方選挙では労働党は記録的な敗北を喫した。その後、税率の問題を緩和するために政府は個人の控除額を増額したが、時既に遅く、ブラウンは大きなダメージを受けた。
ブラウンは首相になるのを待ちかねて首相となった。ブラウンは自分はブレアよりも首相としてふさわしいと信じていた。確かに、首相となる前、ブラウンの方がブレアよりもはっきりとしたビジョンを持っていたといえるだろう。しかし、ブラウンが首相となったとたんに自分の欠点がさらされることになった。ブラウンは2008年になってから戦略アドバイザイザーを入れるなど、自分の欠点を補う努力をしている。ブラウンは真剣で勤勉な政治家である。しかし、ブラウンの例は、それだけでは優れた首相にはなれないことを示している。
Politics
2008-05-20
シェリー・ブレア(Cherie Blair)
前首相トニー・ブレア夫人のシェリー・ブレアが自分の半生記を出版した。シェリーは、日本の司法試験にあたる法試験にトップで合格した人物であり、主に人権問題を扱うトップの法廷弁護士である。将来は判事となると目されている優秀な人物であるが、この半生記には多くの批判が寄せられている。特に、現首相のゴードン・ブラウンとトニー・ブラウンとの関係を扱った部分がブラウンに批判的だと言うのである。
シェリーは、首相夫人として10年余りをダウニング街の首相官邸の中で過ごした。なお、首相官邸の中の首相のフラット(アパート)には台所があるが、それはきわめて小さい。そこで子供4人を含む家族のために調理した。一番下の子供のリオは2000年に生まれた。ブレア夫妻がエリザベス女王の招きでスコットランドのバルモラル宮殿に宿泊した時、リオを身ごもった。バルモラル宮殿の職員がシェリーの持ち物をすべてチェックするので、避妊用品を持っていかなかったためであるという。リオはそのためにブレアが首相在任中に生まれることとなる。
英国の首相夫人にははっきりとした公的な役割はないが、多くの公式行事に出席し、また、多くの手紙を受け取る。もらった手紙には返事を送る必要がある。シェリーは、首相の妻でありながらも自分のキャリアも継続した最初の人物であったが、自分の仕事のほかにも何役もをこなす必要があった。母親としての役割のほかに、シェリーは35のチャリティの世話人をしており、首相官邸では、毎週火曜日にチャリティの関係のレセプションを開いていた。また、首相夫人として年に8回程度、発展途上国などへ訪問した。無報酬であった。
1997年に首相官邸に入った時、それまで住んでいたロンドンのイズリントンにあった家を売った。売った時の金額は65万ポンド(1億3000万円)であったが、物件の価格の上昇で、それが2007年には時価215万ポンド(4億3000万円)まで上昇した。シェリーは、後にこれは失敗だったと言っているが、それがシェリーの頭にあったのだろう。2002年に長男の通うブリストル大学の近くに2つのフラット(アパート)を自分の友人のボーイフレンドを通して購入したが、そのボーイフレンドがイカサマ師であることがわかり大きな事件となった。俗にシェリーゲート事件と言われる。もともと貧しい家で育ったシェリーには常にお金の心配があったことが背景にある。
シェリーは、夫のブレアが1994年に労働党の党首になって以来、マスコミに批判され続けている。服装、言葉遣い、友人関係、また、講演でお金を取ったことなど、その批判の目はすべての分野にわたる。シェリーは、年に100回から120回の講演をするが、お金を取ったのはそのうち10回程度であるという。しかし、シェリーへの批判はやまない。今回の半生記もその一つだ。シェリーがブレアと共に首相官邸を2007年6月に転出した時、取材のマスコミに向かって「皆さんとお会いできなくなって寂しいと思いません」と言ったが、「女」は強くなければ生きていけないのだろう。
Politics
2008-05-19
英国の監視カメラ(CCTV
in Britain)
英国の監視カメラの数は、400万台以上と言われ、世界で最も監視カメラ(CCTV)の使われている国だ。2012年までにその数は800万台に達するという予測もあるほどである。ロンドンで生活していると、一日に300回CCTVに映像が捉えられるといわれる。
英国にCCTVがアメリカから入ってきたのは50年前だが、その当時は録画機能はなかった。しかし、1976年の犯罪捜査でCCTVの記録が証拠に使われて以来、犯罪捜査に急速に使われることとなった。アイルランド共和軍(IRA)がイングランド各地で爆弾攻撃を仕掛けながらもロンドン地下鉄に手を出さなかったのは、8000台あるCCTVのためだという話もある。2005年7月7日に起きたロンドン同時爆破事件でも犯人を特定するためにCCTVは大きな役割を果たした。CCTVがあると人々が安心するという効果がある一方、CCTVの犯罪を防止する役割には期待していたほどの結果は現れていない。しかし、今では犯罪の立証や捜査をはじめ、それ以外の多面的な目的に使われている。
その推進力は、人工知能などをはじめとした機能の向上だ。ロンドンのシティでは、IRAのテロリズム攻撃以来、地域内での自動車のナンバープレートを読む、鉄の輪と呼ばれるシステムを用いており、番号を読むや否や3秒以内にデータベースとの照合を終えることができる。IRAが犯行に使う自動車は盗難車であることから、盗難車を探せば手がかりにつながるという発想だ。今では北アイルランドの政治状況は安定化し、IRAの危険性は減ったが、毎日4件はこれで引っかかってくるという。
また、プールの中にCCTVを設置して、監視員の気づかない水難事故を防ぐようなシステムを作ったところもある。ただし、このシステムは高価だ。6万5千ポンド(1300万円)である。
イングランド北部のミドルスブラでは、CCTVに拡声器も設置し、CCTVで監視しているコントローラーがごみを落とす人を注意し、街の中心街をきれいに保つのに貢献している。この設置費用は4万ポンド(800万円)だ。CCTVで監視しながら、警察と連携して対応処置をとることは頻繁に行われている。
オランダでは、音声認識機能のついたCCTVが実用化されている。街でのけんかなどで人が声を張り上げるとそれを察知し、警察に通報する仕組みだ。この設置で、一週間のうち、人が実際にCCTVで監視するのは金曜日と土曜日の二日だけに減らしたという。
顔面認識や歩行認識などさまざまな技術が開発途上であるが、犯罪に関連した分野では、CCTVの映像は犯罪の証拠として使われる以外に、携帯電話、DNAなどをはじめとする他の手がかりと総合して使われている。CCTVの利用は確かに個人のプライバシーの侵害の問題に密接に関連しているが、CCTVは今後、多くの分野でますます利用されていくことになるだろう。
Politics
2008-05-13
保守党タレント候補がロンドン市長選に当選(New
London Mayor)
保守党下院議員で、テレビでも有名な著名人ボリス・ジョンソンが現職の労働党ロンドン市長ケン・リビングストンを破って新ロンドン市長に当選した。このロンドン市長は日本の東京都知事にあたる。選挙戦が始まった時には、ジョンソンがロンドン市長になるとは誰も真剣に考えていなかった。ジョンソン自身、ロンドン市長になるとは思っていなかったようだ。なれば、2012年にオリンピックが開かれるロンドンの市長として今年8月の北京オリンピックに行かなければならないと言われ、「その時にはトスカニー(イタリア)で休暇を取っている」と言ったぐらいである。リビングソンには批判も多かったが、多くの反対を受けた混雑税を導入し、成功させたように、市長としての手腕は卓越しており、リビングストンの三選は間違いないものと見られていた。
しかし、日本の宮崎県の東国原英夫知事や大阪の橋下徹知事の当選のように、イギリスでもテレビで人気を得た著名人が重要な役職に当選する時代となった。もちろん二期8年間市長を勤めてきたリビングストンの三選は長いという印象はあり、ロンドン市民の中に一種の飽きがあったのは事実である。それにリビングストンの所属する労働党の支持率が大幅に下がっていたことも結果に大きな影響を与えた。同時に行われた、イングランドなどの地方選挙でも労働党は大敗を喫している。しかしながら、イギリスの選挙風土も大きく変わってきたように思われる。特に20台、30台の世代が「ジョンソンでなくっちゃ」と言ってジョンソンに投票したことが大きな風を巻き起こした。オーストラリア人の選挙のプロが、選挙をうまく取り仕切ったこともある。
ジョンソンの問題は、誰もに好かれたがることだ、と指摘する声がある。冷徹な面のあったリビングストンと較べると、市政を大きく変えることには期待できないだろう。しかし、近年低調であった選挙に活気を与え、関心をもたらせたことはその大きな功績の一つといえるだろう。
Politics
2008-05-14
財務相の所得税修正(Darling’s
change in taxation)
労働党の国民からの支持率が非常に低下している。5月9日のサン紙の世論調査では、「もし今選挙があればどの党に投票するか」との問いに対して、49%が保守党と答え、わずか23%が政権政党の労働党を支持した。これは日本の福田自民党政権並みの支持率だが、労働党の支持率は、世論調査が始まって以来、最低と言われる。最近ブラウン首相率いる政府の支持率は低迷していたが、この労働党の特別に低い支持率の大きな原因は政府がこの4月6日から所得税の税率を変更し、最低の所得税率を10%から20%に上げたことだ。それまでの3段階の10%、22%、40%から、2段階の20%と40%に変更したのである。このために課税最低限度額を超える収入は、いきなり20%の税額となった。そのため年収が課税限度額を超え、1万8000ポンド(360万円)以下の人は、最大230ポンド(4万6千円)手取り額が減ることになった。この影響を受ける人は530万人といわれる。このため、国民が反発し、しかも労働党の下院議員の中に政府に公然と反旗をひるがえす者が出た。
この世論と労働党内の反乱を受けて、アリスター・ダーリン財相は5月13日下院で所得税の修正を発表した。予算年度内に所得税を変更することは極めて異例である。予想を大きく上回り、ダーリン財相は課税最低限度額を600ポンド上げるという特別措置を取った。この結果、600ポンドの20%つまり、120ポンドが払い戻されることになった。9月末に60ポンド、そしてそれ以降、月に10ポンドづつである。40%の税率がかかる年収約800万円以上の人の税金は調整され、手取り額が増えることにはならないが、それ以下の人はすべてこの修正の恩恵を被ることになった。
この修正にかかる費用は27億ポンド(5400億円)である。実際に所得税率の変更で手取りの減った人を救うためには、7億ポンド(1400億円)で済んだが、それ以外の中堅所得階層が燃料や食費の高騰で影響を受けていることを考慮し、また、労働党の支持率回復を狙って枠を広げた格好だ。政府労働党が国民の関心に柔軟に対処した例の一つであるが、ブラウン政権では支持率回復のために、今後このような柔軟な対応がかなり多くなると思われる。
Politics
2008-05-01
タイムズ紙の政党へのスタンス(The
Times’ Political preference)
恐らくタイムズ紙は、英国の新聞の中では、最も読み甲斐のある新聞だろう。同じ題材の記事でも、その情報量が豊富で、深い分析があることが多い。他の新聞が取り上げないことでも記事として載せることがある。時に我田引水的な記事を載せ、中身のないことをあるように書くことがあるが、一般に、タイムズを読んでいれば、社会で何が起きているか大体つかむことができる。スポーツ関係の記事でもタイムズ紙の分析のレベルは非常に高い。サッカー関係の記事でタイムズ紙を上回るのはタブロイド紙の日曜紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」ぐらいであろう。
英国では、高級紙とタブロイド紙の大きく分けて2つの分類がある。タブロイド紙はいわゆる大衆紙である。近年、タイムズ紙も新聞のサイズをタブロイド紙と同じサイズにしたが、タイムズ紙はタブロイド紙ではない。高級紙の日刊の販売部数では、テレグラフ、タイムズ、ガーディアンそしてインデペンデントと続く。テレグラフは、読者の多くが保守党支持者、ガーディアンは労働党、そしてインデペンデントは自由民主党支持者が多い。タイムズ紙は、その立場を時として変える。
タイムズ紙は最近では、あからさまに保守党支持になっている。タイムズ紙のコメンテーターの1人は元タイムズ紙の副編集長で、現職の保守党下院議員である。また、現在の副編集長の一人は保守党の候補者選に出馬したことがある。特に、デービッド・キャメロン率いる保守党が世論調査で非常に高い支持を受けていることがその原因ではないかと思われる。新聞も結局は商売であり、売れなければ話にならない。そのために、自紙の読者層にアピールしそうな立場に変わっていくのはやむを得ないだろう。
その流れを受けて、5月1日投票のロンドン市長選では、保守党のボリス・ジョンソンの支持の立場を明確にした。ボリスがロンドン市長になれば、その言動に大きな不安があるのにも拘わらずである。この点では、タイムズ紙はもう少し超党派の立場でもよかったのではないかと残念に思われる。
Politics
2008-04-19
ブラウン首相の今後の見通し(Brown’s
prospects)
ゴードン・ブラウン首相がアメリカ訪問から帰国した。アメリカでは、ブラウンの活躍が目立った。英国内ではブラウンを落ち目一方だと決め付ける向きがあるが、有権者のブラウンへの評価は改善される可能性がある。
まず、アメリカでのブラウンの行動を総括しよう。国連の安全保障理事会でアフリカのジンバブエを鋭く批判したことは、評価される。ジンバブエで3月に行われた大統領選挙などの選挙結果を未だに発表していないことを取り上げ、ムガベ大統領は選挙を盗むことはできない、と主張した。今まで10年間あまりにわたる、旧宗主国英国のジンバブエに対する柔軟外交を変更し、ブラウンの断固とした立場を国際政治の場で示したことは効果があった。もちろん、国連事務総長、アメリカ、フランスなどとの事前の根回しがあり、これらの国が声を併せるという形であったが、特に強い発言をしたのは英国であった。
また、ブッシュ大統領と会った以外に、アメリカの3人の有力大統領選挙候補者全員とワシントンの英国大使館で会談した。3人とも選挙遊説中の多忙の中、時間をわざわざ割いて、ワシントンに飛び、ブラウンに面会した。フランスのサルコジ大統領が訪米した際、わずか1人の大統領選挙候補者と会っただけであるのと好対照だ。ブラウンのアメリカへの影響力が伺われる。
それに、ブラウンは、アメリカの有力銀行の経営陣を集めて話をした。現在の世界的なクレジットクランチを乗り切るためには、世界的な協力が必要で、それぞれの銀行がいくらの損失を出したか正直に言う必要があると主張したのである。過去10年余りの間、世界で最も優れた財相と言われ、数年前にはIMFの事務総長への声が上がったブラウンならではの動きである。ブラウン以外のどの国の首相がアメリカの地でアメリカの有力銀行にこういうことを言えるだろうか。
これらの舞台設定は、ブラウンを支える新しい広報戦略チームが周到に準備したと思われる。付け加えて、今週号のアメリカの有力誌タイムが、ブラウンを取り上げている。ブラウンを高く評価した記事である。ブラウンには大きなビジョンがあり、「純粋に物事を考え、人のためになることをしようと努力をしており、しかも国際的である」と結論付けている。
一方、国内では、ブラウンの人気は労働党内外で下降している。労働党の中では、ブラウンの人気が下降しているため、5月1日に行われる地方選挙を心配する人が多い上、政府の二つの政策を巡って大きな批判が起きている。特に、政府の役職についていない一部の労働党下院議員や政務補佐官クラスの下院議員が政府とブラウンを批判している。問題になっている政策は、所得税の最低課税率の廃止とテロリストらの拘束期間の延長の問題である。所得税の問題では、年間1万8000ポンド(360万円)以下の低所得者の中に不利になる人がいる、また拘束期間の延長は人権上の問題があるというのである。これらの批判があるにせよ、ブラウンの政権に大きな影響が出ることは当面ないと思われる。前回総選挙は2005年に行われたため、5年の任期の下院の選挙は2010年の5月まで実施する必要はない。
ブラウンの支持率が下がっている有力な原因の一つは、現在の経済の状況である。恐らく2010年までに現在の経済状況は向上するだろう。景気後退に瀕していると言われながらも、それは避けられる可能性が高い。世界経済に大きな影響を与えるアメリカの連邦準備制度理事会バーナンキ議長は世界大恐慌の専門家であり、今までの数々の大胆な施策で見られるように対処のしかたを知っている。それに国際的な政府や中央銀行間の協力がある。英国政府は断固たる政策を取りつつあり、経済はバーナンキ議長の見方のように2008年後半から上向くのではないかと思われる。バーナンキ議長の政策や英国政府らの政策が後手後手に回っていると批判する向きがあるが、歴史を振り返っての批判はたやすい。バーナンキ議長、アメリカ政府や英国政府が取っている政策を現在の深刻な状況が出現する前に取る事が可能であったろうか。
1997年の総選挙で、労働党が保守党前政権に対して地すべり的大勝利を収めたが、保守党政権下での経済運営は比較的成功していた。しかし、有権者は、保守党の経済面での功績を無視した。現在の英国の有権者は、順調な経済を当たり前のこととして受け止めている。そのため、経済が一度苦境に陥ることが政権の手腕を見せるちょうどよい契機となる可能性がある。2010年までには国有化したノーザンロック銀行が成功し、政府がそれから利潤を得ることができる可能性もある。経済については、今後のブラウン政権の手腕次第でいくらでも状況は変わりうると思われる。
英国では、保守党のキャメロンが次期総選挙に勝ち、保守党政権になると見ているコメンテーターが多いが、それはあまりにも時期尚早であると思われる。ブラウンにはまだまだチャンスがある。ブラウンのアメリカ訪問をきっかけにブラウンの反攻が始まったと思われる。
Politics
2008-04-11
外国人は英国の選挙に投票できるか(Right
to Vote)
この5月1日には地方選挙が行われる。目玉は、ロンドン市長選だ。二期8年間勤めた現職の労働党ケン・リビングストンに保守党の下院議員ボリス・ジョンソンが挑む。世論調査ではジョンソン有利との結果が出ており、英国の賭け業者も軒並みジョンソン有利と見ている。なお、ジョンソンは下院議員の地位のままでロンドン市長選に立候補でき、もし、選挙に負けても下院議員の地位はそのままだ。
それでは誰が、これらの選挙に投票できるか。
これは、英国では複雑だ。英国の国政、地方さらに欧州レベルの選挙に投票できるのは、英国民はもちろんのこと、英連邦(コモンウェルス)の国民、それにアイルランドの国民も投票できる。これは、1918年の選挙法でその当時の英国に属する人が投票権を与えられたことによる。しかし、英連邦に所属する国は50近くあり、それらの国やアイルランドの国民が英国の選挙に投票できるのはおかしい。逆にアイルランド並びにいくつかの国で、英国民の投票を認めている。お互いの関係を強めるという効果はあるだろうが、制度としてはおかしい。
さらに英国以外のEUのメンバー国の国民も英国での地方と欧州の選挙に投票できる。しかしながら、それ以外の国の国民は、永住権を持ち、いくら長期間住んでも何らの投票権も与えられてはいない。せめて身近な地方選挙ぐらいには投票権を認めてもよいのではないかと思われる。
Politics
2008-03-28
経費ルールを悪用する欧州議会議員(MEP’s gravy train)
欧州連合(EU)の議会は、EU参加25カ国の議員785人で構成されている。最近、この議会議員の経費の悪用が大きな問題となった。年間、13.2億ユーロ(2972億円:1ユーロ=157円)の予算を持つ欧州議会の自己管理は非常に甘い。経費の悪用の問題はかねてから何度も取り上げられているが、その対応は極めて遅い。
議員の報酬は、各国政府がそれぞれ支払っており、欧州議会の予算とは別になっている。その額は出身国の国会議員と同じとされており、例えば、英国出身者は5番目に高く年間87,358ユーロ(1372万円)だが、ブルガリア出身者は9,276ユーロ(146万円)だ。しかし、2009年から議会議員全員が同じ年収の約84,000ユーロ(1319万円)となる。旧共産圏の国出身者にとっては、これはたいへん魅力のある給与だ。
問題は、年353,121ユーロ(5544万円)の議員一人当たりの経費の使い方である。日本でも、中央、地方を問わず、旅費や調査費で不明朗な例があるが、欧州議会の場合、そのスケールははるかに大きい。年185,952ユーロ(2919万円)あるスタッフ関係費を使って、家族を名目だけ雇用した形にしてその給与を受け取っていたり、年47,352ユーロ(743万円)の事務所経費を濫用するなどの例がある。しかし、その濫用の実態は明らかにされておらず、その内部調査報告書は秘密にされている。英国の下院でも同様の問題があり、現在その対応を検討中だが、いずれの場合も、さらなる規制には議員からの抵抗がある。自己規制には限界がある。特に25カ国の議員からなる欧州議会では、その意見をまとめるだけでも大変だ。独立した第三者によるきちんとした監査の制度を設けるべきだろう。
Politics
2008-03-27
予定通りに工事ができない鉄道基盤会社(Network Rail’s incompetence)
イングランドの鉄道基盤会社ネットワークレイルは、年初に工事の大幅な遅れを引き起こし、鉄道利用者に大きな迷惑をかけた。そのため、鉄道監督機関はネットワークレイルに1400万ポンド(28億円)の罰金を課した。ネットワークレイルの社長は、大幅な改善を約束したが、それは一向に果たされる気配がない。むしろ、このたび、工事に関連した遅れが発生した事実を隠そうとした事実が明らかになった。
この工事は英国のイースター休暇中(3月21日から24日)に終了するはずであった。しかし、イースター休暇明けの3月25日(火曜日)のロンドンリバプールストリート駅に向かう列車が運行できず、出勤する鉄道利用者は代替バスを利用せざるをえないなど大きな迷惑を被った。500本以上の列車がキャンセルされた。ネットワークレイルの社長がリバプールストリート駅に行き、乗客に謝罪したが、ネットワークレイルは、その時点では、信号の故障などが原因だと主張し、この遅れが工事に関連して起きたことを認めなかった。ところが、この路線の鉄道運行会社のナショナルエクスプレスが、イースター期間中に終えるはずだった工事が原因だと発表し、また、ネットワークレイルの報道担当者が事実を隠すよう指示を受けていたという事実が明らかになった。鉄道監督機関が調査することになったが、ネットワークレイルの無能力は改善しがたいものがある。
Blog
Politics
2008-03-26
板についてきたブラウン首相の答弁(PM’s
Question Time)
ゴードン・ブラウン首相は、首相としての答弁が板についてきた。2007年6月に首相に就任して以来、答弁中にどもったり、ぎこちない答弁が続いていたが、首相としての貫禄がついてきたといえる。3月26日の恒例の水曜日の首相のクエスチョンタイムで、保守党のデービッド・キャメロン党首はブラウン首相に英国の経済問題について質問した。保守党は世論調査をもとにして国民の関心のある経済問題に的を絞った。国民はノーザンロック銀行の国有化の問題を始め、経済の後退の可能性など経済の先行きを心配している。毎週のことだが、保守党はこの質問で得点稼ぎを狙った。しかし、今回は、財相を10年以上経験したブラウン首相が、キャメロンの上手をいった。
ブラウンが述べたように、英国の経済運営は、英国の歴史から見て、低インフレ、低公定歩合、それに低失業率であり、G7先進国の中でも最も優れているものの一つといえる。もちろん経済運営にパーフェクトを求めることは難しく、問題を掘り起こせばいくらでもある。特に銀行などの金融機関を監督する金融サービス機構(FSA)がノーザンロック銀行の監督に大きな落ち度があったことを認めたことから、管理監督体制に不備があるのではないかという指摘があった。ただし、FSAがきちんと管理監督しておればノーザンロック銀行の問題を防げたかどうかについては疑問がある。アメリカやドイツでも銀行を公的に救済する必要があったように、事態は予想をはるかに上回っていた。いくら詳細な制度を作っても、すべての事態をカバーできるものではありえない。むしろ、政府が機動的に対処するほうがはるかに効率的である。
自由民主党のニック・クレッグ党首が、金融流動性の減少で住宅ローンの金利が上がっており、住宅の差し押さえが増えていることに触れた。クレッグは政府は救済策を取るべきだと主張したが、ブラウンは1990年代と較べればその問題ははるかに小さいと指摘した。住宅差し押さえの大きな原因は、住宅購入に際して、数年間続く非常に低い利子の住宅ローンを借りたのはいいが、その期限が過ぎて利子が普通の水準に上がったことだ。そのため、支払いが滞る結果となった例が多い。借り替えようにも、他の住宅ローンの金利が上がっている上、金融流動性が低くなったため、自己資金がかなりないと住宅ローンそのものがなかなか借りられなくなっている。しかし、これは景気の循環の中でやむを得ないものであり、政府のできることは限られていると思われる。
Politics
2008-03-24
銀行国有化の正当性(Nationalisation: Good or Bad)
ブラウン労働党政権は、ノーザンロック銀行の国有化をなんとかして避けようとした。英国では、歴史的に労働党政権と「国有化」は重なるイメージがある。国有化は決して労働党のものだけではなく、サッチャー保守党政権でも国有化した例があるが、ブラウン政権が今回国有化を避けようとした事実は、現在の労働党がどれだけ昔の労働党から変わったかを物語っている。
ノーザンロック銀行の取り付け騒ぎを収め、英国の金融不安を抑えるために、すべての考えられる道を探ったが結局、国有化しかないという結果となった。この問題は、英国の政権運営や中央銀行だけの問題ではなく、世界的な銀行システムの問題である。アメリカでも、この危機を乗り越えるためにトップ銀行のシティグループを含む有力銀行3行がシンガポール、アブダビ、それに中国の政府系投資ファンドの支援を受けた。また、倒産しかけた銀行を中央銀行が支援した。政策の好き嫌いに拘わらず、政府や中央銀行は必要とされる手段を適切に取ることが必要である。国有化もその手段の一つである。
Politics
2008-03-23
英国の2008年度予算(Budget 2008)
英国政府の来年度の歳出予算は総額6180億ポンド(123兆6千億円:1ポンド=200円)。歳入予算は総額5750億ポンド(115兆円)である。歳出の最も大きなものは、社会保障費の1690億ポンド(33兆8千億円)であり、国民医療費が1110億ポンド(22兆2千億円)と続く。一方、歳入は所得税が1600億ポンド(32兆円)と最も大きく、付加価値税が840億ポンド(16兆8千億円)とその約半分である。なお、歳出と歳入の差額の430億ポンド(8兆6千億円)は借り入れ。この借り入れ額は、国民所得の2.9%となる。
この予算は巡っては、歳入の見通しが甘すぎるという批判が強い。アメリカのサブプライムローンの問題を端緒とした世界的な金融危機のために、英国政府は当初の2008年度の経済成長見通しを2~2.5%から1.75~2%に下げたが、それでは不十分だと言われている。現労働党首相ゴードン・ブラウンが財相時代に11回予算を組んだが、その度ごとに保守党や経済界から予算の見通しは甘すぎると批判されてきた。しかし、おおむね政府予想に従った経済成長を遂げてきた。これまでの経済成長は、英国歴史上、最長のものだ。しかし、今回は違うという声も強い。現在の金融危機がどの程度続くか、景気後退まで悪化するか、それらが政府の見通しが正しいかどうかの鍵を握る。
Politics
2008-03-21
中東和平への動き活発化(Middle East Peace Talk Intensifies)
3月18日、イスラエル建国60周年にドイツのアンゲラ・メルケルがイスラエルを訪れ、イスラエルの国会クネセトでドイツ語で演説をした。また、その前日にはドイツ政府の毎週行っている閣議をイスラエルの首都エルサレムで開いた。ドイツはかつてユダヤ人を虐殺したホロコーストを行った国であるが、両国はお互いの緊密な関係作りに力を注いでいる。これは、一つにはこの6月にベルリンで行われる中東会議の下準備という意味合いもある。
5月にはアメリカのブッシュ大統領が、イスラエルを訪れる予定だ。また、フランスのサルコジ大統領も今春訪れる予定である。その他英国をはじめ多くの政治家が訪れる予定だ。イスラエルとパレスチナ自治政府との間の平和を達成しようと多くの先進国のリーダーが努力している。国際会議がロンドンなどでも次々に開かれる予定だ。それは、この問題を放置しておくと、イスラム過激派の勢力がますます大きくなる可能性があると判断しているからだ。すでに過激派のハマスがパレスチナのガザ地方を支配している。
これらの背後には、UNなどの中東和平特使のトニー・ブレアの動きも見逃せない。ブレアは、2001年のアメリカの同時多発テロ直後から中東和平が重要だと努力を重ねてきていた。どこまでブレアの努力が実るか見ものである。
Politics
2008-03-18
下院議員の世襲(Prescott’s
son failed to be selected for his father’s constituency)
日本では、衆議院議員の世襲は多く、二世、三世などは数多い。福田首相は、福田赳夫元首相の息子である。その前の安部首相も二世である。これは、日本では世襲は、地盤を引き継ぐために非常に便利だと考えられていることから来ている。
イギリスでも世襲はかなりある。これは、親の人脈がものを言うからだ。しかし、前副首相ジョン・プレスコットの息子デービッドは、父親が引退した後の選挙区を引き継げなかった。この選挙区は労働党が強く、候補者になれば下院議員当選は約束されたようなものである。この地はデービッドが生まれ育ったところでもあった。
ジョン・プレスコットは、トニー・ブレアの下で、ブレアが労働党党首になってから副党首を務め、また、ブレアが1997年に首相となってからは、副首相に就任し、ブレアが退陣するまでそれらの役職を継続して務めた労働党の大物である。当時財相で、現首相のゴードン・ブラウンとブレアとの難しい関係を調整できたほとんど唯一の存在であった。しかし、そのプレスコットをして、自分の選挙区の労働党候補者選定委員会で自分の息子を候補者として選出させることができなかったのである。
これには、保守党の支持率が労働党を上まっており、労働党が保守党は特権階級の党だと攻撃している中、労働党で「特権」を意味するような動きは見せられなかったという背景がある。ジャーナリストとしてBBCなどにも勤めた経歴のあるデービッドは、候補者としてはかなり有望であった。しかし、37歳のデービッドの政治家への道がこれで閉ざされたわけではない。恐らく近い将来、他の選挙区の労働党候補者として選ばれるだろうと思われる。もちろん父親ジョン・プレスコットの人脈をフルに活用してだ。
Politics
2008-03-14
トニー・ブレアの次の課題:環境問題(Blair’s next mission: Environment)
2007年6月に英国首相を退陣したトニー・ブレアが、月に10日間働いているUN、EU、アメリカ、ロシアの四者の中東和平特使のほかに、地球環境問題のために働いていることが明らかになった。ブレアは、2004年に発足したClimate
Groupのコンサルタントとして日本、中国、インドを3月14日から訪問する。
ブレアの説得力と交渉力には定評があり、地球環境問題にその能力を生かすことは。大きなプラスになることは間違いない。この仕事は、中東和平特使と同様無給だが、ブレアの国際的な知名度と影響力をさらに増すこととなるだろう。
Politics
2008-03-05
北アイルランド第一首相退陣(Northern Ireland’s ‘Dr No’ to step down)
北アイルランドの第一首相のイアン・ペイスリーが、5月にその地位を退くことを発表した。民主統一党の党首の地位も退陣する。2008年4月に82歳となるペイスリーは、2007年5月に第一首相となった。北アイルランドは40年にわたる混乱の歴史を持ち、親英国側のユニオニストとアイルランドとの合併を求めるナショナリストの間で紛争が続いてきていた。
1998年のグッドフライデー合意で、北アイルランド議会と得票数で閣僚数を配分する政府が発足したが、ペイスリーは、アイルランド革命軍(IRA)
の政治組織シンフェインとの連立政権に反対し続けた「極右」であった。それでもペイスリーの民主統一党は、北アイルランド議会には参加し続け、シンフェインとの妥協に応じたアルスター統一党のデービッド・トリンブル率いる内閣の閣僚も出した。しかし、総選挙でペイスリー率いる民主統一党が第一党になり、シンフェインとの連立政権に応じず大きな政治空白が続いた。
ところが2007年、北アイルランド議会議員が全員その職を失うかもしれないという状況の中で、ペイスリーは、シンフェインとの連立政権に応じ、第一首相に就任した。
ペイスリーは、それまでIRAとシンフェインに真っ向から反対し、妥協は決してないと言い切り「Dr No」と言われてきていた。それだけに、2007年の妥協は、多くの人を驚かせた。しかし、この妥協は北アイルランドの妥協反対派の象徴的人物であるペイスリー抜きでは極めて難しかった。そのため、ペイスリーは歴史的な役割を果たしたといえる。これで北アイルランドの平和は完全に軌道に乗り、北アイルランドへの民間投資が大幅にアップした。
第一首相のペイスリーの副第一首相となったのは、シンフェインのマーティン・マクギネスである。マクギネスは、シンフェインのナンバー2で、かつてIRAの参謀総長だった人物である。両極端の2人がうまくいくはずがないと思った人も多かった。しかし、この2人は非常にうまがあい、2人一緒のテレビ映像や写真が発表されるたびに2人が笑っているので「くすくす笑い兄弟」と言われるほどとなった。シンフェインの党首ジェリー・アダムスが裏舞台に引き、人付き合いのよいマクギネスを北アイルランドの政権に出す「人事」がうまくいったが、それがペイスリーの民主統一党の古手の反感を買った点は否定できない。ペイスリーの息子がスキャンダルで内閣から辞職するなどの事件がペイスリーの退陣を招いたという観測もあるが、ペイスリーの年齢を考えると、歴史的な役割を果たしてちょうどいい時期に身を引く決断をしたと言える。
Politics
2008-02-29
ケニアでの携帯電話を使った送金(Money
transfer by mobile in Kenya)
ケニアの人口は、3200万人である。電話は政府関係機関を中心にわずか30万台しかない。しかし、携帯電話の普及力は強く、2000年に100万台あったものが、2007年までには650万台となったと見られている。インターネットを使っている人口は、1.3%と見られ、銀行口座を持っている人は人口の10%にも満たない。そのため、現金の送金に大きな支障があった。
このケニアで、その問題をカバーするための試みが成功している。それは、M-Pesaと呼ばれる。Pesaはスワヒリ語でお金を意味する。携帯電話に電子財布の機能があり、お金を持って携帯電話の通信時間販売業者の所へいくと、そこでクレジットを携帯電話にくれる。それを送金先に携帯電話上で送ると、現地の通信時間販売業者から現金を受け取れる仕組みだ。この送金は早くしかも確実で従来の方法よりはるかに安価である。その上、朝から晩まで店が開いている限り使えるサービスである。
この仕組みは、大手携帯電話会社のボーダフォンの地元関連会社サファリコムとイギリスの国際開発省がそれぞれ90万ポンドづつ出して2004年に始まった。この成功をもとに2007年2月、ボーダフォンとシティバンクが提携し、世界の1億9000万人の移動労働者の家族への送金、年間1350億ポンドの市場へ参入することを発表している。携帯電話の機能は、大きく発展している。
Politics
2008-02-27
英国下院議員の年俸と手当て(MPs
Salary and expenses)
(2007-2008年度)£1=¥210
英国の下院では、その手当などの諸経費を巡って大きな議論が起きている。そこで、下院議員の報酬と手当などをここで概観する。
下院議員の年収:£60,675
年金:報酬の10%が掛け金として徴収され、1年毎のサービスに最終年俸の40分の1が加算される。
旅費:英国内での国会関係の旅費には制限はない。ビジネスクラスの航空運賃、鉄道グリーン車の乗車が許される。それに年、3回までの欧州各国の議会や欧州議会関係の機関への2泊の宿泊つき訪問ができる。自家用車を利用した場合には、距離に応じて旅費が支給される。自転車の場合にも1.8キロごとに20ペンス(40円)が支給される。
下院議員の家族は年に15回までの往復旅費。議員のスタッフは、年に12回まで選挙区と下院の旅費が支給される。
議会活動経費手当:£21,339まで
スタッフ給与:£90,505まで
選挙区がロンドン中心部以外の議員への補助:住宅ローンや家賃などを含めて£23,083まで
選挙区がロンドン中心部の場合:£2,812まで
文房具:議会が支給
コンピュータ:議会が支給。一般に3台のコンピュータ、プリンターとスキャナーなど£3,000相当。
通信手当:2007年度から開始された。ウェブサイトや選挙区でのニュースレターなど、£10,000まで.
退職後議会活動清算手当:事務所後始末費用、スタッフ手当など。£37,281まで。
再出発手当:年齢や議員年数に従って年収の50%から100%まで支給される。
Football
2008-02-20
リバプール:インターミランを破る(Liverpool
beat Inter Milan)
意思の力が意外な力を生み出す。何がなんでも勝とうというスピリットが実を結んだ試合であった。2月19日夜の欧州チャンピオンズリーグのベスト16の試合で、イタリアの王者インターミランを2対0で破った。この試合は、リバプールのホーム試合であり、3月11日のインターミランのホームの試合の結果を合わせ、準々決勝にどちらのチームが進むか決まる。
インターミランは、昨年度、第2位に22点の史上最高の差をつけてイタリアのリーグ、セリエA優勝を果たした。今年度もイタリアのリーグで一度も破れておらず、2位のローマに11点の差をつけている。インターミランは、昨年9月にチャンピオンズリーグのグループ試合で敗れて以来、無敗を誇っているチームである。
一方のリバプールは、イングランドのプレミアリーグで5位にあえぎ、トップのアースナルには19点の差をつけられている。しかも、2月17日のイングランドのFAカップの試合で、イングランドの2部リーグのバーンズリーに敗れた。チャンピオンズリーグでは、過去3年間に2度決勝に進出し、1度優勝したとはいえ、今期のリバプールには勝とうという意欲があまり見られない試合が多かった。
ところが、この試合では、リバプールは最初からインターミランに圧力をかけた。インターミランのディフェンダーが30分で2度のイエローカードのために退場となり、インターミランの選手が10人となったことと、守りの要のコルドバが膝を傷め、75分でベンチに下がったことがインターミランにとって大きなマイナスとなったことは否めない。しかしながら、リバプールの攻勢が85分と90分の2つのゴールに結びついた。
実はリバプールの試合を見るたびに、選手のやる気を疑っていた。また、バーンズリーに敗れてから、リバプールの選手は自信を失っていた。監督のベニーテズは、リバプールの選手は、アースナル、マンチェスターユナイテッド、それにチェルシーほどよくないと言っている。それは確かだが、やる気を出せば、結果は大きく異なってくる。この勝利でリバプールのスピリットが大きく向上することを期待したい。
Politics
2008-02-19
年金の将来見積もり(Pension
calculation)
英国の年金監督機関が、年金に関連して余命の計算の問題を提起している。それによると、現在65歳の人は89歳まで生きると考慮すべきだという。英国に多い、最後の給与に基づく年金基金は、それを84歳から87歳の間で計算しているものが多いといわれる。中には82歳で計算しているものもあるようだ。実は、この計算で余命が1年増えれば、年金の総額の費用は3から4%増えると言われる。つまり、この計算は、年金の将来に関して極めて重要な意味を持つ。
英国の年金の監督機関の推定値の89歳は、英国の平均寿命の推定数値78.7歳(男女平均)より10年上回る数字となる。日本の平均寿命は82歳(男女平均)であり、それに10年足すと92歳となる。平成19年に厚生労働省が発表した第20回生命表によると65歳の平均余命は男性18.13年、女性23.19年で平均すると20.66年である。つまり、86歳弱まで生きる計算となっている。しかし、英国の年金監督機関が示唆した数字を当てはめると6年あまりの差が出る。はるかに高齢化の進んでいる日本の場合、年金の将来は現在考えられているよりもはるかに深刻なものだと思われる。
Politics
2008-02-18
英国ノーザンロック銀行の国有化(Nationalisation
of Northern Rock)
2月17日(日曜日)、英国財務大臣のアリスター・ダーリンが住宅融資中心の英国中堅銀行ノーザンロック銀行を国有化することを発表した。ノーザンロック銀行は、昨年夏のアメリカでのサブプライム問題をきっかけに、資産はあるが手持ちの資金繰りに困り、取り付け騒ぎに発展した銀行である。取り付け騒ぎが他の銀行に波及するのを恐れた政府はノーザンロックの預金者の預けていたお金を全額保証し、また、銀行の運営資金を貸し出した。
英国労働党政府は、有権者の中に労働党が産業を国有化するという悪いイメージがあるために、国有化をなるべく避けたいと考えていた。しかし、現在の悪い金融環境を考慮すると、国有化が最善の策と判断したのである。つまり、経験豊富な折り紙つきの人物をトップに据え銀行を運営し、景気が回復した時点でプレミアムを得て、この銀行を民間に売り払うという作戦である。
これに対して、保守党のデービッド・キャメロン党首は、「この国有化は、納税者にとって最悪であり、政府にとって最悪であり、国にとって最悪だ」と発言した。しかしながら、ノーザンロックの国有化は、ノーザンロックを英国で最も信用の高い銀行とした。つまり、お金を預けても決して損をしない銀行である。そのため他の銀行は、国有化されたためにノーザンロックが非常に優位な立場に立つのではないかと心配している。もし、数年先に政府が大きな利益を得てノーザンロックを売却できたとなると、保守党の経済政策能力に大きな疑問符がついてくる。キャメロンは、この機会を利用して政府をできるだけ攻撃し、世論を完全に保守党よりに変えたいという気持ちがあるが、行き過ぎは禁物だ。キャメロンの言葉は、将来、キャメロンに返ってくる可能性がある。
Politics
2008-02-15
英国下院議員への国からの経費支出(MPs’
expenses)
日本では、2006年に国会議員や国会職員が国会の国勢調査活動費を使って、銀座・赤坂の料亭や高級クラブで豪遊していたいたことが明らかになった。
こういう公費の流用や本来の目的を逸脱した使い方はどこの国でも発生しうる。先だって報告したように、英国の保守党議員が大学で勉強中の自分の息子2人を自分の秘書にし、それぞれに年額240万円を支払っていたことが明らかになった。2人ともはっきりとした仕事をした証拠がなく、下院はこの議員を10日の登院停止処分とした。この議員の妻も秘書となっていた。この議員は、次の総選挙に立候補しないと発表したが、自分は何ら法に違反したことはしていないと主張した。
確かにこの議員は法の違反をしていない。しかし、この制度を作った精神に違反している。そこに大きな問題がある。一方、下院議員の国から受けている経費についてさまざまな問題が次から次に出てきた。
特に大きな問題は、住宅手当だ。地方から出てきている下院議員にはロンドン地区に家を購入する、もしくは賃貸するのに出る補助がある。この金額は年に460万円だ。この制度を利用して、さまざまな議員が個人的な利益を得ていることがわかった。その一例が、保守党議員2人のカップルの話である。ふたりがロンドンで自分たちの購入したフラットを信託にし、その信託から自分たちがそのフラットを借り受けたことにして、その家賃を議会から受けていたのである。その金額の総額は、3500万円(16万5千ポンド)に達する。このフラットを信託にする際には議会のアドバイスがあったという。議会事務局側の対応もいい加減なものである。また、多くの議員は、自分の地方の家を借家にして家賃収入を得、その上にロンドン地区に家を議会の支出で持っていることもわかった。議員退任後、高騰したロンドンでの住居を売却しそれで利益を得るという目的だ。
その上、この住居の備品の購入に領収書が要らない、また、月に8万円までの食料費の請求にも領収書が要らない。このために議員が何をそのお金で購入しているかわからない。それでも、ある議員が金魚鉢を置く費用を請求して来たときには議会の経費部は断ったというが、非常にあいまいな制度ととなっている。
これらの問題に対してさらに規制を強めようという動きが出ている。その一つは、下院議員630人の少なくとも4分の1の議員は親族を秘書に雇っているという事実を反映して、それをすべて登録するようにしようという動きである。下院議長の動きが鈍いため、それに批判的な委員会が動き始めた。
いずれにしても英国の下院議員が「名誉ある議員」と呼ばれているような行動をすることが望まれている。なお、英国の下院議員の年収は、日本の国会議員の年収約12万8000ポンドの半分以下の6万1820ポンド(1300万円)である。
下院議員の秘書雇用
下院議員が自分の秘書を雇う形になっているが、秘書は、下院のルールに従って雇用され、下院が秘書に直接給与を払う仕組み。秘書は、基本的に週37.5時間勤務し、その年給与額は£13,082から£38,623の間となっている。しかし、下院議員の裁量で、給与の15%までのボーナスを与えられる。下院議員に想定されている秘書の数は、3人のフルタイムと1人のパートタイムであるが、秘書給与総額は決まっており、£96,630から£102,650の間。この総額の差は、その秘書が議員の地元かロンドンで勤務するかによる。
Politics
2008-01-31
下院議員が公費で親族を雇用(MP
paying his relatives from taxpayer’s money)
英国の議会には、議会経費という公費で親族を雇っている議員がかなりいる。例えば、ブレア政権で外務大臣だったマーガレット・ベケットの夫は、ベケットの事務所を管轄している。夫が妻を、または妻が夫を自分の秘書などとして、公費から給料を出して雇用することはかなり一般的だ。夫婦なのでお互いに信頼がおける、不規則な仕事なので同じ職場のほうがお互いに融通がききやすいなどの理由が挙げられる。もちろん選挙区が遠い議員にとっては、妻や夫と長期間別れて生活するよりもなるべく一緒にいるほうがよい、という理由もある。議員が自分の子供や他の親族を雇う、ということもある。
今回、保守党の下院議員が大学で正規の教育を受けている息子を名義上秘書にして、公費から年に1万3000ポンド(270万円)を支出していたことがわかった。その上、ボーナスも支払っていた。調査の結果、実際にその支払いに見合う仕事をしていなかったとして、その支出は公費の濫用だと判断された。そこでこの議員は、10日間の登院停止処分と1万3000ポンドの返済を命じられたのである。この議員は、保守党議員の資格を停止された。これらの動きを受け、この議員は次回の総選挙には立候補しないことを明らかにした。
議会には、配偶者の雇用は認めても、子供や他の親族の雇用を禁止しようという動きがある。しかし、この問題に見られるように制度を悪用する人は多くはないが、常に存在する。本来は、こういう仕組みを維持しても、雇用関係などその内容が公に発表され、誰でも吟味できる体制を作るほうが望ましい。そしてその実施に疑問があれば、誰でも苦情を申し立てることができる制度を確立すべきである。もちろん苦情を申し立てる機関が信頼に足る機関である必要があるが、制度の透明化が最も必要なことである。
Politics
2008-01-28
自由民主党の党首ニック・クレッグ(Liberals
leader Nick Clegg)
ニック・クレッグが下院での首相のクエスチョン・タイムに立つと、前任者のメンジー・キャンベルとは全く異なる雰囲気がある。クレッグは2007年12月に英国第三党の自由民主党の党首に選ばれた。メンジーは67歳だったが、クレッグは、40歳だ。保守党のデービッド・キャメロン党首より3ヶ月若い。メンジーとの年齢の違いもあるのだろう、その席からの立ち方、話し方など若々しい。しかもメンジーが下院のグリーンの自民党席の端に座っていたのに対して、端から3番目に党の幹部に挟まれるかっこうで座っている。明らかに、党の幹部がクレッグを支えているイメージをかもし出す広報戦略の一つである。
しかしながら、質問の中身は、ゴードン・ブラウン首相とキャメロン保守党党首の舌戦の影に隠れて目立っていない。また、その政策は理解されやすいとはいえない。例えば、1月20日のBBCアンドリュー・マーのインタビューで、英国の健康保健サービスNHSは現代の世界で最も不公平な医療サービスの一つだと発言したが、なぜそうなのか十分説明しなかった。NHSは使用者にはお金を課さない国の医療制度である。クレッグは、各地方ごとのNHSが自治能力を高め、望めばNHSのための地方所得税を課すことができるようにするべきだとも主張したのである。しかし、そういう地方税が設けられれば、NHS地方税を課す地域とそうでない地方との間に差ができ、不公平になるのではないか、との質問には直接答えなかった。
クレッグは、2004年に発表されたが、党のリーダーが党の政策として認めなかった政策集「オレンジブック」は正しいと述べ、医療にしても公教育にしても民間の役割を大幅に増やしていく方向を打ち出した。クレッグにとって、今はまだ、政策を煮詰めている段階と言えるであろうが、全体的な印象として、クレッグに確固とした英国の将来像や信念があるかどうかやや疑問が残る。
クレッグの母親はオランダ人で、子供の時、第二次世界大戦中にインドネシアで日本軍に収容所に入れられた経験がある。クレッグは、その母親との会話が自分の政治に関する考え方に最も大きな影響を与えたと言う。母親は特殊教育の教師であったそうだが、クレッグ自身の経験や考え方ではない点に不満が残る。クレッグが、今後どのようなリーダーシップ振りを発揮するか注目していきたい。
Politics
2008-01-27
イギリスのイメージ(Image
of Britain)
大手広告会社のWWPによると、イギリスのイメージは「年齢を重ねた賢人」だと言う。イギリスのブランドイメージは強く、頭がいいというイメージがあるが、若々しさに欠ける点があるという。また、英語圏ではイギリスのイメージは強いが、アジアやラテンアメリカではやや弱いとのことだ。
デービッド・ミリバンド外相は、ロンドンがトップクラスの世界の資本の都市となったことを受けて、世界のさまざまな活動の拠点となるべきだと提唱している。
日本のイメージは、そのテクノロジーのおかげで、まだ頭がいいというイメージはあると思われる。しかし、東京が世界の活動の拠点となる日はあるのだろうか。
Politics
2008-01-20
鉄道基盤会社の遅すぎる改善策(Network
Rail’s new year resolution)
1月7日に、昨年末から新年にわたって、鉄道基盤会社ネットワークレイルの工事が4日間遅れ、鉄道交通に大きな混乱をもたらしたことを述べた。ネットワークレイルや関連当局などが大きな非難を受けた。鉄道監視機関はその監視体制の甘さを非難され、ネットワークレイル幹部はボーナスがなくなる可能性がある。それに仕事が大幅に減少する見込みの工事下請け会社のすべての関係者が共同して対応策を練ったのだろう。今後の改善策が出てきた。
それは以下のようなものである。
工事のために週末など一定期間、鉄道を止めていたが、それをやめ、すべての工事を午後10時から午前6時の間に行うようにする。
工事の施工期限を守る。
橋やポイントの部品を現場で組み立てるのではなく、できるだけ多くのものを工場であらかじめ組み立てておき、それを現場で設置するようにする。
クリスマスとその翌日のボクシングデーはすべての鉄道が止まっていたが、それを運行する。
どうしてこれらの案が今まで出てこなかったのであろうか。いずれも真剣に顧客のことを考えれば出てくるはずのことである。鉄道監視機関からはじまる馴れ合いの中で、これらが危機に見舞われるまで具体化してこなかった。現場のエンジニアが今までのやり方を変えることに反対していた面もあるだろう。週末に働けば手当てが多い、夜は働きたくないなどの理由もあったと思われる。それらの中で、幹部は今までのやり方を変える必要を感じていなかった。
一方、ロンドンの地下鉄でもかつて毎日のように夜の工事が遅れ、それが朝の地下鉄の運行に大きな支障をきたしていた。しかし、アメリカ人の社長の下、夜の仕事の遅れは今ではあまり聞かなくなった。トップからのリーダーシップが重要な一つの例である。
ネットワークレイルは改善策を出したが、問題は、これをきちんと実施できるかどうかである。幹部に改善策を成功させる決意があるのだろうか。現場に仕事をきちんとできるマネジャーが今までに養成されているのだろうか。労働組合は積極的に協力するのだろうか。多くの疑問がある。ネットワークレイルは、新年の決意を明らかにしたが、それを今後継続していくには、並々ならぬ決意が必要である。英国の鉄道は大きな改善にはまだまだ程遠い。
Politics
2008-01-19
英国PFI事業の甘い管理(PFI’s
loose management)
英国の会計検査院が発表した2006年度のPFI事業の調査結果によると、仕事を請け負った業者が法外な料金を課している例があることがわかった。
英国には病院、学校、刑務所その他の公共建築物など約500のPFI事業があり、その合計金額は440億ポンド(9兆2400億円、£1=¥210)にものぼっている。PFI
事業は、公的な事業を民間企業がその建設から始まりその運営まで行うもので、政府が初期投資を抑えるために推進している。通常25年から30年間の契約期間となる。
すでに実施されたPFI 事業の中には事業開始以来10年以上たったものもある。時間が経てば、当初計画されたものから変更するべきものも当然出てくるが、その仕事の発注に競争入札をせず、業者に委託したものが10万ポンド(2100万円)以上の仕事の3分の2あったという。その結果、業者が法外な料金を課している例があった。例えば鍵を新しいものと取り替えるのに486ポンド(10万2千円)支払っていた。会計検査院によると、競争入札をすれば、費用は3割程度まで安くなるという。
この報告を受けて、PFI事業の管理には、事業を厳しく監視できる人が必要で、専門の事業マネージャーを雇うべきだと下院の公会計委員会の委員長が言っている。何かというと新しい人を雇う、新しい組織を作る発想が出てくるのが英国の問題である。もっと常識を生かしたアプローチが必要ではないか。
ブラウン首相、首相退任後の年金辞退(Brown
gives up pension)
ゴードン・ブラウン首相が自分の首相退任後の特別年金を辞退することにした。これは、首相など国のトップの地位に就いていた政治家が退任後、それなりの生活ができるようにとの配慮から設けられたものである。その金額は現状では年に6万4000ポンド(1,300万円)である。
現在、年6万ポンド(1,200万円)の下院議員の給与のアップ率が大きな問題になっており、ブラウン首相はそのアップ率をインフレ目標率の2%までに抑えようとしている。そのために、自分も犠牲を払っているという姿勢を見せたかったのであろう。首相の年俸は現在、18万7,000ポンド(3,900万円)である。
今回の給料のアップ率を巡っては、保守党のデービッド・キャメロン党首が、給料が半分でもいい、という発言をして、保守党金議員から顰蹙をかった。しかし、保守党と自由民主党の両党首もブラウンの提唱する1.9%アップを支持したことから下院議員の給与アップは1.9%で落ち着く見通しだ。
ブレア首相時代に、閣僚の給料の一部を返上したことがあった。しかし、独立機関である上級職給料検討委員会から、それは議会の賃金体系をゆがめるので全額受け取るようにとの勧告を受け、全額を受け取るようにしたいきさつがある。
もちろん政治家の給料についても、いくらが適正かという判断をする必要がある。政府が100%株を所有する郵便会社ローヤルメイルの社長はボーナスも含めて昨年度100万ポンド(2億1000万円)受け取った。それからすればブラウンの受け取る金額は必ずしも多いとはいえない。ブラウンが首相退任後どの程度稼げるかは今のところ不明だが、今回の首相年金辞退には少し無理があるように思える。
政治資金の透明性(Transparency
in political funding)
労働年金大臣のピーター・ヘインの政治資金の問題が英国の政界を揺るがしている。ヘインはウェールズ大臣も兼ねている、やり手の政治家である。昨年、労働党の副党首選挙が行われ、ヘインは6人の立候補者のうち5位であった。その際、ヘインが自分の選挙運動をまかなうために得た献金のうち、10万3千ポンド(2200万円)の届出が法の規定に反して4ヶ月遅れたというものである。ヘインはそれまでに8万2千ポンド(1750万円)を届け出てていた。なお、ここでの法は、ブレア前労働党政権時に、2000年の選挙法改正で設けられたものだ。
問題は、10万3千ポンドが他の候補者が使った金額を上回っており、金額が大きいことである。さらにこの献金が、ヘインの団体(シンクタンクだとヘインは主張するが)を通じてなされていたことである。
ヘインはこの団体を通じて誰が献金したかを明らかにした。ヘインは、この問題を単に管理運営上のミスであると言っているが、それだけではないように思われる。私の印象では、ヘインは自分が6人中5位であったのに、他の候補者よりはるかに多くのお金を使っていたので、それを恥ずかしく思ってしばらく伏せておきたかったのではないかと思われる。いずれにしてもヘインが法の規定に従わなかったことは事実である。そのため、政治献金を扱う選挙委員会に加えて、行動基準に関する議会コミッショナーがこの件を調べることになった。
労働党にとっては、昨年末に大きな問題となった、第三者を通じた労働党への献金問題に続いての痛手である。しかし、この問題に対する他の政党の対応は、あまりはっきりしたものではない。それぞれの政党も献金の問題をめぐっては、それぞれの問題があるからだ。保守党も献金の届出が遅れる常連であり、個人の名前を隠してさまざまな方法で献金するという試みが何度も明らかになっている。影の財相ジョージ・オズボーンの事務所に対する献金の届け出にも不備があることが明らかになった。自由民主党も、完全にきれいなわけではない。最近も党の上院(貴族院)への推薦を受け上院議員になった人物の関連する会社が、その利益の半分を自由民主党に献金していたことがわかり、党への献金で地位を買ったのではないかという疑いがかかった。また、チャールズ・ケネディが自由民主党の党首であった時に、マイケル・ブラウンなる人物から240万ポンド(5億2千万円)の献金を受け取ったが、この人物は、詐欺などでスペインで逮捕されている。
政治に関するお金は、透明化されるというのが基本だが、英国でも、法の規定はあっても、法の抜け穴を探る動きは後を絶たない。一方、複雑な法の規定は問題を複雑にするだけだ。英国でも次から次に新しい法や規定が作られ、それをすべて守ることはそう簡単なことではなくなってきている。簡単明瞭な法を作ることも英国の政治にとっては急務であろう。
Education
2008-01-14
英国のトップ私立学校の学費(Top
Public Schools fees)
英国ではパブリックスクールは私立学校である。政府からの財政援助は受けていない(ちなみに政府のお金で運営されている学校は、ステイトスクールと呼ばれる)。これらの学校は慈善団体の資格を得ており、学費には税金はかからない。しかし、奨学制度を大幅に充実し、貧しい家庭の子弟をもっと受け入れなければその慈善団体の資格を取り消すかもしれないと、政府から圧力を受けている。
トップのパブリックスクールの学費は高い。そのいくつかを紹介する。
寄宿生年額(タイムズ紙より。1ポンド215円換算)
イートン £26,490(570万円)
ハロー £26,445
ラグビー £24,915
通学の生徒は一般に寄宿生の4分の3ぐらいの学費となるようだ。一般に、有名なパブリックスクールの寄宿生は、年額2万5千ポンド(540万円)程度払っている。
Politics
2008-01-13
英国、原子力発電への依存を決定(Britain’s
nuclear power policy)
英国政府は、増え続けるエネルギー需要と地球温暖化の問題を検討した結果、原子力発電所を建設することにした。これは、ゴードン・ブラウン首相の、長期的な視野から難しい問題に取り組む考え方の一環である。
現在、英国の電力の約5分の1は原子力発電でまかなわれている。しかし、現在稼動中の10の原子力発電所のうち、2035年に閉鎖される予定の一つを除き、残りは、2023年までに閉鎖される予定だ。また、現在稼動中の石炭火力発電所も閉鎖されていく。原子力発電はCO2の生産率が他の石油や石炭発電所などに較べて格段に低い。しかし、廃棄物の処理が大きな課題であり、もし原子力発電所で事故が起きれば、環境に与える影響が極端に大きい可能性があるために、環境保護団体などを中心に原子力発電所の建設には強い反対運動があった。そのため従来政府はこの問題の決定に慎重であった。しかし、主に以下の理由から英国政府は今回の決定に踏み切った。
CO2の面からは石炭や石油よりガスのほうが好ましい。しかし、英国の北海ガスはほとんどなくなりかけており、海外に依存する必要があるが、ロシアなどからの輸入には不安定な要因がある。また、化石燃料からのCO2を捕捉し、貯蔵する技術も開発されているが、未だ実用的な技術ではない。核燃料は主にオーストラリアから輸入しており、安定供給を期待できる。
政府は、再生可能エネルギーと言われる自然を使ったエネルギー発電の方法にも力を入れている。水風力発電や太陽光、潮力発電などで、現在約5%の電力を生み出している。2020年までに20%の電力はこれから生産する予定だ。しかし、この形の発電方法には安定性に問題があり、また一基あたりの電力生産量に限りがある。
英国は京都会議で2012年までにCO2の排出量を12.5%減らす目標を持っている。さらに2020年までに26から32%の削減目標があり、これを2050年までに60%までとする予定だ。野心的な目標であり、それを達成するには、省エネルギーの手を打つだけではなく、それ以外の積極的な手を打っていかねばならない。
第三世代の原子力発電所は、従来のものと較べて廃棄物の量が約1割程度となっており、この点で利点がある。安全性も向上している。何らかの手を打っていかねばならない現在、再生可能なエネルギーへの依存を増やしながらも原子力発電所の建設もあわせて行うのはやむをえない政策と言えるだろう。
Politics
2008-01-13
見かけ重視の英国政治(Spin Doctors’ British Politics)
英国の主要三政党には、それぞれスピンドクターがいる。その仕事は、それぞれの党のイメージを政策面、さらに広報面から向上させるために党首にアドバイスすることだ。保守党のキャメロン党首にはスティーブ・ヒルトンが党首就任前からついている。2008年1月に入ってから、労働党のゴードン・ブラウン首相がスティーブン・カーターを雇い、昨年12月に党首に就任したばかりの自由民主党のニック・クレッグもジョン・シャーキーを雇った。いずれも評判の高いPRマンで、それぞれの戦略とイメージ戦略を担当する。これらのスピンドクターの手腕がそれぞれの党首の命運、そして党の命運を決すると考えられている。
保守党のヒルトンの給料は、2006年に年額27万6千ポンドであったが、この額は、政府から党首のキャメロンが受け取る対立政党のリーダーとしての年収の2倍以上であった。ヒルトンの能力がキャメロンにいかに高く評価されているかがわかる。ヒルトンは、ハンガリー移民の子どもとして生まれた。オックスフォード大学でPPE(哲学、政治学、経済学)を学んだ後、保守党の研究部門に入った。1992年の総選挙に際し、22才の若さで、保守党の選挙キャンペーンを請け負っていた大手広告会社のサーチー&サーチーとの連携担当となった。選挙後、その能力を見込まれ、サーチー&サーチーに引き抜かれた。1997年の総選挙で保守党の選挙キャンペーンを担当した後、企業の社会責任を促進する、自分の会社グッドビジネスを設立した。その顧客には、コカコーラ、ナイキ、石油会社BP、電話会社BT、スカイTVやスーパーマーケットのアズダなどがあった。キャメロンの保守党党首就任に際して、党の戦略担当の仕事に就く。キャメロンのシャツまでアドバイスしていると言われる。キャメロンより4歳年下だが、保守党の戦略会議では、キャメロンを批判できる数少ないメンバーと言われる。
ブラウン首相が、首相のアドバイザーとして雇ったのは、 スティーブン・カ―ターである。英国のコミュニケーション産業の監視機関のオフコムの最初の最高経営責任者をした後、FTSE100社の3分の1の仕事を担当していると言われる大手広告会社のブランズウィックグループの最高経営責任者であった。閣議に出席し、ブラウン首相にあらゆる面でアドバイスをすることになる。スペシャルアドバイザーとしては最高の13万7000ポンドの給与を与えられているが、それまでの50万ポンド(1億1千万円)といわれる年俸からは大幅な減収だ。その上、今回の職を受けるに当たっていくつもの非常勤取締役などを退任したために金銭的な面では大きなマイナスだ。しかし、1962年生まれのカーターにとっては、この仕事には大きな魅力があるのだろう。ただし、ブレア政権下で官僚に指示を出せたアラスター・キャンベルとジョナサン・ポールと異なり、カーターにはその能力は与えられていない。
この任命は、ブラウンが主に財務省時代からの有能な若手の小グループにとり囲まれているだけでは不十分だという判断のせいだと思われる。2007年10月の総選挙を実施する、しないを巡る失敗で、ブラウンは大きく傷ついた。そういう失敗を繰り返さず、しかも失われたブラウンの権威を取り戻すためにカーターは雇われたと思われる。
自由民主党のニック・クレッグは、かつてサーチー&サーチーの英国の共同最高経営責任者で、サッチャーの1987年の総選挙のキャンペーンも担当したジョン・シャーキーを戦略担当に任命した。
いずれも広告のプロであり、現在の英国政治がスピン抜きでは成り立っていきにくいことを物語っている。前首相ブレアが労働党の党首となってからピーター・マンデルソンがブレアのスピン・ドクターとなった。その後、アラスター・キャンベルがブレアのメインのスピン・ドクターとなり、この2人はマスコミから何かにつけて批判されたが、いずれの政党も同じことをしている。
Politics
2008-01-11
ブレア前首相が米銀行の顧問となる(Blair
an adviser to a US bank)
2007年6月に英国首相を退き、同時に下院議員も辞職したトニー・ブレア前首相がアメリカの大手銀行JPモルガンチェースの上級顧問に就任した。その報酬は、年に50万ドル以上と言われるが、200万ポンド稼ぐかもしれないという見方もある。ブレア前首相は、首相退任時に、国連、EU、アメリカそれにロシアの4者を代表する中東和平特使となっている。この職は無給である。
このニュースが発表されると共にブレア前首相は、中東和平特使の仕事を月に10日はすると約束した。ブレアは米銀顧問職以外にも同様の職を他の業界でも行う予定だ。
このニュースは英国では複雑な気持ちで見られている。ブレアは世界的に著名であり、しかも各国首脳をよく知っている。特に世界経済の方向がアジアに向き、しかも中東をはじめ人間関係が重要なところではブレアの首相在任10年間で築いた人脈がものをいう。2012年のロンドンオリンピック招致や北アイルランド平和交渉で見せたブレアの交渉能力には並外れたものがあり、その能力を活用しないほうがおかしいと言える。
なお、英国には、女王任命の公務員と政府の大臣職に就いていた者が、外部の機関の役職に就任するには、ビジネスアポイントメントの諮問委員会に届け出る義務がある。ブレアの場合も、この届出を行い、首相退任後1年間は英国政府に対してロビー活動をしないようにとの勧告を受けた。
Politics
2008-01-07
特別リポート(Special Report)
運営管理のできない英国の鉄道会社(Network
Rail’s incompetence)
年末年始に多くの鉄道利用者が大きな不便を被った。路線改善の工事が「予想外に」4日間遅れ、そのためにロンドンとスコットランドを結ぶイングランド西岸の主要幹線が4日間利用できなかったためである。この事件は、英国の典型的な問題を浮き彫りにしているのでここで少し詳細に取り上げておきたい。
まず、英国の鉄道の仕組みから始めよう。英国政府が100%の株を持ち、その負債に責任を負う会社ネットワークレイルが、鉄道の線路とケーブルなどの鉄道基盤を持っている。列車を走らせるのは民間会社のフランチャイズとなっており、路線によって会社が異なる。ネットワークレイルとフランチャイズの会社は鉄道監督機関によって監視されている。
事の次第はこうだ。12月12日にネットワークレイルが、予定されていたイングランド中央部にあるダービーでの工事の終了予定日を一日延期して12月31日とする申請を出した。この工事は民間会社が請け負っているが、本来そのような申請は18ヶ月前にする必要がある。それで影響を受けるバージン鉄道がそれに異議を申し出たが、12月17日に監督機関はそれをやむをえないとして認めた。バージンは既に当日の切符を発売しており、その決定に抗議して新聞広告を出し、また当日バージン鉄道の該当区間を利用しないように訴えた。英国の国民には、鉄道が利用できなくてもまあ一日ぐらいはいいか、と認める雰囲気がある。鉄道が利用できない区間バーミンガムとノーザンプトンの間には代替のバスが運行された。
なお、英国では12月25日のクリスマスとその翌日のボクシングデーが日本の正月にあたるような国民の休日である。1月1日が国民の休日であるため、その期間連続して休暇を取る人も多い。そのため1月2日に仕事に復帰する人がかなりいる。
しかし、その工事は、5キロの長さのものだが、12月31日に終わらなかった。工事が終わったのは、工事の遅れが社会問題となった後の1月4日の早朝であった。この間、代替バスの運転手が道をはっきり理解しておらず、何度もUターンをしたり、途中で方向を通りすがりの人に聞いたり、間道を猛スピードで走り、乗客が不安を覚えるなどの「事件」も発生した。また、ロンドンのリバプールストリート駅の工事が24時間遅れ、ロンドンへの通勤客に大きな影響がでるなどの「事件」も発生した。関係者によると、ダービーでの工事が大幅に遅れたためにリバプールストリート駅の工事に携わる予定の電気技師をダービーへ送り、そのためにリバプールストリート駅の工事完了が遅れたという。
さて、工事の4日間の遅れで、25万人が影響を受け、その間にバージン鉄道が受けた被害額は、1000万ポンド(24億円)にのぼるかもしれないという。それはネットワークレイルが弁償するが、その上、鉄道監督機関から数千万ポンドの罰金が課される見通しだ。それでもネットワークレイルの社長は、1月4日、その工事のマネジメントを請け負った会社ベクテルを批判するのを避け、過去5年間この会社はいい仕事をしていると述べた。そして、この工事の遅れの原因は、路線の改善に必要な架空電線の仕事ができる電気技師の人数を確保できなかったことにあり、この仕事は今後ネットワークレイルの社内でするようにしていきたいと述べたのである。また、この工事の遅れの原因を解明するために関係工事会社の代表を集めた会議を1月7日からの週に開催すると述べた。
この発言には幾つか問題がある。それを順に述べていこう。
1. まず、ネットワークレイルに巨額の費用の負担が発生するが、それを重要視していない。それは国が100%の株式を持ち、ネットワークレイルの負債も保証しているため、親方日の丸的な考え方になっている証拠である。実際に鉄道監督機関が罰金を課しても結局は政府がそれを払う形になるからだ。
2. ネットワークレイルと工事会社との契約の内容は明らかになっていないが、契約に工事の遅れに対する厳重な罰金は入っていないようだ。ネットワークレイルと工事会社との関係がなあなあになっている。乗客を重視しない態度がここに現れている。この態度が英国の鉄道業界には根強く存在する。
3. ネットワークレイル社内で仕事をすればこのような問題が無くなるという口調だが、実際にそうなるかには疑問がある。2007年2月にイングランド北西のカンブリアでヴァージンの列車が脱線し、乗客の1人が死亡し、22人が怪我をする事件が発生した。ネットワークレイルの査察チームが線路の重大な問題を見逃したためだ。ネットワークレイルもそれを認め、厳しく批判された経緯がある。その前には、ネットワークレイルは、イングランド南部のポーツマス地区のシグナルの改善工事の問題で240万ポンド(5億3千万円)の罰金を課されている。
4. 関係者を集めた会議を翌週に行うと述べたが、本来は、工事の遅れがはっきりした段階で、直ちにそのような会議を行うべきであったと思われる。
5. ネットワークレイルの発注した工事が工事会社任せに成っている。ネットワークレイルの担当者が工事現場を見に行き、工事進捗の状況をきちんとつかんでおけば4日の超過工事を防げたのではないかと思われる。特にこの問題の後、ネットワークレイルは、ネットワークレイルが大きな工事の計画にもっと深くかかわるべきかどうか検討すると述べているが、それは当たり前のことと思われる。
6. ネットワークレイルの社長は、クリスマス休暇の頃に大きな仕事が行われており、特殊な技術を持つほとんどすべての技術者が仕事をしている時に問題が起きるても、それらの技術者はもうどこかで働いており、いかんともしがたい、と述べている。先にも述べたが、英国では、クリスマスに長期休暇を取りたい人が多い。それから考えると、この社長は100%本当のことを言っているとは思えない。鍵は「ほとんどすべての技術者」という点にある。恐らく、多くの技術者にクリスマス休暇を与えてしまい、そのために技術者の数が足りなくなったのであろう。
ネットワークレイルを監視する鉄道監督機関にも問題がある。今回の工事の遅れに関連して、どうして12月31日の許可を出したのか、との質問に答えて、工事が必要だと判断したと述べているが、ネットワークレイルのいうことをそのまま信じたと述べている。もっと細かな調査が必要だったのは言うまでもない。2006年5月に出された報告書によると、鉄道監督機関は弱く、ネットワークレイルと過度に馴れ合っていると批判されている。監督機関がきちんとした仕事をしなければ、監視される機関がきちんとした仕事をする可能性はもちろん少なくなる。
結論
英国のマネージメント能力の弱さを露呈した問題である。トップの馴れ合いと工事・プロジェクトの計画、実施にまつわるきちんとした運営能力の不十分さが明らかである。それにあわせて、顧客軽視の問題がある。これは、単に鉄道業界の問題だけではなく、政府をはじめ、英国のあらゆる分野の問題である。
Politics
2007-12-28
英国政治の問題点(Problems
in British Politics)
英国政治は大きな岐路を迎えている。多くの政治家、労働党、保守党さらには自由民主党のリーダーたちは、現在抱えている問題点を十分に承知していると思われるが、それに手が打てずにいる。
最も大きな問題は、政府の機能と役割について大きな変更が必要とされる時代に有効な手が打てないことだ。英国の福祉国家は、よくNanny
Stateと言われるように「過保護国家」となってしまっている。国が国民の生活のあまりにも細かな部分にまで介入し、それが国民にとっては当たり前になってしまっており、国民がそれに頼る構図が出来上がってしまっている。第二次世界大戦後に福祉国家を築いたクレメント・アトリーが今の時代によみがえれば、今の福祉国家に驚き、「これは自分が求めたものではない」と言うだろう。
多くの国民の「権利」を減らすことは現在の政治家にとって並大抵のことではない。逆に、2007年10月に保守党が主張し、労働党政府もそれに応じて政策変更をした「相続税の大幅緩和」は、それとは全く逆行するものだ。大きな税体系の変更が先にあり、それに沿った個別の税の変更というものではなく、突然、こういう政策が国民の歓心を買うために出てきた。保守党の案では1人100万ポンド(2億3000万円)、労働党政府の新しい政策では1夫婦70万ポンド(1億6000万円)もの遺産に相続税がかからないというものだ。遺産の相続に公平性を求めた制度は過去200年間継続してきた。それを突如として捨て去るような政治のやり方はおかしい。特にここでは、「国民の歓心を買う」ことに目的があった。
保守党は、この政策でゴードン・ブラウン首相が総選挙を実施することを防ぎ、また、この政策を打ち出したことが保守党の世論調査の支持率アップにつながり、支持率で労働党を大きく追い越した要因だと考えている。その後、政府のいくつかの失政が明らかになってそれに輪をかけた形だが、英国のマスコミもその線に沿った見解だ。しかし、保守党は、こういう政策の出し方を恥じるべきである。保守党は、この政策に必要な財源の計算にも誤りがあった。この政策案に反応した労働党政府にも長期的な計画があったわけではない。
民主政治には、選挙という大きなハードルがあり、それを考えると「国民の歓心を買う」やり方には常に大きな魅力があることは事実だ。しかし、政治のあり方として、それを超えるものを政治家は提供できる必要がある。
例えば、いずれの主要政党も環境問題を重点政策として打ち出し、また、いずれの政党も教育問題を最も重要な政策として打ち出している。保守党のデービッド・キャメロン党首も、2007年12月に自由民主党の党首となったニック・クレッグも「教育が重要だ」と言い、それを最重要課題として取り組むと主張している。確かに中流階級の人々には教育に関心のある人が多く、「教育政策」がいずれの政党にとっても重要な課題であるのは事実だが、問題は、その「教育」が、政策を作り出すための手ごろな「課題」となってしまっていることだ。
もし、「教育」が最重点課題なら、それは、国の目標に合致した教育政策であるべきだが、今の英国の政治には、はっきりとした国の目標がない。国のあるべき姿があいまいなままで、いかに「教育」の実を上げえるのだろうか。マスコミは、しきりにブラウン首相のヴィジョンがはっきりしていないと主張する。それをブラウン首相がはっきりと認識し、それに真摯に取り組もうとしているかどうかは別にして、この評価は当然だろう。
有権者の歓心を買うために「福祉国家」の是正ができないのが現在の英国政治だが、英国の政治にとって最も必要なことは、国民が理解でき、しかも一人一人がそれに参加できるような国の目標をはっきりと提示できる政治家ではなかろうかと思われる。これは日本にも当てはまることだろう。
Politics
2007-12-28
キャラハン元首相の強い決意(James
Callaghan’s determination)
1977年の政府の文書が公表された。これは、政府文書公表の30年ルールに従ったもので、最高の機密文書以外の文書が公表され、その時々の興味深い事実が発掘されることが多い。
1977年は、ジェームス・キャラハンが首相の時であった。キャラハンは、1976年から、保守党を率いるマーガレット・サッチャーに1979年の総選挙で敗れるまで、労働党政権を率いた。キャラハンは、「家庭的な男性」というイメージが強かったが、時として、非常な決意を見せていたことがわかる。例えば、1977年当時、インフレ率が15%と非常に高かったのに対して、警察官が少なくともそれに見合う給与アップを求めて警察官のストライキも辞さない構えを見せた時のことである。しかし、政府は、公務員の昇給率を10%までとしていた。時の内相メリリン・リーズが、キャラハンに、15%アップを提案した時、キャラハンは、そのような案は「皆に笑われる」と言って拒否した。もし警察官のストライキが起こり、社会が混乱するようなことがあれば、自分が責任を取り、首相を辞職するつもりでいた。キャラハンは昇給率は10%とし、警察官の長期的な給与レベルを調査する委員会を設けることを提案した。その結果、警察官組合は、それを受け入れることになる。
ここでは、首相としてのキャラハンと内相のリーズの対応の違いが興味深い。もし、ここで妥協して15%を呑めば、他の公務員の給与への影響が極めて大きいだけに、キャラハンは断固としてそれを拒否する構えでいた。一方、内相は、目先の問題の解決のために15%を呑むつもりでいた。立場と考え方が異なれば、結果が大きく変わってくる一つの例のように思われる。
2007年の警察官の給与交渉の結果、内相ジャッキ・スミスが実質1.9%アップを発表した。これには警察官の不満が大きいが、政府は公務員給与を2%までのアップ率にとどめる決意であり、それに沿ったものである。首相のゴードン・ブラウンも警察官給与の決定には関与していると思われるが、スミス内相のリーダーシップの発揮のしどころである。
Politics
2007-12-28
故ブット・パキスタン元首相の遺したもの(Benazir
Bhutto)
12月27日に元パキスタンの首相を2度務めたベナジル・ブットがパキスタンで暗殺された。2008年1月8日に予定されている総選挙のための集会でスピーチをした直後のことであった。英国では、このニュースは、多くの人にショックを与え、ニュース局は、予定をキャンセルしてこのニュースを報道した。ブットは英国では非常によく知られている。ブットは、英国の政界を目指す優秀な学生がなりたがる、ディベートクラブのオックスフォード同盟のプレジデントにもなった人物である。ブットは、日本の田中真紀子衆議院議員に容貌が似ており、声の質も似たところがある人物であった。
ブットは、パキスタンの首相ではあったが、有能な政治家であったとは言えない。しかも、夫と共に、いくつもの汚職の疑いがある。今年まで、英国らの海外に亡命していた。しかしながら、本人の政治への野心が止まなかったためであろう。危険を冒してパキスタンに帰国した。この帰国の背景には、アメリカの関与が指摘されている。帰国直後の10月に、ブット暗殺未遂事件が起こったが、それにも拘わらず、パキスタンに居座った。ブットは、アメリカに近い立場のために多くのイスラム教過激派に命を付け狙われていた。パキスタンでは、タレバンをはじめとする多くの過激派が積極的に活動している。その上、多くの政敵もいた。そのため、治安の悪いパキスタンでは、遅かれ早かれブットが暗殺されることは目に見えていた。しかし、それでもブットは帰国して、政治活動を行った。
ブットは、首相としては名を成さなかったが、パキスタンのデモクラシーにとっては大きな足跡を残した。今回の暗殺のために、その名は不朽のものになったように思われる。
Politics
2007-12-16
トニー・ブレア前首相:今何をしているか?(Tony
Blair)
2007年6月に首相を退き、同時に下院議員も辞職したトニー・ブレアは、現在、多忙で世界を飛び回っている。英国に帰国するのは月にわずか2日程度と言われる。ブレアは、首相退任とともに国連、アメリカ、EUそれにロシアの4者の中東特使に任命された。この中東特使の仕事は、パレスチナ問題の解決に尽力する役割である。解決不可能と言われた英国の北アイルランドの問題を解決に導いたブレアにとっても非常に難しい課題である。ブレアは首相時代からこの問題の解決が世界のテロの問題を解決する一つのきっかけになると信じて取り組んできていた。
ブレアの妻シェリーは、ブレアがこの仕事を引き受けることに反対だったようだ。アメリカ大統領のブッシュとイラク戦争を進めたために、世界のイスラム教過激派からその命を付け狙われている。そういう中、中東特使として中東で多くの時間を過ごすのは非常に危険だと考えたからだ。しかしながら、ブレアはパレスチナ問題の解決が自分の使命だと信じているようだ。英国の公共放送であるBBCがブレアの1997年から2007年の10年間の首相時代を振り返る「ブレア時代(The
Blair Years)」という3回連続の番組を放送した。その番組の中で、ブレアは繰り返し、イラク戦争は「正しいこと」だから行い、今でもそれは正しい決断だったと思うと主張した。つまり、ブレアの判断基準はその当時も今も「正しいことをする」ということにつきる。パレスチナ問題の解決は「正しいことだからしなければならない」と信じているようだ。つまり、自分の命は二の次という判断だ。英国はイラクとアフガニスタンで多くの兵士の命を失い、多くの兵士が負傷した。また現地の人々の死傷者の数は非常に多数に上る。戦争のもたらす悲劇だが、ブレアは自分は自分の正しいと信じることを行い、自分が死んだ後「創造者(=神)」と会った際に、その審判に従うと考えているようだ。なお、ブレアは敬虔なキリスト教信者で、近々カソリックになると言われている。
中東特使の仕事は無給だが、2007年12月16日のサンデータイムズによるとブレアは、自分の時間の60%をこの仕事に費やしているそうだ。中東を始めとした政治家など多くの人々に絶え間なく会っている。されにブレアの時間の4分の1は、ブレアの選挙区のあったイングランドの北東部のスポーツ振興と、キリスト教、イスラム教それにユダヤ教の相互理解の振興の2つの団体の活動に費やされていると言われる。
自分のお金は月に5回程度までの講演で稼いでおり、その収入は、月に50万ポンド(1億1500万円)から100万ポンド(2億3千万円)と言われる。ブレアの講演は、4年間で1500万ポンド(34億5千万円)稼いだといわれるビル・クリントン前アメリカ大統領よりも人気があると言われる。しかし、中東特使の仕事で忙しいために、460万ポンド(10億6千万円)で契約したと言われるブレアの回想録の出版は2年程度は遅れるだろうと言われる。ブレアは朝早くから夜遅くまで働いている。先だって述べたBBCの番組を見て感じたことだが、ブレアは、自分が決断した戦争で亡くなったり、被害を受けた人々への一種の「償い」として、何かしなければならないと駆り立てられているように見える。
Football
2007-12-16
新イングランド監督ファビオ・カペッロ
(Fabio Capello)
サッカーのイングランドが来年2008年夏行われる欧州国別選手権の予選でグループの3位となり、本選に出場できなかった。そのために監督スティーブ・マクラーレンが解任された。そこでイングランドサッカー協会は、新しい監督にイタリア人のファビオ・カペッロを任命した。61歳のカペッロは、イタリアのトップチームACミラン、ASローマそれにユヴェントス、さらにスペインのレアルマドリッドの監督を務めた人物である。昨シーズンレアルマドリッドをリーグ優勝に導き、通算9回リーグ優勝を果たしている。また、欧州のクラブチームで争うチャンピオンズリーグで優勝した経験もある。
イングランドでは、イングランド人の監督を望む声もあった。それが前回、スェーデン人のスベン・エリクソン監督の後、マクラーレンを選んだ大きな理由であったが、今回は、本人の能力と経験、それに知識が重要視された。4年半の契約のカペッロの年俸は、650万ポンドと言われ、手取りが400万ポンドと監督の年俸としては、世界最高である。その上、イタリア人のスタッフを連れてくる。英国のマスコミは、イングランドサッカー協会は「よくやった」と評価している。次の大きな選手権は、2010年のワールドカップ、それに2012年の欧州選手権である。
イングランドは、選手のレベルはかなり高い。ジェラード、ランパードを始め、選手のレベルを考えると、同じグループのクロアチアやロシアの後塵を拝し、欧州選手権の本選に出場できないのはおかしい。個人個人の選手の能力よりも、チームとしての能力に欠ける点がある。エリクソン元監督は、たいへん能力のある監督だが、あまりにも「紳士」すぎ、チームとしての能力を完全に発揮させることができなかったと思われる。この点、カペッロ監督は、スター選手をスター選手として扱わないので有名な人物である。英国でも活躍したイタリア人フォワード、パブロ・ディ・カニオとの衝突も有名である。勝つことを最優先にして、時にあまりにもディフェンスを重視するために、試合に「華」が欠けるという批判を受けてきた。それが、リーグ優勝をしながらもレアルマドリッド監督を解任された一つの理由となった。しかし、イングランドにとっては「勝つこと」が最優先である。前チェルシー監督のジョゼ・モウリーニョをイングランドの監督にという声もかなり強かったが、私はカッペロのほうがモウリーニョよりもイングランドの監督にふさわしいと思う。それは、クラブレベルでほとんどのことを成し遂げてきたカッペロにとって、イングランドの監督としてイングランドに優勝カップをもたらし、自分のキャリアの花を飾る最後の大きなチャンスであるからである。
Politics
2007-12-13
英国の警察官の給料(Police Pay)
英国の警察官の給料アップの率をジャッキ・スミス内相が1.9%と発表した。これは、イングランド、ウェールズそれに北アイルランドに当てはまる。警察官組合はそれに不満で、全国の警察官に警察官のストライキの権利を求める投票をすることにした。なお、警察官はストライキを法律で禁止されている。また、警察官組合はスミス内相の辞職を求めた。
この背景には、スコットランド国民党が政権を握るスコットランドで、警察官の給与アップ率を2.5%としたため差が出たこともある。英国政府側は、景気が下降気味の状態で、公務員の給与をあまり上げられないとの判断があった。これには、単に内相や財相の判断というよりもブラウン首相の判断が大きいと思われる。
タイムズ紙が警察官の初任給の世界的な比較をしているので、それを紹介しておきたい。
北アイルランド:£22,000
イングランド:£21,009(480万円)
オーストラリア:£20,885
ベルギー:£20,669
スウェーデン:£19,188
フランス:£14,468
ニューヨーク市警察:£14,237
ポーランド:£5,500
これから見ると、英国の警察官の初任給はかなりよいと言える。2000年以降、英国の警察官は、給与の面で看護婦や医師などと共にかなり優遇されてきていた。今回のスミス内相の給与アップの率の点で、野党第一党の保守党は直接の批判を避けている。基本的には保守党もその判断に同調していると思われる。
News
2007-12-13
英国人気質(Britishness)
ゴードン・ブラウン首相は、下院の委員会委員長会議の答弁で英国人気質には次の三つの特徴があると答えた。
公平
自由の気質
ふさわしい言動を取る
これらが英国社会を支えており、英国にきた移民もこれらを尊重することが必要だと述べた。
News
2007-12-12
英国で生まれた子供の5分の1は、外国で生まれた母親から(Child
Birth)
国家統計局の発表によると、母親一人当たりの出産率は、2001年の1.6人から2006年には1.8人へと増加した。このうち、英国外で生まれた母親の出産率は2.3人から2.5人へと増加したと推定されている。2006年に英国で生まれた子供のうち、15万4千人の母親は英国外で生まれた。その数は全体の21%に上る。このうち、全体の4%に当たる2万7千人は、EU諸国から来た母親である。一方、バングラデシュとパキスタンで生まれた母親からの子供は全体の5%である。英国の人口増加の多くが、非白人の移民によっている一つの現れである。バングラデシュやパキスタンからきた人々の子供である第二世代の母親は、第一世代ほど子供を生まない。
なお、英国の人口は6060万人であるが、そのうち非白人の割合は、2005年に11%に達したと見られている。
Politics
2007-12-12
ブラウン首相のクエスチョン・タイム(PMQs)
毎週水曜日には英国の下院で首相へのクエスチョン・タイムがある。ブラウン首相は、イラクとアフガニスタンへの訪問から帰ってきたばかりで出席した。ブラウン首相は、このクエスチョン・タイムになかなか慣れず、野党第一党の保守党のキャメロン党首に得点を稼がせることが多かったが、先週ぐらいから逆転してきた。今日のクエスチョン・タイムでは、キャメロンが労働党のリーダーシップに関する噂を取り上げた質問に対して「政策論議をせず、ゴシップばかり話している」と批判する答弁をした。議論が熱してくるとどもる癖と、何度も同じことをいう癖はあるものの全体的に上達している。
Politics
2007-12-12
働きすぎのブラウン首相 (Workaholic
Gordon Brown)
タイムズ紙が社説で、ブラウン首相は働きすぎで、しかも細かい問題に口ばしを入れすぎると批判した。問題が起きれば起きるほど、自分がより働けば問題は解決すると信じているのか、首相の先任者のブレア前首相がなかなか首相を退かず、自分が首相になったのが遅かったので、その失われた時間を埋め合わせようとしているのか、いずれにしてもブラウン首相は働きすぎだというのである。疲れた状態では正しい判断は下しにくいともいう。ブラウン首相は逆にもう少しくつろぎ、細かな問題は他の閣僚に任せるべきだというのである。
ブラウンが首相となってから、その働きぶりは定評がある。早朝から夜遅くまで働きずくめである。財相時代からワーカホーリックの定評はあったが、首相になってから、それに輪をかけたワーカホーリックとなった。一国の首相が、「働きすぎ」と批判されるのは新鮮だが、確かに細かな問題にまで口ばしを入れすぎるのは問題だ。20世紀の最も優れた首相と言われるクレメント・アトリーは、第二次世界大戦後の英国に「福祉国家」を築いた労働党の首相だが、アトリーは各大臣にそれぞれの仕事を基本的に任せた。もちろん人選を慎重に行ったこともあるが、アトリーは、「非常に優れた委員長」との評価を得た。ブラウン首相もアトリーから学ぶ点が多いように思われる。
News
2007-12-08
ガンの非常に少ないギリシャのアトス山の僧侶たちの食事
Low Cancer Diet of Mount Athos Monks
ギリシャのアトス山のギリシャ正教の僧侶たちがガンにかかる率が非常に低いことがわかり、英国で大きな話題となっている。女人禁制のアトス山には1500人の僧侶が住んでいるが、1994年から始まった調査で、肺ガンと腸ガンの例はなく、前立腺ガンの例が11例あるだけだという。英国では、毎年2万7千人が前立腺ガンにかかり、男性の最も多くかかるガンであるが、アトス山の僧侶の場合、前立腺ガンにかかる割合は、世界の平均の4分の1以下である。
ガンにかかりにくい理由として、空気がきれいである、ストレスの非常に低い生活をしている、畑仕事などの肉体労働に従事していることなどが考えられるが、最も大きな要因はその食事にあると見られている。
アトス山の僧侶たちは一切肉を食べない。自分たちで畑を耕し作った野菜や果物を中心にした食事で、パン、オリーブ、パスタ、ライス、それに大豆、レンティル豆などを食べる。祝い事の際に魚貝類が供されるのみである。食事は簡単で少量を定期的に食べているが、食べ物によっては週に食べられる日が決まっているものがある。オリーブオイル、乳製品、地元産の赤ワインは、火曜、木曜、それに土日のみとなっている。毎日同じものを食べないこのルーティーンにも鍵があるようだ。
典型的な食事は以下の通り。
朝食:固パンと紅茶(ブラック)
昼食:パスタもしくはライスと野菜、オリーブオイル
夕食:レンティル豆、野菜、果物、オリーブオイル、赤ワイン
Football
2007-12-02
イングランドプレミアリーグ(Premier League this weekend)
今週末の試合の結果、従来のイングランドのプレミアリーグのトップ4チーム、アースナル、チェルシー、リバプールそしてマンチェスター・ユナイテッドが予想通りリーグの4位までを占めた。4位までは、自動的に欧州のチャンピオンズリーグの出場権を得られる。しかし、シーズン中盤を迎え、それ以下の中堅どころが充実してきている。特に今週末にアースナルと対戦したアストン・ヴィラとチェルシーと対戦したウェスト・ハムは上位チームにとってかなりの脅威となるだろう。アストン・ヴィラとウェスト・ハムは、いずれも1点差で破れたが、それぞれの対戦相手と引き分けか、勝利を収めていても不思議ではない戦いぶりを見せた。上位4チームにとって、これらの中堅どころのチームといかに戦うかが今後の鍵となるだろう。
Politics
2007-12-02
首相の資質 (Qualities of a Prime-minister)
英国の政治学者らで構成する政治研究学会で、首相の資質についてアンケートを実施した。YouGovという世論調査会社が10月29日から11月12日までの間にオンラインで実施したアンケートで英国の政治学者300名が回答した。
それによると、首相の資質として「実際上」大切なのは、下院でのパフォーマンス(92%)、それにテレビインタビューでのパフォーマンス(72%)であり、インテリジェンス(4%)は非常に低くなっている。これは、頭がいいことは当たり前で、むしろ頭がよくなければ首相としてやっていけないことが前提になっている。一方、いくら頭がよくても下院やテレビインタビューで上手なやり取りができるとは限らない。頭のいいことで有名な現首相のゴードン・ブラウンのことが政治学者の頭の中にあったのではないかと思われる。こういうアンケートにはその実施した時点で起こっていることがかなり大きな影響を与えることが多く、例えば、首相の健康に心配があれば、精神的、肉体的にタフであることが必要であるという意見が強くなる。単に調査結果のみに頼っていては正確な判断ができない一例である。
Politics
2007-12-01
労働党の不正献金問題(2)(Political Donations)
英国の政治は基本的に「清潔」であると言える。しかしながら、今までの慣例(むしろ悪習慣といってもよいが)のために、さまざまな問題が発生している。政権政党である労働党への政治献金を、旧来から労働党の強い地域の開発業者が第三者の名前を借りて行っていたことが発覚した。それが今回の不正献金問題となった。この「代理献金」は、そのもともとの献金者の名前が選挙委員会に届けられなかったために、その献金自体違法である。
この代理献金は2003年から始まったとされており、その総額は65万ポンド(1億5千万円)である。今年6月に首相となったゴードン・ブラウン現首相はその代理献金を知らなかったと言っており、前任者のトニー・ブレア元首相も知らなかったと言ったと報道されている。しかし、この代理献金のことを複数の労働党幹部が知った上で献金を受けていた。2000年の選挙法改正前は、誰から政治献金を受け取ったかを届け出たり、公表する義務はなかったために、政治献金の受け渡しはかなりずさんであったと思われる。今回の事件発覚で、その当時の慣習が今もなお継続していることが明らかになった。つまり、法律は制定したものの、その法律の「精神」は、きちんと守られていなかったのである。いくらトップの政治家や当事者が「そういうことが行われていたとは知らなかった」とか「違法であることを知らなかった」と言っても通用するものではない。警察が捜査に乗り出したが、最終的な判断は有権者にある。有権者がこれらの言い訳を受け入れるかどうか、または、有権者がブラウン首相の対応を受け入れるかどうかがが政権の今後の命運を握る。
こういう古いタイプの政治献金にまつわる問題は、恐らく氷山の一角であると思われる。特にイングランドの北部やスコットランドでは、献金や政治資金に関してルーズな慣行が残っている。これは、前スコットランド第一首相ジャック・マッコンネルの地元の労働党支部にまつわる献金問題や、その前任者ヘンリー・マクリーシュの事務所の補助金不正受領の問題などで明らかだ。いずれの問題も個人がそれで利益を受けたという問題ではなく、政党とお金の問題である。この問題は、今回の代理献金問題だけではなく、今後とも大きな課題として残るだろう。
Politics
2007-11-27
労働党の不正献金 (Political Donations)
政党や政治にまつわるお金の問題は、全世界いたるところにある。権力とお金はなかなか縁が切れない。それは英国の政権政党労働党でもそうだ。政治にはお金がかかる。しかし、そのお金がなかなか集まらない。そこに国からの政党助成の話が出てくる一つの原因がある。また、そこに危ういお金にも手を出す誘惑が出てくる。
今回の不正献金では、イングランド北部のある開発業者が複数の第三者を通じて労働党に献金をしていた。もちろん第三者を通じての献金も許されるが、選挙委員会への報告ではそのお金の出所が誰であるかも報告する必要がある。ところがそのお金の出所を隠して報告していたのである。労働党の事務総長はその出所を知っていたが、それを報告せず、届け出ていた。そのために事務総長職を辞職した。なお、この不正献金事件は、政治家や政党のスタッフ個人がそれで潤うという問題ではない。
この開発業者からの政治献金の合計金額は2003年以降で60万ポンド(1億3500万円)を超えている。財政難にあえぐ労働党にとっては、特に党の財政を管轄する事務総長には、このお金はのどから手が出るほどほしいお金であっただろう。このような献金の仕方は、他の政党、保守党や自由民主党でも行われている可能性が高い。
いかに政治献金の透明性を高めるかは、いつまでたっても英国政治の大きな課題である。1997年に労働党が政権につく前には、政治献金が誰から来ているかは報告する義務がなかった。そのために、外国からの政治献金や出所を知られたくない献金があるのではないかという疑惑があった。その後、政治献金の制約が厳しくなり、今では5000ポンド(110万円)以上の献金は届け出る必要がある。しかし、それでも、借金なら届け出る必要がないのではないか、とのアイデアが出て、各党が借金をしてそのお金を貸していた人の名前を出さない、ということもあった。また、事実上、多くの献金を出した人に名誉、つまりサーという称号を与えたり、一代貴族にして上院議員にするということを各党が実施していた。
しかし、政治献金の透明性は政治への信頼を確保するために非常に重要な課題である。英国では政治献金を全く崇高な目的のためにする人もいるがそういう人の数は必ずしも多くない。今回の事件では自分の関与を完全否定したブラウン首相が、政治献金の透明性を高めるためにどのような方法を提案してくるか見ものである。
Politics
2007-11-25
政治家の問われる責任 (Politicians responsibilites)
ゴードン・ブラウン首相率いる英国政府は、クレジットクランチに始まるノーザンロックという住宅金融会社の財政難に始まる取り付け騒ぎ、さらに、歳入関税局の2500万人の個人データ紛失問題などで大きな政治的な危機に立っている。支持率は軒並み下がり、ブラウン首相への支持率が大きく下がると共に対立政党の保守党が労働党と同じレベルか大きく上回るという状況となっている。
クレジットクランチはアメリカから始まった。また、住宅金融会社の取り付け騒ぎは、その会社の経営ミスであり、またこれらの金融機関を取り扱うFSA(金融サービス監視機構)の責任でもある。また、歳入関税局の個人データの紛失問題は、その担当者が、データを入れたCDをその安全に十分な注意を払って送らなかったためである。また、今年夏起きた、家畜の口蹄疫は、政府の研究機関で口蹄疫のヴィールスの処理がきちんと行われていなかったために起きた。
これらの問題は、政府の政策の失敗というよりも、外部的な要因や政府内の特定担当者のミスから起きた問題である。しかしながら、トップ政治家がこれらの問題の責任を直接問われる状況となっている。もちろん、現場担当者の気持ちの緩みは、トップの責任といえるが、これらの問題はトップの政治家にとって一種の運という面がある。ただし、これらの問題が発覚した時点で直ちに調査を行い、政府の発表に大きな問題がないようにすることは必要だ。直接の担当者が事実を100%伝えるとは限らない。大臣が、起きた問題をめぐって次から次にストーリーを変えなければならなくなればさらに大きな問題となる。また、組織がきちんとした信賞必罰の体制をとるようにするなど、モラールの面での対応も必要だろう。政治家は、このような問題が起きないよう祈ると共に、できるだけの対応を常日頃からしておく必要がある。
Politics
2007-11-24
英国の政治とサッカーの密接な関係 (The relationship between politics
and football)
ゴードン・ブラウン首相は、2018年のワールドカップをイングランドに招致することに力を入れている。英国のサッカー熱を考慮したうえでの判断だ。
一方、タイムズ紙が世論調査会社Populusに依頼して行った、11月21日のオンラインの世論調査によると、ブラウン首相への支持率が極端に下がってきている。しかし、このPopulusの世論調査で特徴的なのは、調査が、サッカーの2008年欧州国別選手権の予選のイングランド・クロアチア戦の前後に渡って行われたことだ。イングランドはこの試合に敗れ、この欧州選手権の本選に出場できないことになった。それを反映して、この試合の結果が出た後、急に経済の見通し予測が5から8%悪化した。その結果が、首相への支持の低下という形で強く現れている。サッカーの試合の結果が人々の行動に影響を与えた一つの証拠である。
イングランドが本選に出場できなくなったために20億ポンド(6500億円)の経済波及効果がなくなるという計算がある。しかし、Populus
の経済の見通し予測の世論調査の結果は、心理的なものである。
この結果で思い出すのが1970年の英国の総選挙である。この総選挙では、世論調査を含め、誰もが当時の労働党政権の勝利を予測していた。ところが、ヒース率いる保守党が意外な勝利を勝ち取った。この番狂わせの原因は今でもはっきりしていない。保守党の選挙準備が優っていたとか、選挙の数日前に政府が発表した経済統計が影響したという説があり、「労働党の歴史」などでもそれらの説を採用している。しかし、サッカーにまつわる重要な結果が投票日直前に出たことを見逃してはならない。投票日は6月18日であったが、その投票日の直前の6月14日のサッカーワールドカップの準々決勝でイングランドが西ドイツに敗れた。その試合は、イングランドが2対0でリードしていたのに、西ドイツに追いつかれ、延長で3対2で敗れたのである。イングランドはその前の大会の1966年のワールドカップで優勝していた。単に敗れただけではなく、その敗れ方が悪かった。それらが総選挙の結果に影響を与えたのは間違いないと思われる。
何事にもタイミングが大切だが、特に政治家にとっては、サッカーのような大きなイベントの勝敗や動向には、特に注意しておかねばならない。
News
2007-10-28
携帯電話での会話が自動的に分析される時代
携帯電話の会社が利用者の会話やテキストメッセージを自動的に分析して、その内容にふさわしい広告を送る計画が進んでいる。例えば、お腹がすいているので食事をしたいと話をすれば、その近くのレストランの広告を送るという具合である。
もちろんこのように個人の私的なコミュニケーションやプライバシーにかかわるような情報を商業目的に使うことには問題がある。これを克服するために、例えばそういう情報の使い方を受け入れる人には、通話料を格安にするとか、無料にするというわけである。その結果、長期的には、ほとんどの人が自分の会話やテキストメッセージの内容を自分の電話会社に公開することになるだろうと見られている。
これは個人情報保護の点からすれば極めて深刻な問題である。自動的に個人の多様な情報が一元的に管理されることとなり、それはジョージ・オーウェルの「1984年」で描かれた、ビッグブラザーのテレビによる監視よりもはるかに身近な脅威である。すでにそれを可能にするソフトウェアはできている。これは反テロ活動のためにそういう情報を拾い集めるというのとは異なる。しかしながら、現代の社会は、そういう個人情報公開と集約の時代に急速に突入しつつある。
2007-10-23
英国の急激な人口増加の予測
英国の人口は2006年現在6060万人であるが、これが、2016年には440万人増えて、6500万人になるとの予測を統計局が発表した。その人口増の内訳は、自然増が230万人、移民が210万人であろうという。さらに2031年には7100万人、そして2051年には7700万人となるという。
一方、英国上院の経済問題委員会で、オックスフォード大学のデービッド・コールマン教授が人口問題について証言し、2051年までに7500万人を越し、2001年次の非白人率の9%が2051年には29%となるだろうと予測した。これから判断すると人口増は基本的に非白人によるものと思われる。
いずれにしても急激な人口増は、現在でも差し迫った課題の住宅問題をはじめ、学校、医療の問題を含めた社会政策に大きなイパクトを与える。
2007-10-15
英国の肥満危機
オックスフォード大学のクリム・マクファーソン教授らの肥満についての研究によると、英国人男性の86%は、15年以内に太りすぎになり、女性の70%は20年以内に太りすぎとなるという。英国人の健康にとってこれは大きな脅威だと見なされている。肥満は、多くの健康障害をもたらし、糖尿病をはじめとするさまざまな健康障害、それに早期の死を招く恐れがある。英国肥満フォーラムの会長は、特に子供の肥満は、平均寿命を短くし、親よりも早く死ぬということになるかもしれないと警告している。それに付け加えて、増大する医療費、薬代や治療費のために英国のNHS(国民健康サービス)がもたないかもしれないという。
太りすぎや肥満の最大の原因は、摂取するカロリーのほうが消費するカロリーよりも多いことだが、この抜本的な対策はそう簡単ではない。政府が対策を立てよというが、それぞれの食習慣にかかわることなので難しい。英国では、有名なシェフ、ジェイミー・オリバーが学校給食を改善する運動を起こし、政府もそのために予算を増額した。学校給食は改善されたが、その結果、学校給食をとる生徒の数が減るという結果が出た。それぞれの家庭での食事が鍵を握るということである。
因みに、英国の肥満について、一般的によく使われている指標はボディ・マス・インデックス(BMI)である。これは、体重(Kg)を身長(m)を二乗したもので割ったもので、25から30までを太りすぎ(Overweight)と呼び、30から40までを肥満(Obese)という。40以上となると病的肥満(Morbid
Obese)と呼ばれる。
2007-09-25
17歳の少女が次期総選挙の労働党候補者
1989年10月4日生まれの17歳の少女エミリー・ベンが次期総選挙の労働党候補者として選出された。2006年に選挙法が改正され、それまでの候補者の年齢制限が21歳から18歳に引き下げられたため、これが可能となったのである。
エミリー・ベンは、日本の高校生にあたり、大学に入学するために勉強している。14歳で労働党の党員になり、政治に関心を持ってきた。ベンの家系は下院議員が輩出しており、本人の叔父は現在環境大臣のヒラリー・ベン。祖父は、労働党の左派で、何度も閣僚を経験し、著名なトニー・ベンである。それにトニー・ベンの父親、祖父(父方母方両方)も下院議員であった。トニー・ベン自身、子爵であったが、下院議員を継続するため子爵の地位を捨てたという経緯がある。
エミリー・ベンの選挙区は、イングランドの南岸のイースト・ワージントンとショーラムであり、現在は45歳の保守党ティム・ロウトンが選出されている。前回の2005年の総選挙では、保守党19500票、労働党11500票それに自由民主党が10800票であった。エミリー・ベンがこの選挙区から下院議員に選出されるためには、保守党と労働党の差の約8000票を覆す必要がある。
2007-09-24
口蹄疫の発生
ロンドンから近い、サリー州で8月3日口蹄疫が発生した。政府の研究所から漏れ出したヴィールスが原因である。今までのところ隔離策が功を奏し、被害は最小限に収められている。政府は、大被害をもたらした2001年の経験をもとに、徹底した管理を試みているが、少しづつ広がっている。このために、各種のイベント、例えばウィンザーハーフマラソンが中止となるなど、さまざまな影響が出てきている。
2007-09-24
モーゲージ会社のノーザンロックの取り付け騒ぎ
ノーザンロックが、中央銀行のイングランド銀行から、緊急融資を受けたと発表され、この会社の経営には問題がないと保証されたにもかかわらず、多くの人々がノーザンロックが危ないと見たことから、取り付け騒ぎが始まったのである。ノーザンロックには資産はあったが、それが住居などに固定されているために当面の資金が不足したのである。
政府、イングランド銀行それに金融サービス機構(FSA)は、この取り付け騒ぎが他の金融機関にも広がる兆候が出たために、直ちに抜本的な対策を取ることを決定した。そして財務相が、ノーザンロックへお金を預けている人に、全額を補償すると発表したのである。そのために、ノーザンロックの預金者は他の金融機関にお金を預けているよりも、確実にお金が保証されることになった。そのために取り付け騒ぎは終わった。